底辺の「負け組」を食い物に成功するネット小説家、中国版ニコ生主―中国

Record China    2014年8月18日(月) 3時20分

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「ネット作家、ネットパフォーマーの成功の秘訣。それは底辺の消費者にバーチャルワールドの中で楽しく過ごさせることに尽きる」―この挑発的な一文はウォール・ストリート・ジャーナル中国語版に掲載されたもの。写真は百度文庫。

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「ネット作家、ネットパフォーマーの成功の秘訣。それは底辺の消費者にバーチャルワールドの中で楽しく過ごさせることに尽きる」

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この挑発的な一文はウォール・ストリート・ジャーナル中国語版の記事「中国の●絲(ディアスー)文化(●=居の古部が吊)が新世代の富豪を作る」に掲載されたもの。

■中国のネット文学市場と玄幻小説

中国のネット文学は巨大な市場となっている。中国インターネット情報センター(CNNIC)の最新統計によると、ネット文学の利用者は2億8939万人。全ネットユーザーの46%がネット文学を利用している。ネット文学はいわゆる電子書籍ではない。紙の本を電子化したものではなく、最初からパソコンや携帯電話で読むために作られたもので、少額の課金で毎日連載される小説が読める仕組みだ。日本の携帯小説とよく似た仕組みである。

2012年のネット作家長者番付で1位となった唐家三少氏は印税収入だけで2650万元(約4億3900万)。代表作の『闘羅大陸』は漫画、ゲームとマルチに展開。その市場価値は年10億元(約166億円)に達するという。ネット小説を原作とした映画も増えている。唐家三少氏は「中国版アバター」的な映画を撮影中とのこと。今年9月に日本で公開されるヴィッキー・チャオ監督作品「So Young〜過ぎ去りし青春に捧ぐ〜」もネット小説が原作だ。

ネット小説の一大人気ジャンルとなっているのが「玄幻小説」だ。『闘羅大陸』も玄幻小説にカテゴライズされている。

このジャンル、解説が難しい。同記事によると、「だいたいのところスーパーヒーロー系やSF系の小説」という。ブログ「『日中文化交流』と書いてオタ活動と読む」は「中国のネットにおける「玄幻」はかなり大雑把なジャンルでして、現在の中国で広まっているネット小説系ファンタジーのジャンル全体を指すときもあり、その中身には中華系のファンタジーだけでなく、欧米系ファンタジー、SF、武侠アニメやドラマの二次創作的ファンタジーまで入ってしまうときもあります」と説明している。「ネットで人気がある、主人公が超強い小説」ぐらいに理解しておくといいのかもしれない。

■「負け組」を食い物に

大手ネット文学サイト・盛大文学によると、この手の小説の読者は90%が男性、ほとんどが20〜29歳であり、自らを「●絲」と名乗っている。●絲とは「高富帥」(背が高い金持ちのイケメン)の対義語、「負け組」と訳されることが多い。実際には都市中流層に属する人間が自称している場合も多いのだが、ウォール・ストリート・ジャーナル中国語版は容赦がない。

「多くが両親と同居し、条件の悪い仕事についているため家を買ったり結婚するほどの収入がない。ただ金はないが、妄想の中でより良い生活を過ごすのに十分な時間だけは持っている」

だんだん怒りがこみ上げてくるのだが、コラムの作者である顧蔚(グー・ウェイ)氏は同紙の「資産・ブランド品」担当の編集者とのこと。「●絲」とは遠い世界の住民のようだ。このコラムも●絲やネット文学に興味があるというより、成り上がりに成功したネット小説家を紹介するために書かれている。

■中国版ニコ生で月収1600万円

さてネット小説以外に取り上げられているのがネットパフォーマーだ。中国版ニコニコ生放送「YY.COM」では視聴者がパフォーマーにバーチャルプレゼントを贈ることができ、その量に応じて放送主は報酬を得る。トップクラスの収入は月100万元(約1660万円)を超えているという。

サイトを見ると、かわいい女の子がだらだらしゃべっていたり、あるいはお歌を披露したりという内容が多いようだ。リアルな恋愛や結婚を楽しむほど金銭的な余裕がない●絲に、安価な娯楽や女の子とのコミュニケーションを与えて儲けているということなのだろう。

この手の話を読んでいつも痛感するのは中国の巨大さ。膨大な数の参入者の上にごくごく一部の成功者が出現。小額課金でも広く薄くお金を集めて大成功を収める。ネットユーザー5億人の閉鎖市場があって初めて実現できるサクセスストーリーではないか。

◆筆者プロフィール:高口康太(たかぐち・こうた)

翻訳家、ライター。豊富な中国経験を活かし、海外の視点ではなく中国の論理を理解した上でその問題点を浮き上がらせることに定評がある。独自の切り口で中国と新興国を読むニュースサイト「KINBRICKS NOW」を運営。

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