中国「高考」の出願者数が8年ぶりに減少、単純ではない背景―香港メディア

Record China    2025年6月4日(水) 7時0分

拡大

香港メディアの香港01は2日、中国の大学入試の統一テスト「高考」の出願者数が8年ぶりに減少したことを伝えた。写真は中国の学生。

香港メディアの香港01は2日、中国の大学入試の統一テスト「高考」の出願者数が8年ぶりに減少したことを伝えた。

中国教育部は5月28日、2025年の「高考」の出願者数は1335万人だと発表した。前年から7万人の減少で、前年を下回るのは2017年以来のこと。15~17年の出願者数はおおむね940万人前後で安定していたが、18年には975万人に増加。19年には初めて1000万人の大台を突破し1031万人に達した。その後も毎年増加を続け、23年は1291万人、そして24年には過去最高の1342万人に達した。25年の出願者数は依然として高水準にあるものの、全体としては減少に転じた。

記事によると、出願者数の減少について、一部では「若者が高考を妄信しなくなった」との分析も出ている。SNSやインフルエンサー経済の台頭で、より多くの若者がセルフメディアやスキル重視の自由業、起業など、多様なキャリアパスに憧れを抱くようになっていることが背景にあるという。また、高いコスト、長い準備期間に対してリターンが不確実であるという「高考」の現実もまた、認識を改めるポイントになっているようだ。

しかし記事は、出願者数の減少は単一の原因によるものではなく、さまざまな要因が複合的に作用した結果だと分析している。まず、人口構造の面から、今回受験する生徒らの多くが06~07年生まれであるが、この年代は00~05年の出生数のピークから減少に転じた世代であることが直接的な背景になっていると指摘。また、近年増加を続けていた浪人生の出願者数が、今年は去年(410万人)から増加がみられないことももう一つの要因になっているとした。

記事によると、中国では22年に改正された「職業教育法」で、職業教育は一般教育と同等に重要であると初めて明確に位置付けられ、中等職業学校や高等職業学校から本科(学士課程)への進学ルートが徐々に拡大している。中高の職業学校の一貫プログラムのほか、中等職業学校と本科の一貫プログラムなども開設されている。同済大学教育政策研究センターの張端鴻(ジャン・ドゥアンホン)主任は「職業教育高考(職業学校を対象とした大学入試制度)や中等職業学校から本科への直通ルートが、もともと一般の高考を受験するつもりだった一部の学生を引き付けている。こうしたデータは高考の統計には含まれていない」と説明した。

また、中国教育部の統計では、23年に海外留学した中国人学生の総数は80万人を突破し、19年比で23%増加した。沿海地域や大都市の家庭の経済力が向上する中、海外留学も多くの学生や保護者にとって進学の選択肢となっている。粤港澳大湾区(広州仏山、肇慶、深セン、東莞、恵州、珠海、中山、江門の9市と香港、マカオ両特別行政区によって構成される都市圏)、シンガポールオーストラリアなどの大学が中国人学生を積極的に受け入れているほか、「一帯一路」政策の推進に伴い中国と外国とが協力する教育機関の設立も増えていることも、高考以外の新たな進学ルートになっているという。

記事によると、出願者数が減少する一方で、名門大学の定員数は逆に拡大されている。国家発展改革委員会の鄭柵潔(ジョン・ジャージエ)主任は25年に「双一流(トップ)」大学の学部定員数を2万人増やす方針を明言。北京大学清華大学上海交通大学、中国人民大学などはすでに定員増を発表しており、それぞれ100~500人の増加が見込まれている。増加は主に基礎科学や先端分野など、国家戦略の重点分野に集中しているという。

一流大学の定員数増加は全体的な競争圧力の緩和につながるようにも見えるが、同済大学教育評価センターの樊秀娣(ファン・シウディー)主任は「全国の総出願者数が減ったからといって、すべての省や市で同様の状況だとは限らない」と指摘。福建省では今年新たに10カ所の高考試験会場が設けられ、出願者数は昨年から1万4000人増加した。江蘇省無錫市では過去10年で最多となる出願者数および試験会場数になっている。このほか、地域ごとの募集枠や人気の学部学科の動向なども密接に関係している。

また、定員が拡大されるのは国家戦略上、緊急に必要とされる新興分野であり、こうした専攻は一般に入学のハードルはかなり高い上に、将来的な業界の成熟度や雇用体制にも不確定要素が少なくないため、成績が中位以下の受験生にとっては必ずしもチャンスの拡大には直結しないというのが実情だという。

記事は、「高考はいまだに、発展の遅れた地域の学生にとって主要な進学手段であるものの、中国の人口構造、教育制度、進学観念、産業のニーズの変化に伴い、職業教育も多様化している」と指摘。「大学生の就職難や学歴競争の激化といった社会的背景の下で、一部の学生が早期に社会に出たり、スキル重視の職業訓練に転じたりすることも、今後ますます見られるようになるかもしれない」と結んだ。(翻訳・編集/北田

※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

この記事のコメントを見る

noteに華流エンタメ情報を配信中!詳しくはこちら


   

we`re

RecordChina

お問い合わせ

Record China・記事へのご意見・お問い合わせはこちら

お問い合わせ

業務提携

Record Chinaへの業務提携に関するお問い合わせはこちら

業務提携