慰安婦像ってこんなに種類があったの!?韓国で増殖する慰安婦像、個性豊かな115体が一挙集結

Record Korea    2023年8月19日(土) 12時0分

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韓国全土に点在する155体の慰安婦像の写真と、像の住所や制作意図、設置後の実情など詳しい解説が載っている「慰安婦像大図鑑」という本がパブリブ社から出版された。

歴史問題により、政治・外交面で一時は戦後最悪と言われる状態にまで冷え込んだ日韓関係。その中でたびたび話題に上ってきたのが慰安婦像問題だ。

慰安婦像といえば、ソウルの日本大使館前にある、椅子に腰掛ける少女をかたどったものが一般的によく知られているが、実はその姿形はバラエティーに富んでいる。2011年に日本大使館前に設置されたのを皮切りに韓国全土に建てられ、その過程でさまざまな進化を遂げた。中国・フィリピンとコラボしたものや、土下座する安倍晋三元首相らしき人物をにらみつけるというストーリー性のあるものもあり、その数は150体以上に及ぶとされている。

そうした中、「慰安婦像大図鑑」というインパクト抜群の本がパブリブ社から出版された。著者は渡韓歴20年以上、ディープな韓国旅が趣味の日野健志郎さん。本書には韓国全土に点在する155体の慰安婦像の写真と、像の住所や制作意図、設置後の実情など詳しい解説が載っている。政治的議論は一切抜きにして、慰安婦像を純粋にアートの観点から紹介している。A5判、オールカラー224ページのボリュームで、この1冊で慰安婦像のすべてが知れるといっても過言ではない。

羅州学生独立運動記念館広場の慰安婦像

本書の発売に当たり、レコードチャイナは著書の日野さんにインタビューを実施した。

■この本を出版した目的は何でしょうか?

本書のまえがきにも記しましたが、私はもともと韓国渡航が趣味だったのですが、観光客がよく足を運ぶような観光地ではなく、タルトンネと呼ばれる貧民街やスラム、日本軍の拷問のろう人形が置かれた刑務所博物館や光州事件の博物館など、いわゆるダークツーリズム的な旅を楽しんでいました。そんな中、本業で編集者という仕事をしていたこともあり、ただ見て楽しむだけでなく、こうしたものを形として残したいと思うようになりました(元来の趣向が「変な物好き」で、愛読書が「ディープコリア」だったのもあります)。

貧しい時代のソウルの光景を収めたキム・ギチャンという写真家の「路地の風景」という写真集が好きで、特にタルトンネがどんどん姿を消していく過程で、今あるうちに何とか形にできないかと思い、いくつかの出版社の編集者に相談したのが2018年ごろ。その中に今回の版元のパブリブさんがあって打ち合わせしたところ、写真集はマーケット的に難しいという話になったのですが、何かディープな本が作れないかという話になり、アイデアの1つとして出たのが「慰安婦像」でした。

この時点で韓国全土に存在する慰安婦像の数は100体以上。私もパブリブの濱崎さんもてっきり日本大使館前の像が韓国全土にあるものと当初は思ったのですが、試しにソウル市内の像を15カ所ほど巡ってみると「発見」がありました。確かに日本大使館前と同じデザインの像が多かったのですが、それとは違ったデザインの像もあり、また同じ像でも日本のお地蔵さんのようにさまざまな「衣装」が施されており、像ごとに印象が違ったのです。

私同様、日本人の多くは慰安婦像といえばステレオタイプなイメージだと思います。実際はデザイン、外形的な「衣装」、さらには周囲の景色など(像の周りが造園のようになっている個所も少なくありません)幅広く存在し、 またそれが韓国全土に浸透している実情を知ってもらうことに意義を感じました。慰安婦像は日本が深く関わる政治性を帯びた極めてセンシティブな造形物でありつつも、その実態についてはかつての私がそうだったようにほとんど知られていないといっても過言でないと 思います。この異端の究極のカルチャーをアート的な側面を中心に日本国民にも知らしめたいと思いました。

羅州学生独立運動記念館広場の慰安婦像

■この本の見どころを教えてください。

オールカラーですので、まずはさまざまな像のバリエーションを見て楽しんでいただけると幸いです。像それぞれの顔立ちや表情のバリエーションもさることながら、再生のシンボルである鳥や蝶など政治的メッセージを内包した周辺のアイテムも味わいがあります。上に記したようにさまざまな奇抜な衣装を施している像も少なくないですし、単独ではなく複数の像も存在します。脇に徴用工像や安重根像がカップリングされた像も。ビジュアルを存分にお楽しみいただけると幸いです。

■バリエーション豊富な慰安婦像の中で、特に印象的だったものはありますか?

オリジナリティーあふれる像が印象に残りましたが、その中で3つ挙げると、益山駅前広場の日韓合意文書を踏みつけて粉砕している像は政治的メッセージをストレートに反映していて度肝を抜かれました。

コスプレ」で言えば、ソウル西大門区の大賢文化公園の像はそもそも背中に羽が生えている風変わりなデザインなところ、その上からいろいろ防寒衣装を着せられ過ぎて何の像か分からなくなっていて、インパクトがありました。

あとは安倍元首相が慰安婦像の前で土下座している像ですね。これは問答無用の存在感がありました。昨年足を運んだ亀尾市の像などはウクライナ国旗が置かれていて、政治的な話題にもタイムリーに反応する様が興味深かったです。他にも岡本太郎の太陽の塔風の像や正面が鏡になっている像、白いマリア像風など、見ていて飽きません。

江原道旌善アリラ村の慰安婦像

■韓国全土の慰安婦像を撮影・取材するに当たり、最も苦労したのはどんなことでしょうか?

やはり天候です。大半の像は公園など屋外に存在し、太陽の出ている時間帯に自然光で撮影するのを基本方針にしていました(夜間だけライトアップされる束草の像や少女時代の慰安婦の影が浮かび上がる利川の像などは例外)。このため、撮影時間をフルに使えるように、日の出からすぐ撮影開始できるように撮影を終えた前日夜に移動を終えるなど、スケジュール設定をしていました。こうしたスケジュールの管理が大変といえば大変です。

また、その時々の天候によって撮影条件は変わります。限られた時間の中で撮影するので、晴天なら晴天、雨なら雨で、その時の気象条件に応じて撮影していましたが(雨の日の石像などは水を吸って黒ずんで独特の雰囲気が出たりするので味があったりすることも)、さすがに豪雨の際などは弱りました。一応、雨天用のカバーなども持参していましたが、撮影機材を入れたカバンを持っての悪天候の中での移動も苦労しました。

■韓国現地での取材中、印象に残ったエピソードがあれば教えてください。

実はひたすら像を撮っていることが大半なので人的な交流はあまりなく、際立ったエピソードはあまりないのですが(全体的に像の周囲の大人は無関心ですね)、公園で小さな子どもたちが像の周りで遊んでいる光景は印象的でした。崇高な理念で建立された慰安婦像も幼子たちにとっては格好の遊び道具で、文字通りおもちゃにされていました。小さい子が像の上に乗っかったり、水鉄砲を浴びせたり、像に着せられた靴下が野外学習(?)の小学生たちにあっという間に脱がされたりしていました。

雄府公園の慰安婦像

■この本を通じて日本の読者にどんなことを伝えたいですか?

一番は読者の方々に日本大使館前の慰安婦像のステレオタイプを脱し、さまざまな像が存在するのを知っていただきたいですが、この異端文化がこの10年ほどの間に遂げた独自の変遷や、像の設置が多くの場合、地元で反対が起きるなど難航していて必ずしも歓迎されているわけではないこと、像のデザインをめぐって著作権のクレームが起きていることなど、各地における設置に際した背景事情などを伝えることで通り一遍の「反日のシンボル」ではない、韓国内における慰安婦像の全体像を知っていただけたらと考えています。

■韓国に慰安婦像を見に行こうと考えている人へアドバイスをお願いします。

複数の像を見る場合はルートの策定が重要。公共交通機関を使う場合、地方はバスや鉄道の接続が悪いことも少なくなく、事前に交通案内アプリなどを使ってルートの策定シミュレーションを行うことが重要。あとは天候のチェックでしょうか。

■今後予定されている新しいプロジェクトがあれば教えてください。

プロジェクトかどうかは分かりませんが、8月29日(火)に高円寺パンディットでトークイベントを行います。(取材/堂本

※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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