東南アジアの詐欺がテーマの中国映画「孤注一擲」はタイの観光業に影響を与えたのか―米メディア

Record ASEAN    2023年11月15日(水) 9時0分

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ボイス・オブ・アメリカの中国語版サイトは14日、東南アジアの詐欺がテーマの中国映画「孤注一擲」はタイの観光業に影響を与えたのかとする記事を掲載した。写真はタイ・チェンマイのウィアン・クム・カーム遺跡。

米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)の中国語版サイトは14日、東南アジアの詐欺がテーマの中国映画「孤注一擲(No More Bets)」はタイの観光業に影響を与えたのかとする記事を掲載した。

「孤注一擲」は、東南アジアの某国に人身売買され、ネット詐欺に従事させられるコンピュータープログラマーを描いた作品だ。主演は中国の歌手・俳優のレイ(チャン・イーシン張芸興)と女優のジン・チェン(金晨)。

記事によると、東南アジアで実際にあった詐欺事件を描いた中国の大ヒット映画が、中国からの観光客に恐怖を感じさせ、タイ旅行を思いとどまらせる可能性があるとアナリストやデータが示唆している。

「孤注一擲」は、中国の劇場で大成功を収め、公開された8月には映画チャートで3週連続1位を記録し、中国で今年3番目にヒットした映画となり、公開初月に5億ドル(約758億円)を超える興行収入を上げた。

映画には、拉致された中国人観光客がミニバスに乗って、タイの首都バンコクの有名なスクンビット地区の道路標識の下を走行するシーンがある。

専門家らは、この映画が中国人のタイ旅行に永続的な影響を与えることはないものの、バンコクへの旅行を思いとどまる可能性があるとの懸念を引き起こしていると述べている。そして、映画の成功が不安を引き起こしたのはタイだけではない。

映画にはクメール語の文字が登場し、カンボジアは上映を禁止した。ミャンマーでは軍事政権が、この映画が国のイメージを「傷つける」と非難した。

米ライフスタイルマガジン、ロブ・リポートの元上級編集長ビンセント・ツアン氏はVOAに対し、タイが依然として中国人観光客にとって適した場所だと考えているが、悪いニュースがあれば一部の観光客を簡単に落胆させる可能性があることも認めた。同氏は「これが大きな問題になるとは決して思っていない。今年は1人でタイを訪れた。東南アジアには中国市場に適した興味深い場所がたくさんあることは分かっている」とし、「中国の古いことわざに『好事門を出でず、悪事千里を行く』というものがある。旅行業界も同様で、悪い事件は客を尻込みさせる」と語る。同氏によると、この映画が実際の出来事に基づいているという事実も視聴者の共感を呼ぶ理由の一つとなっている。

タイ政府観光庁のマーケティングコミュニケーション担当副局長、ニシー・シープラエ氏は、中国の大ヒット作がタイの観光業に影響を与えることはないと確信している。同氏は「旅行代理店と中国のパートナーによると、彼らの知り合いのほとんどはこの映画の真実を理解しており、今でもタイを安全な目的地として信頼していると述べた」と10月にVOAに語った。同氏は、観光当局が中国国内に住んでいない中国人観光客に対し、タイが安全に訪問できることを示す必要が依然としてあることを認めた上で、「中国のインフルエンサーやタイの中国人インフルエンサーのネットワークと連携する必要があるかもしれない」と付け加えた。

一方で、到着者数が予想よりも少ないことから、この映画がタイを訪れる中国人観光客にすでに何らかの影響を与えている可能性があるという証拠がある。

政府のデータによると、今年8月までに中国本土からタイに到着した客は220万人を超えた。しかし、タイ観光局は2023年末までに中国人観光客が500万人になると予測しており、来月末までにこの数字に到達する可能性は低いとみられる。

ただし、中国経済の減速や、9月にバンコクのショッピングモールで起きた銃乱射事件で中国人が犠牲になったことなど他の理由も考慮する必要がある。銃撃事件により中国人観光客約6万人がタイへの旅行をキャンセルしたと報じられた。

アジア観光アナリストのゲーリー・バウワーマン氏はVOAに対し、最近の事件が中国人観光客のタイ入国の決定に影響を与えていると語った。最近の2本の中国のヒット映画「孤注一擲」と「消失的她(Lost in the stars)」は、東南アジアにおける個人の安全と治安に関する問題について、中国のSNS上で広範な議論を引き起こした。銃乱射事件はこうした懸念をさらに悪化させ、タイは中国の旅行繁忙期に大量の予約キャンセルに直面した。

中国からの到着者は現在、査証(ビザ)なしで30日間タイに入国できる。免除期間は来年2月末で終了する。

2019年にタイを訪れた外国人観光客数は3900万人という記録的な数字となったが、うち1100万人が中国人観光客だった。

しかし、新型コロナのパンデミックにより中国人の旅行が制限されたため、アウトバウンド観光客は減少し、22年には中国からの到着者が27万3567人にとどまった。

ツアン氏は「そしてそれ以来、中国人観光客の国内旅行が容易になった」とし、「中国人観光客は大きく変わった。優先されるのは利便性だ。ビザ、飛行時間、言語。アジアエリアでは一部の客にとって航空券やホテルの値段がまだ高い。だから当然だろう。代わりに他の目的地を選ぶ人もいるだろう。第二に、中国国内の目的地は過去3年間で一層発展した。中国にはラグジュアリーな旅とエコノミーな旅の両方で多くの選択肢がある」と付け加えた。(翻訳・編集/柳川)

※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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