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26日、韓国映画「マルティニークからの祈り」が29日公開される。監督は「悪事を暴くのではなく、残念な現実を知ってもらいたかった」と語る。作品写真:(C)2013 CJ E&M Corporation,All Rights Reserved.
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2014年8月26日、韓国映画「マルティニークからの祈り」が今月29日公開される。平凡な主婦がフランスの空港で突然逮捕された。容疑はコカイン密輸。祖国から遠く離れた刑務所で、帰国に向けた戦いが始まる──。パン・ウンジン監督は「なぜ事件は起きたのか。悪事を暴くのではなく、残念な現実を知ってもらいたかった」と語る。
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2004年秋、ソウル。主婦のジョンヨン(チョン・ドヨン)は夫(コ・ス)と娘とつつましくも幸せに暮らしていたが、夫が友人の借金の保証人になって生活は一変。仕事も家も失い、債権者に負われることになる。そこへ夫が「パリへ荷物を運ぶだけで大金が稼げる」仕事を持ってきた。
不安にかられつつ引き受けたジョンヨンだが、フランスへ入国時に突然逮捕される。「黄金」と聞いていた荷物の中身は大量のコカインだった。パリでの拘留を経てカリブ海の島、仏領マルティニークの刑務所に収監されたジョンヨン。パリの韓国大使館に何度も支援を訴えるが取り合ってもらえず、帰国まで765日、2年以上にわたる戦いに挑むことになる──。
韓国で実際に起きた事件の映画化。パン監督は詳細を調べるうち、心の中に「なぜ起きてしまったのか」と疑問が膨らんでいったという。
「平凡な主婦になぜあんなことが起きたのか。どうして対応が遅れたのか。韓国外務省の不誠実な態度にも怒りを感じ、映画化したいと思った」
言葉の通じない異国で、ジョンヨンは何度も大使館に助けを求めるが、相手にしてもらえない。裁判も受けられず時間だけが過ぎていく。一方、韓国では妻を救うため夫が奔走していた。ある日、窮状を訴えるインターネットの書き込みをテレビ局関係者が見て取材を始める。曲折を経て夫はやっとジョンヨンのもとを訪れる。
「領事や大使を戯画化し、悪人にしたような面もあるが、韓国では『官僚はああいうものだよね』という反応が多かった。あくまで実話を基に描いた。後に在仏外交官から『麻薬犯罪を美化するような映画を撮りましたね』とは言われたが、目的は外務省の悪事を暴くことではなく、残念な現実を知ってもらうこと。異国で犯罪に巻き込まれた場合、在外公館は国民を守るべきだと思う」。
映画の大きな見どころの一つが、チョン・ドヨンの熱演だろう。イ・チャンドン監督作「シークレット・サンシャイン」(07)でカンヌ国際映画祭最優秀主演女優賞を獲得した実力通り、思わず引き込まれる熱演だ。パン監督の目には「非常に演技が正確な女優」と映ったという。
「カンヌで受賞後しばらく空白があり、今回の出演には意欲を持って臨んでくれた。大切な感情表現をするシーンの前は、十分に話し合って演技をする人。だからワンテイク、ツーテイクぐらいであまり繰り返し撮らないタイプ」
チョン・ドヨンにとって、「シークレット・サンシャイン」への出演は大きな転機になったという。
「イ監督は俳優に『現場を感じなさい』と言うように、具体的な演技の指示をしない。彼女も『最後には監督を憎悪するほどもどかしかった』そうだが、あれから演技のスタイルが変わり、今ではほかの俳優と格が違う女優になった。とても愛らしい面と、とても鋭く、ハリネズミのように頑固な面もある。よく話し合いながら、折れてもらうところでは折れてもらった」。
麻薬密輸を軸にした物語だが、根底で主人公の家族に対する愛情の深さが描かれる。ジョンヨンのモデルとなった女性の手記に、監督は深く共感したという。女性は事件の起きる前、家賃も払えぬ貧しさの中、幼い娘にダウンジャケットを買ってあげていた。投獄された事実より、家族に会えず、帰宅できないことこそ監獄だったのでは、という。
「娘さんが2年ぶりに彼女に会った時、『私が赤ちゃんだった時のお母さんなの?』と聞いたそうだ。とても印象的だった。彼女が訴えたかったのは、悔しさだけではなかったと思う。罪を認めたシーンに、『家に帰りたい。家族に謝りたい』というせりふを入れた。モデルになった女性は作品を観て、私を抱き締め『いい映画を作ってくれてありがとう』と言ってくれた」
不屈の765日間。家族に再会するため、不屈の精神で戦った女性の記録である。(文・写真/遠海安)
「マルティニークからの祈り」(2013年、韓国)
監督:パン・ウンジン
出演:チョン・ドヨン、コ・ス、カン・ジウ、ペ・ソンウ、コリンヌ・マシエロ
2014年8月29日、TOHOシネマズ シャンテほかで全国順次公開。
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