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中国で冷菓バブルが崩壊している。写真はハーゲンダッツ。
上海では6月29日に梅雨明けを迎え、気温が一気に上昇した。本格的な夏の訪れの中で恋しくなるのが冷菓、アイスクリームだ。「冷菓の自由」や「冷菓の刺客」といったバブル的熱狂を象徴する言葉が中国のネット上をにぎわせたのはほんの数年前のことだが、今や消費トレンドは一変している。
中国は今年、冷菓市場に「冷却の季節」が訪れた年であると言っても過言ではない。数年前まで茅台(マオタイ)や鐘薛高といったブランドの製品が高価格帯で売られ話題をさらったが、消費者の価値観の変化とともにそれらの輝きは急速に色褪せた。「見せびらかす消費」の時代は幕を閉じ、「理性消費」が新たなキーワードとして台頭している。
消費のダウングレードがささやかれることも多くなったが、冷菓についてはそれだけで語ることはできない。「安ければよい」という発想を超え、「ちょっとぜいたく」「少し健康的」「共感できる物語」といった複合的な要素が重視される。消費者の購買姿勢もより成熟に向かっており、むしろ納得感のある価格が提示されていることも重要な要素となる。
数年前、中国の若者にとって「冷菓の自由」はささやかな夢だった。気軽に高級アイスクリームを選べることが、都市生活を自己肯定することにもつながった。ハーゲンダッツは憧れの対象、鐘薛高はSNS映えの象徴、茅台アイスは酒とスイーツを融合した奇抜な嗜好品としてもてはやされた。
その熱狂は混乱も呼ぶ。「冷菓の刺客」というやゆを生み出す中、財布を打撃する度を超えた価格のブランドが乱立し、過剰なSNS展開が行われていくと、いつしかアイスクリーム製品は祝祭の主役から皮肉ややゆの対象へと変わっていく。そして今、冷たく甘いぜいたくに浮かれたあの熱病のような時代を懐かしむ声はもはや過去の残響にすぎなくなった。
プレミアムブランドのステータスを確保しようとしてきた各社の事業展開にも変調が表れる。茅台アイスは広州の運営チームが解散し、北京の実店舗は名称変更され、ECのショップも相次いで閉鎖された。ブームを象徴した白酒アイスは市場から静かに姿を消しつつある。
鐘薛高の転落はより劇的だった。年商10億元(約200億円)を誇ったブランドが破産審査を受けたという。創業者がライブ配信で「焼き芋」を売って借金返済を図る姿は「焼き芋刺客」としてSNSで再びやゆの対象となった。華やかなブランド神話の裏に経営基盤の脆弱さと資金繰りの限界が露呈した形だ。
高級アイスクリームの老舗舶来ブランドであるハーゲンダッツもまた、市場の潮目の変化から逃れられなかった。中国における店舗数はピーク時の400店から250店以下に減少し、親会社のジェネラルミルズは中国事業の売却を検討していると中国のネットメディアは報じている。
洋物ブランド神話が色あせる一方で、国産ブランドの台頭が目覚ましい。現在の中国の若者に支持されているのは、「ちょっと風変わりで親しみやすく、ほどよくしゃれている」ブランドだ。野人先生の高級ジェラートや波比艾斯の手作りワッフルシリーズはネーミングのユニークさ、手の届く価格、そしてブランドストーリーが情緒的価値が高いものとして共感を呼び、確実にファンを増やしている。
中国の冷菓業界は今、大衆化(第一の波)、高級化(第二の波)を経て、意味化という第三の進化段階にある。単なる味覚の満足ではなく、「自己肯定感」や「生活へのささやかなご褒美」といった情緒的価値が購買の決定要因となっている。
ジム帰りに食べる低糖アイスや残業後に手に取るスーパーフード入りジェラートは、その機能性以上に「気分を癒す存在」として位置づけられる。消費者は実体験の中で共感できるアイス製品を求めている。「嗜好品のバブル」から脱し、意味を選ぶ冷静な時代へと移行するのはクールな変化と呼んでもよいかもしれない。(提供/邦人NAVI-WeChat公式アカウント・編集/耕雲)
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