TSMC、台湾内に新工場を建設できる土地はあるのか、政府も奔走―仏メディア

Record China    2023年11月10日(金) 14時0分

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仏メディアのRFI は11月8日、世界最大の半導体ファウンドリーTSMCが、本拠地台湾での工場用地取得で困難に直面する現状について報道した。

仏メディアのRFI (ラジオ・フランス・アンテルナショナル) は11月8日、世界最大の半導体ファウンドリーTSMC(台湾積体電路製造)が、台湾半導体製造の中心地である新竹サイエンスパークの拡張エリアにある、のどかな龍潭地区への新規工場建設計画を断念したと報じた。

新竹の住民40人が、農村地帯の土地を政府が買い上げて半導体製造工場へ建設することに抗議してから2週間後のことである。ロイターはTSMCが新規工場建設を断念したことについて、「台湾政府が主導するサイエンスパーク拡張計画が抗議デモを勢いづけるだけでなく、半導体製造業が直面してきた『5つの不足』、すなわち土地、水、エネルギー、労働力、人材不足を露呈する事件だった」と伝え、「近年半導体製造業界の急成長に伴い工場用地の価格が高騰し、貴重なチップメーカーを支える台湾の能力が試されている」と述べた。

RFIによると、今年7月に政府が実施した新竹サイエンスパーク拡張計画に関する第1回公聴会では、活動家が「土地を奪わないで」と書かれた横断幕を掲げ、国立政治大学の許世栄(シュー・シーロン)土地経済学教授も声を大にして反対を訴えた。新竹サイエンスパーク管理当局は「土地利権者に公平な補償を行う」と強調し、「拡張計画が完成した暁には、年間600億~6500億台湾ドル(約2800億~3兆円)相当の2ナノメートル(nm)以下のチップが生産され、5900人の新規雇用も創出する」と訴えた。

台湾総統府前で起きた抗議活動の後、TSMCは「地元や関係当局を尊重する」旨を表明し、「政府と協力して台湾の他の場所に適切な土地を探す」と述べた。同社の声明においても「多くの選択肢があり、台湾での増産計画に何ら影響はない」との考えを明らかにした。

台湾政府、最先端技術の島内確保に奔走

台湾政府は最先端技術を島内に維持する決意であり、TSMCに土地代替案を提示する予定だ。経済部はロイターに対し、「利用可能な土地は業界のニーズを満たすのに『絶対的に十分』であり、台湾の中部や南部にあるサイエンスパークではすでに426ヘクタールの土地を新規の半導体製造工場用に確保している」と明かした。

一方、龍潭エリアの拡張計画において、政府はTSMCやチップメーカーの本部が集中する北部へさらに159ヘクタールの土地を買収する予定であり、市場価格で土地所有者に補償しなければならないという。

いつまで続くか、台湾に根差すTSMC

TSMCはこれまで住民や環境保護団体の反対にもかかわらず、アジアで最も価値ある企業としての経済的な影響力を背景に、台湾での事業拡大を続けてきた。同社も再三「台湾に根差し続ける」ことを表明している。

しかしTSMCのクリフ・ホー上級副総裁は今年、「台湾のリソースの制約を考慮した場合、海外にも進出しなければならない」と述べ、12月には米アリゾナ州にある新工場への投資を3倍以上の400億ドル規模(約6兆円)に拡大する予定という。ただし経済部がロイターに語ったところでは、最先端チップを含むTSMCのチップの90%は、依然として台湾での生産が占めている。

ロイターの報道によると、TSMCが目下建設中の2ナノメートル(nm)工場が立地する高雄市の陳其邁(チェン・チーマイ)市長は、「南部の都市にはより多くのチップを生産する能力がある。チャンスは準備ができた人のところに訪れる」と述べた。

台湾の国家戦略を支えるTSMC

アナリストは、「TSMCがもし人口が密集し山が多く土地不足の島である台湾から、米国、日本、ドイツなど数百億円のインセンティブを提供する国外に生産拠点を移転すれば、台湾経済の屋台骨が傾く恐れがある」と述べ、「台湾におけるTSMCの事業拡大は、台湾の経済と国家安全保障にとって戦略的意義がある」と指摘した。台湾において、TSMCが「国を守る神の山」と呼ばれるゆえんである。

昨年度、台湾チップメーカーの売上高は4兆8370億台湾ドル(約23兆円)に上り、このうち約半分はTSMCによるもので、台湾のGDPは22兆6670億台湾ドル(約106兆円)に達した。経済部によると、台湾チップメーカーは32万7000人を雇用し、間接的に70万4000人の雇用を創出した。(翻訳・編集/榊原)

※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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