中国人が「竹をめでる」のはなぜなのか―専門家がアジアと西洋の違い含めて解説

中国新聞社    2023年10月8日(日) 23時0分

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中国では竹が梅、蘭、菊と並んで「四君子」と呼ばれるほど、竹が愛された。竹がある美しい光景でも知られる、江蘇省揚州市内ある庭園の个園(個園)。「个」はもともと、1本の竹を示す象形文字だ。

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竹という植物には何となく東アジア文化の雰囲気を感じる。もちろん、中国をはじめとする東アジアの文化が竹と密接にかかわってきたからこそ、竹という植物から東アジア文化を連想するわけだ。中国では竹が梅、蘭、菊と並んで「四君子」と呼ばれるほど、竹が愛された。「中国竹文化」などの著作もある雲南大学の何明客員教授はこのほど、中国メディアの中国新聞社の取材に応じて、中国文化における竹の地位などを説明した。以下は何教授の説明の主要部分に若干の説明内容を追加するなどで再構成したものだ。

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中国人の祖先は身近な竹を利用し、竹文化を発達させた

いかなる文化も、自然環境の影響を抜きには語れない。中国は竹類の種類が世界で最も多い国とされている。中国の黄河流域以南には、内陸部のチベットなども含めて竹が広く分布している。

揚州の个園

中国ではまた、竹の利用が極めて古くから始まった。今から1万年前の長江中下流と珠江流域の人々は竹を利用していたことが分かっている。7400年以上前の湖南省の高廟遺跡と7000年以上前の浙江省の河姆渡遺跡でも竹製品が発見されている。

今から4700年以上前の銭山漾遺跡からは、竹のござやかごなど多くの竹製品が発見されている。西周時代には竹製の垣根を作る専門職人がいた。その後も竹の利用はますます広がり、生活用品だけでなく灌漑(かんがい)施設、架橋、建物にも広く使用されるようになった。さらに唐の中期には竹から紙が作られるようになった。中国人は竹という素材の性質を深く理解し、高度の加工技術を獲得した。

竹や竹製品がある風景は、中国以外のアジア各地域や南米などでもよく見られるが、竹を最大限に利用して豊かで深い文化的意義を与えた国は、何と言っても中国だ。中国では古来、数多くの文人墨客が竹のために詩作をし、竹の絵画を創作してきた。紀元前の「詩経」や「楚辞」にも竹を詠んだ多くの詩句がある。魏晋南北朝の時期になると竹を文学創作の題材にすることがさらに盛んになった。

唐・宋の時代になると、竹文学は最盛期に達し、王維李白杜甫韓愈、柳宗元、白居易蘇軾、李商隠などが竹を詠んだ佳作を世に伝えた。特に蘇軾は竹を好み、竹を詠んだ詩が100篇以上もある。蘇軾は「食に肉なきは可、居に竹なきは不可。肉ければ人をして痩せせしめ、竹なければ人をして俗たらしめる」などとも論じた。唐代中期以降には竹を扱った絵画が登場した。五代十国時代の黄荃は、墨だけで描く「墨竹図」を創出した。竹の絵画は宋代に成熟し、文同や蘇軾も多くの作品を残した。

清代になると、竹文学や竹絵画はさらに発展した。また竹を書き、竹を描くことに優れた鄭燮が現れ、竹に新たな意義を与え続けた。竹は中華文化の美のイメージや理想的な人格などを表す重要な文化記号になった。

中国人は竹という植物に理想の人格を見いだした

中国では、竹に人格が投影された。この現象の背景には「天人合一」、すなわち人と自然は「二項対立」の関係ではなく不可分と見なされたことがある。言い方を変えれば、天の中には人がいて、人の中には天があり、天と人は互いに溶け合っているととする考え方だ。そして自然界にあるものの特性と人の感情、性格、理想などを結びつけた。

竹はまっすぐ伸び、強靭(きょうじん)で、厳冬でも青々としている。中国人は竹から、剛直さや強い忠節、揺るぎない志を感じ取った。これらの特質はいずれも、儒家が人格の理想とするものだ。竹が「四君子」の一つに数えられたことには、このような事情があった。

揚州の个園

竹はまた、非常に単純な形状をしている。煩雑さがなくおおらかな感じがすることも、竹が好まれた理由の一つだ。竹の単純な形状は、人為を嫌う道家の考え方にも符合している。中国人にとって竹は、超然たる精神を感じさせるものだった。

欧州には竹が自生していなかった。ポルトガル人が竹をインドから欧州にもたらしたとされている。米大陸の先住民は、竹で家を建たり道具を作ったりしていた。しかし中国など東アジアに比べ、欧州や北米の竹は種類が少なく、利用範囲がせまい。竹についての工夫も比較的少ない。そして竹に多くの文化的意義が与えられたわけではなかった。

「竹の精神」は現代の世界が直面する問題の解決に有効

西洋人を対象にしたある調査で、中国関連で影響力が大きい事項を10項目の中から選んでもらったところ、回答者の多くが長城と竹を上位に挙げた。つまり西洋人の心の中で中国と竹のイメージは固く結びついている。ただし東西の文化交流が深まるにつれ、東洋の竹文化が西洋に伝わり、今では多くの西洋人が竹文化を好むようになった。竹の素早い再生性と環境に優しい特質、そして中国人が竹に付与した粘り強さや寒さにもめげないといった印象は、西洋人にも好まれている。

もちろん日本や韓国といった東アジア諸国は、「儒家文化圏」とも呼ばれるように、歴史を通じて中国文化の影響を深く受け、竹箸や竹筆、竹の建築を利用し、中国絵画の様式も引き継いできた。その意味で、中国を中心とする東アジア文明は竹文明と言える。

竹文化は中華文化の中核の一つだ。竹文化が価値を置く高潔さや正直な品格、精神の追求は、物質と精神の関係を処理するのに、とても良い役割を果たす。竹文化の精神で人々を導くことができ、さらに精神価値の創造、文化の創造を重視することができる。

竹文化が竹に託した品格は、物事を寛容に受け止め、人に謙虚に接し、困難を恐れず、友好的な付き合いを堅持し、共に発展することを思い出させてくれる。また、中国の竹文化が体現している竹と人が一体となり、人と自然が調和し共生するという考え方は、人と宇宙についての認識を再構築するのに役立ち、人と自然の生命共同体および人類運命共同体を構築する上で重要な啓示の意義を持つ。

総括して言えば、中国の竹文化は中華民族の現代文明と現代文化の基盤であり、世界全体にとっても重要な意義を持つ。(構成 / 如月隼人

※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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