中華文化が現代の世界に貢献できることとは何か―歴史に詳しい実践家が紹介

中国新聞社    2023年10月23日(月) 13時30分

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中華文化促進会の王石主席は、中華文化の最も重要な理念を適用すれば、人類は「大いなる和解」への道むことができるとの考えを示した。写真は中国を代表する舞台芸術の京劇。

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客観的に見て、現在の世界に対して最も強い影響力を持つ文化文明は西洋の文化文明と認めざるを得ないのではないか。例えば科学技術の基盤になっているのは西洋由来の学術体系だ。しかし「西洋文化こそが最も優れた文化」といった考え方はすでに時代遅れになり、「異なる文化のよい点は学び取る」が当たり前になった。新たな世界を築くに当たって、中国文化は極めて重要なのではないか。歴史が古く文化の完成度が高い上に、中国人や中国を離れて生活する中華系住民の数も極めて多いからだ。文化学者でもある中華文化促進会の王石主席はこのほど、中国メディアの中国新聞社の取材に応じて、中華文化および中華文化が今後の世界にできる貢献について所感を述べた。以下は王主席の言葉に若干の説明内容を追加するなどで再構成したものだ。

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人々が意識を深めたことで「中華文化」の語が定着

今年は改革開放45周年だ。この改革開放は文化についての考え方にも大きな影響を及ぼした。改革開放以前には、階級や革命、社会制度に関連して文化が語られた。プロレタリア文化、新民主主義文化、社会主義文化、封建主義文化、資本主義文化などだ。しかし現在では、「中華文化」という用語が多く唱えられるようになった。

改革開放の初期には、「華夏文化」、「炎黄文化」、「民族文化」、「伝統文化」など、多くの用語が使われた。しかし、問題ある用語もあった。例えば「炎黄文化」だ。この言葉は「古代の炎帝と黄帝の子孫の文化」という意味を内包する。自らを炎帝や黄帝の子孫とする認識を持つ民族は漢族以外にも存在するが、そうでない民族も存在する。「中華文化」は漢族の文化だけを指すのではない。それどころか、中国国内の56民族の文化だけでもなく、海外の6000万人以上の華僑華人の文化も含む概念だ。「中華文化」は極めて巨大で多元的な、国境を越えた文化圏を形成した。

文化の呼称にはもう一つの重要な意味がある。すなわち民族文化についての自我意識を示すことだ。「中華民族」という自称が20世紀初頭になって登場したのは、梁啓超(1873-1929)の功績だろう。「中華民族」の言葉が普及したのは、田漢(1898-1968年)が抗日戦争時代に後に国歌になった「義勇軍行進曲」の歌詞に「中華民族に最も危険な時が来た」の句を盛り込んだからだ。自称を用いることは、「私たちは何者であるか」という自覚を持つことを示す。「中華民族」という概念が成立したことで、中華民族の文化についての自覚が定着した。これが「中華文化」だ。

「中華文化」と「伝統文化」の概念は同一でない

私は中華文化促進会の主席を務めている。会の活動としては、例えば「20世紀華人音楽経典シリーズ」という催しを続けている。その趣旨は、20世紀の中国内外の華人にのる音楽の代表作品を回顧することだ。単に音楽作品を扱うのではなく、広大な文化空間を鮮やかに提示することがこの催しの意義だ。

会の芸術委員会のメンバーには、大陸の音楽家もいれば香港や台湾や海外の音楽家もいる。選ばれる音楽も、台湾の作曲家の江文也の管弦楽作品「台湾舞曲」や香港人の林楽培による民族管弦楽作品「秋决」、さらには中国系米国人の周文中の管弦楽作品「花落知多多」など、多くの国と地域の作曲家による作品を取り上げてきた。

1995年の「20世紀華人音楽経典」の台湾公演では、ホール内が満席になっただけでなく、ホール外の広場も人で埋め尽くされた。公演が終わった後、出演者は人々の求めに応じて広場でさらに30分間演奏した。台湾紙はこの公演を積極的に評価した。

中華文化促進会は北京市内で2004年、中国内外の華人の科学者、教育家、文系の学者、芸術家66人を招いて「2004文化サミットフォーラム」を開催した。出席した専門家は「グローバル化と中華文化」をテーマに、3日間にわたって心ゆくまで意見を披露しあった。

3年後の2007年には「中華文化」という言葉が中国共産党第17回党大会報告に盛り込まれ、「中華文化の発揚」という章が設けられた。その後も「中華文化」という言葉は新聞や雑誌のネット上で極めてよく使われている。

「中華文化とは伝統文化を指すのですか?」と尋ねられることが多い。答えは「ノー」だ。中華文化には伝統に加えて、時代とともに進む面がある。中華文化には一貫性があるが、同時に変化してきた。例えば、現在の中国絵画には伝統的な風格があるが、過去の歴史上の中国絵画と同じではない。それと同じことが、文化全体でも繰り返されてきた。

中華文化の思想は人類の「和解と共存」に貢献できる

中華文化促進会と台湾の太平洋文化基金は湖南省長沙市で2015年6月、「2015両岸人文対話」を共催した。テーマは「周は旧邦なれども、その命は維新-中華文化が人類の未来にできる貢献」だった。前半部分は「詩経」の「大雅・文王篇」からの引用で、「維新」とは「維(こ)れ、新たなり」と言うことだ。つまり、「周は古い国だが、受ける天命は常に更新されている」ということだ。

このテーマは私が作成したものだが、直接に参考にしたのは、思想史などの研究で大きな貢献をされた銭穆先生(1895-1990年)による「中国文化が人類の未来に貢献できうること」という文章だ。この文章は銭先生の最後の談話を整理したもので、短いが非常に重要なテーマを扱っている。銭先生は人生の最終段階で「天人合一」、つまり「宇宙や環境と人は切り離すことができない」が中国の最も重要な哲学思想であり、これからの人類に貢献する可能性のある重要な思想だとの考えを示した。

「両岸人文対話」には、台湾の学者だけでなく、コロンビア大学やプリンストン大学の教授も参加してきた。そして、これまでに北京、台北、杭州、宜蘭、長沙、香港、桂林、梅州などで11回行開催された。直近では2022年に北京と台北を結んでオンライン方式で開催した。大陸側の参加者はいつも、台湾学界の友人を目にして中華文化について議論するたびに、言葉にできないほど強い喜びを感じる。

中国芸術研究院中国文化研究所の劉夢渓所長は2018年12月、私に「人類は21世紀に和解に向かうことができるだろうか?」というテーマで、中国芸術研究院芸術・人文高等研究院で講演をするように依頼した。

和解に向かうことは全人類の共通の願いであるだけでなく、大きな流れでもあるはずだ。では、中華文化は和解のためにどのような思想を提供できるのだろうか。

私は講演で、古くは孔子(紀元前552年頃-同479年)の「和而不同」、新しいものでは費孝通先生(1910-2005年)の「美美与共、天下大同」など、さまざまな語句を使って解説した。「和而不同(和して同ぜず)」とは、「相手に屈して自らの信念をみだりに曲げることはないが、かといって争うのではなく、互いに安寧に共存する」ということだ。「美美与共、天下大同」は「それぞれが素晴らしい理想を追求しつつ他者の理想を尊重すれば、世界には調和がもたらされる」ということだ。

私が言いたかったのは、中華文化における異質な他者との共存の仕方だ。「大同」の考えには、和解に向かい、運命共同体に向かう豊かな思想の源が含まれてている。この思想は過去から現在まで一貫している、中国人の文化の精神と言える。

和解とは何か。過去の恨みを捨て、敵を友に変え、大局を顧み、手を握って和睦することだ。そして再会して微笑んで、恩讐(おんしゅう)を忘れることだ。和解を目指すたゆまぬ努力、妥協と譲歩、寛容と理解、忍耐、さらには解決策を見出せなくても現状を維持して紛争を棚上げし、リスクをコントロールし、衝突を低減すること。これらすべてが和解に向かう良策だ。

中華文化は、人類が和解へと向かう道を照らすともしびにすることができる。私はそう確信している。(構成/如月隼人



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