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中国の企業が開発したスマートバイオニックハンドは何がすごいのだろうか?
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2025年を迎えてから現在まで、浙江省杭州市で誕生したテクノロジーの分野の代表格である深度求索、宇樹科技、遊戯科学、雲深処科技、強脳科技、群核科技の6社が力強く台頭し、「杭州六小竜」と呼ばれている。中でもブレインマシーンインターフェース(BMI)の分野では、強脳科技がイーロン・マスク氏らが共同設立したニューラリンクと引けを取らない躍進を見せている。中央テレビニュースが伝えた。
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強脳科技には、12歳の時に事故で右手を失ってしまった社員・周鍵(ジョウ・ジエン)さんが在籍している。周さんは同社が研究開発したスマートバイオニックハンド(筋電義手)を装着しており、字を書いたり、ピアノを弾いたりすることができる。それを装着するのにかかる時間はわずか30秒で、Type-Cケーブルやモバイルバッテリーを使って充電することができる。
強脳科技の創業者である韓璧丞(ハン・ビーチョン)最高経営責任者(CEO)によると、スマートバイオニックハンドの指1本を動かして、ピアノの鍵盤を1回タッチするためには数百回のニューラル計算が必要で、鍵盤を200回タッチするためには数万回のニューラル計算が必要となる。では韓氏がBMIを得意とする企業を立ち上げるきっかけとなったのは何なのだろうか?そしてスマートバイオニックハンドを研究開発するために、どのような課題を克服しなければならなかったのだろうか?
韓氏は幼い頃から、生物医学に強い興味を抱き、高校生の時には全国生物コンクールで1等賞を受賞したこともある。大学の学部では医療機器がメインの機械工学を専攻。そして、2011年からは米シアトルにあるフレッドハッチンソンがん研究センターで、薬物の研究開発や神経科学の研究に没頭するようになった。
2004年にノーベル生理学・医学賞を受賞した米生物学者リンダ・バック博士の研究室はがん研究センターのちょうど隣にあったという。バック博士の受賞理由は、約1000種の異なる嗅覚受容体をコードする遺伝子が存在し、どのように数千から1万種もの匂いをかぎ分けて、脳がその匂いの記憶を永久に保存するかを突き止めたからだった。
バック博士のチームの成果に啓発を得た韓氏は、「つまり、脳には優れた構造があり、実際に花の香りがなくても、電気的信号の伝達を通して、花の香りを作ることができるということ。そうするとほぼ全ての感知を再編集できるということになる」と考えた。
そしてこのようなユニークな着想を得た韓氏は起業したいと強く願うようになり、学術・科学研究の道ではなく、起業の道を歩くことを決意。「将来、世界を驚愕させる製品を作り出せるという思いを心ひそかに抱いた」と振り返る。
2014年、韓氏はハーバード大学の脳科学センターの博士課程で学ぶようになった。その期間、マサチューセッツ工科大学の講義をよく聞きに行っていたといい、専門知識を増やし、企業チームも立ち上げた。2015年、28歳だった韓氏は、ハーバード大学のスタートアップ支援機関イノベーションラボラトリーズ(Hi)において、強脳科技を立ち上げた。立ち上げメンバーのほとんどは、博士課程で学んでいる学生や科学研究者だった。
BMIには非侵襲型と侵襲型の2種類のテクノロジー・ロードマップがある。侵襲型とは、開頭手術を行って脳の中に電極を入れ、高精度の神経信号を読み取る方法だ。一方、非侵襲型とは、手術をせずに頭の外側に装置をつけて脳の電気的信号を読み取る方法だ。
韓氏は、非侵襲型という、開頭手術をせずに、脳とロボットの「対話」を実現する難しいロードマップを選択した。その理由について、韓氏は、「非侵襲型は、よりたくさんの種類の病気を患っている人の助けになるから」と説明する。
非侵襲型BMIの研究開発の第一歩となるのは、電気ジョイントコンパウンドを使わずに、脳の電気的信号を正確に読み取ることができる、より高度なセンサーの開発だ。
「電気ジョイントコンパウンドと複雑な設備を使わないものを作りたかった。電気ジョイントコンパウンドを使わなければならないとすると、1回の実験で、頭を2回洗わなければならない。それでは、たくさんの人に使ってもらうことはできない。また、従来の非侵襲型BMIの場合、自閉症の子供のように、頭に複雑な脳の電気的信号を読み取る装置をたくさん装着しなければならず、不安な思いにとらわれることになる。そこで、見た感じにもおもしろみがあるものを頭に付けるようにしたかった」と話す。
韓氏は、コンパクトで使いやすいのと同時に、高精度の信号を収集できる非侵襲型の装置を開発したいと考えたものの、その難度は倍増することになった。韓氏によると、非侵襲型の信号は非常に弱く、50キロ離れた場所にいる蚊が飛ぶ音を読み取るようなものだという。「でも、もっと受け入れやすい解決策を見つけなければならない。1000万人に開頭手術を施すことは不可能だから」とした。
スマートバイオニックハンドは、こうしたテクノロジー・ロードマップにより開発された初の製品だ。使用者は、装着することで、脳を通して、その指をコントロールし、ピアノを弾いたり、絵を描いたり、ロッククライミングを楽しんだりすることができる。思うがままに手を動かせることは、市場で販売されているほとんどの義手では成しえない。
2018年、韓氏は杭州市政府の招きを受け、チームを率いて帰国し、起業することを決意した。その理由について、韓氏は「中国には世界最先端の設備を量産する能力がある。当社が提携している工場は、修正一つ、アップデート1回のための一連の解決策を数日で提供してくれるなど、迅速に対応してくれる。それができるのは世界で中国だけ」と説明する。
2019年に強脳科技の一つ目の商品化された製品が応用の段階に入り、2020年に正式に販売が始まった。それは、世界で初めて量産を実現したスマートバイオニックハンドだった。試作品が現実の世界で販売される製品となり、韓氏のプレッシャーは逆に大きくなったといい、「一歩の計算ミスがあるだけで、スマートバイオニック義肢を装着しているユーザーが転倒し、けがする可能性があるから」と話す。
BMI技術は失った身体機能の回復や脳の病気の治療だけに限らず、さらに広い範囲で応用できるポテンシャルを秘めている。スマートバイオニック義肢チームは現在、次世代BMI技術と製品を開発しているという。韓氏は「5~10年をめどに、手や足を失った障害者100万人が普通の生活に戻れるよう助けるほか、自閉症やアルツハイマー病、不眠症の患者1000万人を助けたい」とした。(提供/人民網日本語版・編集/KN)
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