中国人の訪日団体旅行解禁、爆買いブーム再来へ―「30年6000万人」訪日客目標に弾み

八牧浩行    2023年8月14日(月) 12時30分

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中国から日本への団体旅行が解禁された。爆買いブーム再来など訪日旅行需要の急回復が見込まれる。写真は上海浦東国際空港。

中国から日本への団体旅行が10日に解禁された。新型コロナウイルス感染拡大後は一部の個人旅行に限られ、団体旅行は2020年1月から約3年6カ月にわたり停止したままだった。コロナ前は人数、消費額共に最大だった中国人訪日客の団体旅行が本格的に再開されたことで、訪日旅行需要の急回復が見込まれる。

コロナ禍前の2019年、中国人訪日客は全体の3割に相当する959万人が日本を訪れていた。消費額は訪日客全体の37%に当たる1兆7700億円に達し、国・地域別で共にダントツ。1人当たりの買い物額も唯一10万円を超えており、「爆買い」がブームとなった。

ところが、新型コロナ感染への対応策により2020年初から激減。水際対策が大幅に緩和された昨年10月以降も、中国政府によって日本行きの団体ツアーの手続きは禁止されたままだった。中国がゼロコロナ政策を緩和した後、今年3月までに60カ国への団体旅行を解禁したが、日本は含まれていなかった。

こうした中、インバウンド需要全体の回復が鮮明だ。日本政府観光局が発表した6月の訪日外国人客は207万3300人と、新型コロナウイルス感染症の拡大により訪日外国人が大幅に減少した2020年2月以降、初めて200万人を突破した。新型コロナによる水際対策が緩和されてから個人旅行が回復しつつあり、コロナ前の2019年6月比で72%まで戻った。

6月の訪日外国人客を国・地域別に見ると、韓国が54万人と最多。続いて台湾38万人、米国22万人の順。中国は20万人にとどまり、88万人を超えていた19年6月には遠く及ばず、日本への団体旅行規制がネックとなっていた。中国人にとって日本は人気旅行先であり、同規制の撤廃により、日本の観光・旅行業界は中国人訪日客の急回復を期待している。

日本政府は訪日客数を2020年に4000万人にする目標を掲げ、19年には3188万人に達した。コロナ禍で急減したが、2030年に訪日客数を6000万人に増やす政府目標を維持している。

免税店売上、急拡大を期待

日本政府観光局は、今年3月に策定した「新たな観光立国推進基本計画」を踏まえ、「観光立国の復活に向けて、観光地・ 観光産業について持続可能な形で『稼ぐ力』を高めるとともに、地方誘客や消費拡大を促進していく必要がある」とアピール。「海外旅行会社等へのセールス強化や情報発信を通じた高付加価値旅行、アドベンチャートラベルの推進、MICE(国際会議・展示会)誘致等の取組を強化していくことが求められる」と呼びかけている。

羽田空港

全日本空輸(ANA)の国際線便数はコロナ前の7割弱まで回復。感染拡大で閉鎖されていた羽田空港第2ターミナルの国際線施設が約3年ぶりに再開され、本格的な訪日客受け入れ体制が整った。

日本では消費も堅調で円安効果も追い風に、高級ブランドなどの免税品の売り上げが増加した。「客単価はコロナ前の倍。とにかく高いものが売れる」(大手百貨店)との声も聞かれる。一方、コロナ禍で宿泊客が急減し、多数の従業員を離職させてしまったホテルや旅館は、客足急増で人手確保に苦戦しているところもある。

フランスの高級ブランド「ルイ・ヴィトン」(LVMH)グループは日本での今年上半期の売上高が前年比31%増を記録。ジャン・ジャック・ギオニ最高財務責任者(CFO)は「中国人観光客の海外での消費も回復し始めており、彼らが売上高に貢献する割合は22年の15%から23年には30%に増える」と見込んでいる。

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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