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なぜボーイズラブを取り締まるのか?同性愛は“国民の義務”違反―中国

配信日時:2014年8月5日(火) 7時10分
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ボーイズラブ(BL)小説がネットから削除され、作者が警察に呼び出される。時には逮捕され有罪判決を受けることもある。写真は広州の街頭で「結婚式」を挙げる同性愛カップル。
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ボーイズラブ(BL)小説がネットから削除され、作者が警察に呼び出される。時には逮捕され有罪判決を受けることもある。日本でも話題となった中国のBL規制だが、その背後には「社会主義への回帰」という大きな流れがある。

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■中国のBL小説人気

2014年7月2日、全国ポルノ違法出版物取り締まり弁公室はポルノ小説摘発など29件の事例を発表した(財新網)。チャットグループでのポルノ情報のやりとりなどもあげられているが、メインのターゲットは小説サイトだ。大手IT企業が運営する小説サイトから狭いジャンルの愛好家が集う中小サイトまで摘発を受けている。また数年前にはBL小説の作者が有罪判決を受けたこともある。

中国では有料小説サイトが人気で、ネットサービスの中でも根強い人気を誇る大ジャンルを形成している。数十万人のネット小説作家がいるとみられ、トップは作家長者番付にランクインするほどの収入を得ている。その人気ジャンルの一つがBLだ。中国語で「耽美小説」「BL小説」と呼ばれるジャンルだが、「日本の影響を受けた、女性読者を対象とした男性同士の恋愛を描くジャンル」である。

なぜBL小説の検閲や作家の逮捕が問題となるのか。第一に表現の自由の侵害であるため、第二に同性愛者の権利を侵害しているためだ。同性婚を認める国も増えつつある中、弾圧は時代に逆行したものと言えよう。

なぜ中国はBL小説を弾圧するのか?そこには独自のロジックがある。それが社会主義家族観だ。

■「出産は義務」社会主義家族観

近代国家では恋愛は個人の自由が建て前である。そのため同性同士でも本人の自由意思によるなら干渉をするものではなく、同性婚が容認されるようになるわけだ。ところが社会主義国家の家族観は違う。

「男がいて女がいて、そして国家がある」と考える。つまり夫婦は「国家に対し、次世代を担う子を産み、育てる」という義務を負っている(1)。同性愛者など子を産むことができないカップルは、義務を履行するできないため容認されない。

この社会主義家族観は中国婚姻法第10条に象徴的だ。「医学上結婚するべきではない病気に罹り、結婚後も治癒しない場合」には婚姻は無効だと定めている。この病気とは性的不能などを指す。「子を残せない者は結婚するな」という国家の意思が体現されているわけだ。

ちなみにこのような家族観は中国だけのものではなく、ベトナム、北朝鮮、旧東ドイツ、旧ソ連などにも類似する条文や夫婦の国家に対する義務を謳った条文は確認できる。まさに「全体の利益」を重んじる社会主義法ならではの発想だ。

■BL規制と一人っ子政策の根源は同じ

「世界中が同性愛を認める方向なのに、中国だけは弾圧の方向に動いている。我々は自分たちの地位を求めているわけではない。こんな人もいることを認めてほしいだけなのだ。」

筆者が中国である同性愛者から聞いた言葉だ。当然の意見に思えるが、社会主義国家では同性愛者は「子を産み、育て、国家の未来に貢献する」という義務を果たすことができず「認める」ことすらできない存在なのだ。冒頭に述べたように、BLサイトが人気を博すなど中国ではBLサイトに寛容な姿勢を示すようになったと思われた。しかし最近のBL規制はこの社会主義家族観への回帰と言えるのではないだろうか。

昨今、インターネット上の規制強化など、社会主義回帰を思わせる規制強化が随所に見られた。インターネット世論は中国の体制にも影響を与えるため、規制するのは当然と言えよう。しかし直接的には体制と関係ない家族観までもが社会主義回帰を始めたというのは大きなことだ。

「子を残す義務」について言及してきたが、国家への貢献が最優先される社会主義家族観ではその逆もありうる。それが一人っ子政策だ。

国家が「子は少ない方がいい」と判断したら夫婦は当然にこれに従う義務を負うわけだ。国際社会からは「産む自由もないのか!」と批判されているが、「そうです、産む自由はないのです」というのが中国の論理である。

総括すると現在の中国の家族政策は「男は必ず女と」、「女は必ず男と」結婚しなければならず、産む子どもの数にも規制があり、それが「国家から夫婦に課された義務である」という非常に制限的なものであるということだ。

(1)福島正夫「社会主義の家族法原理と諸政策」福島正夫(編)『家族 政策と法5社会主義国・新興国』東京大学出版、1976年、25頁。

◆執筆者プロフィール:高橋孝治(たかはし・こうじ)

日本文化大学卒業。法政大学大学院・放送大学大学院修了。中国法の魅力に取り憑かれ、都内社労士事務所を退職し渡中。現在、中国政法大学 刑事司法学院 博士課程在学中。特定社会保険労務士有資格者、行政書士有資格者、法律諮詢師、民事執行師。※法律諮詢師(和訳は「法律コンサル士」)、民事執行師は中国政府認定の法律家(試験事務局いわく初の外国人合格とのこと)。『Whenever北京《城市漫歩》北京日文版増刊』にて「理論から見る中国ビジネス法」連載中。ブログ「中国労務事情」を運営。

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