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賃金統計の平均値には現実の生活実感との乖離が見られると指摘する意見が少なくない。写真は上海。
中国国家統計局が発表した2024年の平均賃金統計では、都市部の非私営部門における年収が初めて12万元(約240万円)を突破した。日本の総務省も同時期に賃金統計を公表しているが、統計の平均値には現実の生活実感との乖離が見られると指摘する意見が少なくない。
中国国家統計局は16日、24年の「全国平均賃金統計」を発表し、都市部に所在する非私営企業に勤務する就業者の年平均賃金が12万4110元(前年比2.8増、可比口径<調査範囲や統計方法を一定に保ち、物価変動や対象範囲の変更などの影響を排除して比較できるように調整した指標>)では2.6%増)に達したことを明らかにした。一方、民間(私営)企業では6万9476元(同1.7%増、可比口径では4.0%増)にとどまり、依然として大きな開きがある。
産業別に見ると、情報通信(23万8966元)や金融(20万1883元)、科学研究・技術サービス(17万5425元)といった分野が高水準を維持する一方、農林牧漁業や宿泊・飲食業などは依然として6万元(約120万円)前後と低迷している。
今回の統計には、第5回全国経済センサス(第五次全国経済普査)の実施に伴い、調査対象が小規模な民間企業にも広がった影響が含まれており、これが名目成長率と実質(可比口径)成長率との乖離にも表れているとされる。
日本の厚生労働省が3月に公表した「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、一般労働者の月額平均賃金は前年比3.8%増の33万400円で、年収換算ではおよそ396万円に相当する。
男女別では、男性が36万3100円、女性が27万5300円で、男女間の賃金格差指数は75.8(男性=100)となっている。また、正社員と非正規労働者の間にも明確な差があり、それぞれ34万8600円と23万3100円となっている。
企業規模別に見ると、大企業では36万4500円、小企業では29万9300円と、企業規模による格差も顕著だ。さらに、学歴や年齢、勤続年数などによっても賃金水準は大きく異なり、日本の労働市場においても構造的な格差が根深く存在している。
「平均賃金の上昇」という統計上の数値とは裏腹に、実際の生活実感との乖離が各所で指摘されている。物価上昇や生活コストの増大に加え、賃金分布の偏りによって、高収入層と低収入層の間に広がる格差、都市と地方の地域間格差といった構造的な課題が統計の平均値だけでは捉えきれない現実として存在する。
一方、中国では、情報通信や金融業といった都市部の特定産業を除けば、地方大学卒業生の初任給が月収4000元(約8万円)前後にとどまるケースも報告されている。こうした傾向は、日本における非正規雇用者や中小企業勤務者の賃金水準が平均値から大きく乖離している構図と重なる部分もありそうだ。
総じて見れば、中国では若年層の就職難が深刻化し、都市部の一部産業への就業集中や競争過熱、地域間・業種間における賃金の偏在といった構造的な課題が顕在化している。とりわけ、非私営部門における情報通信や金融業の平均年収が20万元を超える一方で、農業やサービス業では6万元台にとどまっている。
一方、日本では新卒者の早期離職や、労働者全体の約4割を占める非正規雇用の高さ、そして大企業と中小企業間の賃金格差など、「雇用の二極化」が続く構造的問題が根深い。特に正社員と非正規では月収ベースで約11万円もの開きがあり、平均値だけでは実態を捉えきれない。
さらに、人工知能(AI)や自動化の進展、少子高齢化といった社会構造の変化は両国に共通して「労働のあり方」そのものに影響を及ぼしつつある。賃金の平均値上昇という表面の数字に惑わされることなく、課題解決に向けた動きが活発化することが期待される。(提供/邦人NAVI-WeChat公式アカウント・編集/耕雲)
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