連休直前の全便停止に衝撃、高速鉄道に押され地域航空会社が苦境―中国

邦人Navi    2025年5月5日(月) 23時30分

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西安を拠点に主に中国西部の支線路線を担ってきた幸福航空がメーデー連休直前に全便の運航を停止したことが業界内外に衝撃を与えた。

西安を拠点に主に中国西部の支線路線を担ってきた幸福航空がメーデー連休直前に全便の運航を停止したことが業界内外に衝撃を与えた。

連休直前の運航停止

中国西部の地域航空(支線航空)を担ってきた幸福航空が4月28日以降の運航を全便停止した。停止された路線には北海-長沙-ハルビン、煙台-大連なども含まれる。

予約サイトから突如すべての便が消えた異例の事態が与えた衝撃は大きく、SNS上では「もう飛ばせるお金がない」との社内証言も広まった。関連報道では、地域航空会社、そして国産機政策の象徴ともいえる同社の失速は中国の航空業界が抱える構造的課題を浮き彫りにしたと指摘されている。

国産機で挑んだ幸福航空

幸福航空は中国航空工業第一集団(AVIC)と中国東方航空の合弁で2008年に設立し、翌09年8月15日に第1便となる西安―延安便が就航した。

国産機MA60(後にMA600)を商業路線に投入したことで脚光を浴び、地域航空市場での実証モデルを担った。西安を本拠地とし、主に中国西部・中部の中小都市間の路線を開設し、中国が後押しする「地域航空網整備」の旗振り役とされた。

高速鉄道の台頭と運用コスト

しかし、高速鉄道が爆発的な整備と普及を続けていく中で、中短距離区間の航空需要は年々縮小していく。一方でMA60自体も整備負担と信頼性の課題が同社の経営の足を引っ張ったという指摘もある。運用コストが想定以上に高く、他航空会社にとっても魅力的な導入機とはなり得なかった。

さらに地方政府からの補助金支給の遅延や滞りが続いたとされ、24年末には従業員への給与未払い問題が報道されるに至った。一部のパイロットはデリバリーの配達員に転身し、客室乗務員が夜市で屋台を営むといったエピソードが現実味を持って語られるようになった。

航空業界が直面する苦境

幸福航空の苦境は業界全体の停滞と無縁ではない。20年以降、コロナ禍による移動制限で中国の航空会社は大きな打撃を受けた。23年に国内旅行の回復が進んだものの、燃料費の高止まりや人民元安、国際線の低調などが重なり、業績は本格的な回復には至らなかった。とりわけ中国三大国有航空会社(中国国際航空、中国東方航空、中国南方航空)は24年までに5年連続で赤字を計上した。

業界再編が進む航空市場

中国政府と航空各社は近年、業界再編と構造改革を推し進めている。海南航空を中心とする海航グループは破産重整を経て方大グループの傘下となり、資本と運航体制の整理が進んだ。

24年には東方航空が子会社の一二三航空を吸収合併し、ARJ21C919といった国産機運用の一元化を図った。製造部門でも、AVIC傘下の成都飛機工業と中航電測が合併し、「中航成飛」として再編された。

中国で現在運航されている航空会社は66社。うち国有系が39社、民営系が27社ある。貨物専業の13社を含め、全体として飽和状態にあるという指摘もある。農業、測量、遊覧飛行などを行う通用航空会社は500社を超えるとされ、市場淘汰の圧力は年々高まっている。

地域航空と国産機政策の岐路

幸福航空の運航便停止は、地域航空ネットワーク整備の難しさ、国産機導入モデルの限界、航空インフラと旅客需要の乖離といった複合的課題を浮き彫りにした。「地域航空支援はなぜ続かなかったのか」「国産機を誰が運用すべきか」──そんな問いに、再び業界が向き合うときが来ている。(提供/邦人NAVI微信公衆号<WeChat公式アカウント>)

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