公共バスもオンデマンド時代、行きたい時間・場所を自分で「カスタマイズ」―中国

邦人Navi    2025年5月16日(金) 19時30分

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中国ではスマートフォンを使って「自分仕様」のバスを呼び出すことができる時代になった。

中国ではスマートフォンを使って「自分仕様」のバスを呼び出すことができる時代になった。「定制公交(カスタムバス)」と呼ばれるこのサービスは予約制、定刻運行、1人1座席を基本に、既存の路線バスとは一線を画す、しかし確かに公共交通の体裁を持った新しい移動の形だ。

移動ルートを「カスタマイズ」

上海の通勤風景が変わったのは、何も高層ビルが林立したせいばかりではない。「DZ123」や「DZ509」などと表示された見慣れぬ番号のバスが街を走るようになった。5月時点ですでに200路線以上にわたって運行されているという。

「DZ」とは「定制(DingZhi、カスタマイズ)」の発音に由来し、乗客のニーズに応じて走る「定制公交」、すなわちカスタマイズされたバス(カスタムバス)を指す。通勤や通学、高齢者の通院など多様な目的での利用が増えており、まさに一人一人の生活に寄り添う「あつらえの足」となっている。

アプリからリクエスト

利用はスマートフォンで完結する。上海市の市民アプリ「随申行」のメニューから定制公交を選択し、「朝7時半に郊外の団地から人民広場まで」などとリクエストを送る。同じ時間帯・ルートでの利用希望者が一定数集まると、路線が組まれ、定刻通りに発車し、目的地まで直行してくれるというわけだ。

座席は事前に確保され、満席で立ち乗りを強いられる心配はない。いわば鉄道列車の指定席を予約するような感覚で、スムーズな都市移動が実現する。

路線バス利用のハードル

これまで日本人にとって中国の公共バスの利用はハードルが高かった。まず挙げられるのが、多くの路線でバス停に時刻表が設置されていないことがある。「朝7時から夜8時まで、10~15分間隔で運行」といった情報は確認することができても、分単位の確かな発着時刻を把握するのは難しい。

さらに、都市部では一方通行や環状道路の影響で、往路と復路でバス停の場所が異なることも多い。「行き」はスムーズに乗れたが、「帰り」がわからない。そんな体験をした日本人観光客や長期滞在者も少なくないのではないか。地図アプリの活用によってある程度は補えるものの、一定レベルの地の利がないと乗りこなすのは難しいという現実がある。

新たな選択肢を得た安心感

その点、定制公交は画期的だ。予約時に出発地、目的地、時刻が明記され、一人一人に座席が割り当てられる。すし詰めバスを経験したことがある現地の人も安心快適なサービスとして受け止めているのではないだろうか。

定制公交のサービスが提供されているのは上海だけではない。深センでも「優点出行」というアプリがあり、通勤や通学ルートの開設に利用されている。一方、北京では「北京定制公交(アップグレード版)」ミニプログラムがあり、観光目的でも重宝されているという。

交通の未来は「選べる公共」

これまでは人がバスの走る道に合わせてきたが、今や公共交通機関が人に合わせる時代になった。もちろん一般の路線バスより料金は高くなるが、それでもタクシーやライドシェアと比べれば手頃な中間的モビリティーとして評価されそうだ。誰もが使える新たな移動手段が、静かに、確実に広がっている。(提供/邦人NAVI-WeChat公式アカウント・編集/耕雲)

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