中国がレアアース密輸撲滅キャンペーン、海外企業の供給断絶危機が深刻化―シンガポールメディア

Record China    2025年6月14日(土) 18時0分

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中国は許可なくレアアースが国外に持ち出されるのを防ぐため、集中的なキャンペーンを開始した。資料写真。

シンガポール華字メディアの連合早報によると、中国は同国の許可なくレアアース(希土類)が国外に持ち出されるのを防ぐため、集中的なキャンペーンを開始した。この措置により、自動車メーカーや軍事企業、その他多くの企業にとって極めて重要な鉱物の不足がさらに深刻化する。

中国国営メディアが「密輸撲滅」と表現するキャンペーンは、中国が国家戦略としてレアアース産業への統制を強化しようとする今春の動きの要となるものだ。

中国は4月4日、7種類のレアアース元素と関連する磁石の合法的な輸出を停止し、これらはほぼすべてが中国国内で加工されており、今後輸出するには許可が必要となると表明した。

中国は米国やその他の国に対し、中国製品への関税を引き下げ、中国への機密軍事技術の販売を許可するよう圧力をかけているため、ライセンスの発行はわずかだ。

米国、欧州、その他の国々の多くの企業は長年、レアアース金属を中国に依存してきたため、その不足が深刻化している。

中国のこのキャンペーンは、これらの企業にとって二重の打撃となる。合法的な輸出を停止すると同時に違法な輸出も厳しく取り締まるからだ。

大規模な密輸により、中国がこれまで実施してきたレアアース輸出規制の効果が薄れていた。中国は2010年の日本との領土紛争の際に2カ月間の禁輸措置を講じ、09年から13年にかけては断続的に輸出制限を課し、世界のメーカーに中国国内への工場移転を迫った。

中国が10年に密輸規制に着手するまで、中国の組織犯罪シンジケートは中国の年間レアアース生産量の半分を国外に密輸していた。中国の取り組みは当初、限られた成果しか収めていなかった。ボーイングやフォルクスワーゲントヨタなど多国籍企業は、合法生産と違法生産が混在する長いサプライチェーンに依存していた。

しかし、最近の取り締まり強化の前から、違法輸送の規模は大幅に縮小していた。ボイシ州立大学のレアアース専門家、デビッド・アブラハム氏によると、密輸は以前ほど容易ではないという。

中国の税関、商務、警察、情報機関の高官らは5月9日に会合を開き、取り締まり戦略を策定した。その3日後には11の中央省庁と七つの省の当局者らが会合を開き、商務部を通じて、「戦略鉱物の輸出管理は国家の安全保障と発展の利益に関わり、輸出チェーン全体の管理強化が鍵となる」とする共同声明を発表し、生産と輸送のあらゆる段階におけるレアアースの包括的な追跡を求めた。

中国商務部によると、新たなライセンス制度はレアアース金属の軍事利用を制限することを目的としている。米国の軍事企業はミサイルやドローン、戦車、大砲、戦闘機の製造において中国からのレアアース磁石などの重要鉱物に大きく依存している。

中国商務部は、規制対象のレアアース元素や磁石の輸出申請ごとに、中国の生産者に対し詳細な書類の提出を義務付けている。中国国外の大手企業関係者によると、転売を防ぐため、申請では中国企業に対し、誰がその物質を購入したかだけでなく、その後の生産工程でどのように使用されるかを証明するよう求めており、製品の写真の添付を求める場合もあるという。

これらの文書は、海外でレアアースがどのように使用されているかの詳細を中国に提供する可能性があり、将来的に中国が特定の企業や国をターゲットにすることを容易にする可能性がある。

カリフォルニア州マウンテンパスにある米国唯一のレアアース鉱山を所有するMPマテリアルズの会長兼最高経営責任者(CEO)、ジェームズ・リティンスキー氏によると、これは本質的には情報収集活動になりつつある。

人民日報傘下の国営メディア、証券時報はこのほど、ベトナムと国境を接する中国南部の広西チワン族自治区が、特にレアアースの密輸に対する監視を強化していると報じた。

コロナ禍前には密輸業者が大量のレアアースをベトナム国境を越えて日常的に輸送していた。ベトナム北部にある小さな精錬所は、いわゆる重レアアース元素の化学処理に必要な複雑な工程を中国以外で行える唯一の施設だった。

しかし、中国はコロナ禍で感染者が入国する一連の事件を受け、南部国境沿いに動体検知装置を備えた精巧なフェンスシステムを構築し、これが密輸業者にとって障害となった。

ベトナムの小規模精錬所は、同国の税務当局との争いにより1年余り前に閉鎖された。

10年の中国による対日禁輸措置の際に用いられたもう一つの密輸方法は、レアアースを溶かして鉄骨に加工して輸送し、目的地で再溶解して抽出するというものだ。

しかし、中国は鉄鋼業界への監視を強化し、多くの小規模製鉄所が閉鎖され、それに代わってより少数の大規模な製鉄所が設立された。中国国外でのレアアース不足が深刻化し、価格が高騰する中、リスクを負っても構わない密輸業者にとって、潜在的な利益は莫大なものとなっている。(翻訳・編集/柳川)

※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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