北朝鮮で駆逐艦が進水に失敗、手痛い事態も「政治の手法」に見られる変化―香港誌

亜洲週刊    2025年6月9日(月) 8時30分

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北朝鮮では5月21日、新型の5000トン級駆逐艦が進水式に失敗し横転する事故が発生した。香港誌の亜洲週刊は同件について、タイミングとしても北朝鮮にとって手痛い事態と紹介する記事を発表した。

北朝鮮では5月21日、同国北部の清津(チョンジン)にある造船所で行われた新型の5000トン級駆逐艦が進水式に失敗し横転する事故が発生した。香港誌の亜洲週刊は同件について、タイミングとしても北朝鮮にとって手痛い事態と紹介する記事を発表した。ただし記事は、北朝鮮における同事故の扱いからは、北朝鮮における「政治の手法」の変化も見て取れると指摘した。以下は亜洲週刊の記事の主要部分を再構成した記事だ。なお、横転した駆逐艦は専門家の予想よりもはるかに早く、6月5日には正常な姿勢に戻されたことが分かったが、亜洲週刊の記事は、この情報の確認以前に執筆されたと思われる。

北朝鮮側は、駆逐艦の事故の原因を「進水の過程での指揮のミスと操作の不備」と説明した。また、司法当局が5月25日までに造船所の関係者4人を召喚または拘束したという。

北朝鮮では海軍の発展が相対的に遅れており、特に水上戦力においての問題が顕著だ。しかし今年になり、北朝鮮は今回事故を起こした船を含み5000トン級の多機能駆逐艦2隻を連続して進水させた。前回の4月25日に進水は成功していた。2隻は同型で、先進的なフェーズドアレイレーダーを搭載し、70基を超える大量の垂直発射装置を搭載する設計とされる。

今年は北朝鮮にとって重要な年だ。まずは、2021年の朝鮮労働党第8回大会で採択された5カ年計画の締めくくりの年だ。前回の5カ年計画は、金正恩総書記が同国指導者になって初めての5カ年計画だったが、経済制裁、新型コロナウイルスの流行、水害の三重の打撃を受け、目標達成に失敗した。金総書記は極めて異例なことに、5カ年計画の失敗を率直に認めた。指導層にとっても国民にとっても、5カ年計画が再び失敗することは、受け入れがたいことだ。

さらに今年は朝鮮労働党の建党80周年であり、この特別な節目における2隻の新型艦艇の進水には、特別な政治的意味が込められ、「80周年の献上品」とされていた。したがって、進水式に出席して事故の全過程を目の当たりにした金総書記が激怒し、「この事故はわが国の威厳と誇りを傷つけた」と述べたことも無理はない。

6月下旬には朝鮮労働党第8期中央委員会第12回全体会議が(以下、「中全会」)開催の予定であり、金総書記はこの会議前に艦艇の修復を完了させるよう期限を設定した。

「隠し通す国」から情報を公開する国への変貌か

北朝鮮は、国内世論の安定化を目的として駆逐艦の進水失敗を隠すことはせず、逆に情報を自ら外部に公開し、朝鮮が完全に閉鎖的で国際社会と断絶しているという固定観念をやや払拭した。

金総書記は政権を担当して以来、内部向けだけに宣伝することを重視する従来の方針を徐々に転換し、動画サイトのユーチューブに公式チャンネルを開設して対外宣伝を行い、今年には国外の選手も出場する平壌マラソン大会も開催した。

北朝鮮はこのところ、外部に対する情報の透明性を自発的に高め、国家建設における問題発生も隠さない姿勢を示している。今回の進水失敗のような重大な事態を外部に報じたのは初めてではなく、朝鮮中央通信は1年前に偵察衛星の「万里鏡(マンリギョン)−1−1」の打ち上げ失敗を報じた。

駆逐艦の進水失敗事故に関する詳細な調査報告は、6月下旬の「中全会」で発表されるとみられている。駆逐艦の進水失敗が金総書記の掲げる遠洋海軍建設の決意に影響を及ぼすかどうかは、今のところ不明だ。(翻訳・編集/如月隼人

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