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北京市地下鉄の車内で、現金収入を得るために農村部から出てきて主に肉体労働に従事する農民工と呼ばれる人を見下す乗客と、見下すべきでない乗客の間で激しい口論が発生した。
中国の都市部には農民工と呼ばれる人々がいる。農村部から出てきて、主に肉体労働で現金収入を得る人々だ。中国には戸籍の移動の自由がない。農民工は都市部の正規の戸籍ではなく、臨時戸籍を取得して都市部に滞在するので、かつては自分の子を故郷から呼び寄せても学校に通わせられないなどの問題が多かった。現在では行政の対応もかなり改善されたが、都市部の昔からの住人から差別視されることは今もある。北京市地下鉄の車内では、「農民工見下し派」と「反見下し派」の激しい口論が発生した。
トラブルが発生したのは17日夕方で、北京地下鉄5号線の車内だった。退勤時間帯で車内には人が比較的多かったが、拡散した動画を見ると、座席が全て埋まる程度の混み具合だった。
座席には、農民工と分かる服装の、30代から40代とみられる男性が座っていた。上着にはほこりがついていて、ズボンには塗料が付着したとみられる斑点がある。足元には、ビニール袋に入れた大きな荷物があった。
隣に座っていた、やや高齢の男性が、農民工とみられる男性に文句を言い出した。「まるで乞食みたいだな。ほこりだらけで、なんで混みあったところにいるんだ?」などと、北京なまりでかなり露骨な罵(ののし)り言葉をまじえてまくしたてた。農民工とみられる男性はしばらく黙っていたが、しばらくして「背もたれにも寄りかかっていませんし、あなたにも触れていません。もし気になるなら、席を変えても構いませんよ」と説明した。「背もたれにも寄りかかっていない」とは、自分の服が汚れているので、背もたれを汚さない配慮をしているとの説明だ。
しかし、高齢の男性は「口撃」を続けた。また、自分は1000人を管理する立場であり、農民工が汚れた格好で地下鉄に乗るのは迷惑だなどと激しく、相手の人格を貶めるような語句を含めて文句を言い続けた。周囲の人がやめるように勧告しても高齢の男性は農民工とられる男性を罵り続けた。
すると、近くの席から若い女性が立ち上がり、高齢の男性に向かって「あなたはここに座っていないでください。私は彼の隣に座りますから、あなたは席を変えてください」と言った。女性は続けて「彼ら(農民工)が肉体労働をしているのがどうしたんですか。あなたの言い方はあまりにも失礼です」と強く言った。
周囲の乗客も女性の行動と発言を支持し、高齢男性を批判した。しかし高齢男性は全くひるまず、女性に向かって「お前に何の関係があるんだ? お前の口出しすることか?」などと女性を非難し始めた。
拡散した動画ではその後の状況が分からないが、北京市交通警察は19日になり、同件の概略と処理の状況を発表した。警察は、農民工を罵った男性は61歳で、座席の問題で乗客2人と紛糾し、その時間も長く乗車の秩序をかく乱したと説明した。61歳男性はその後、他の乗客によりその場から引き離されたという。警察はまた、61歳の男性に対して行政拘留の処罰を科した説明した。行政拘留とは警察など行政機関が、違法行為であるが格段に悪質ではないと判断した場合に、裁判を経ないで科す拘束処分のことだ。
同件は中国で大きく注目されることになった。中国の大都会の古くからの住民にとって農民工が「異質の存在」であることは事実だ。ただし農民工は都市建設に大きく貢献してきたとの認識も定着しつつある。ネットでは「自分が農民工によって作られた地鉄に乗りながら、農民工の汚れた服を嘲笑するなんて、実に心が寒々とする」という文章も披露された。(翻訳・編集/如月隼人)
— 中国動画 (@RC00547555) April 19, 2025
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