南シナ海沈没船の引き揚げに力を入れる中国が得る「利得」とは

Record China    2023年7月4日(火) 5時0分

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中国は海底に沈む歴史的な沈没船の調査研究に力を入れている。そのために長年の努力で蓄積してきた技術は他の分野にも利用できるという。写真は海から引き揚げた文化財を所蔵する中国(海南)南海博物館。

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南シナ海は古くから、重要な貿易の航路だった。悪天候などで沈没して、今も海底に横たわる船も多い。中国はそんな沈没船の調査研究や引き揚げに極めて熱心だ。中国はなぜ、沈没船の研究に力を入れるのか。最近では英国誌「エコノミスト」も同件を解説する記事を発表した。

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中国は考古学の研究に力を入れてきた。沈没船の研究も考古学の一分野であり、水中考古学と呼ばれている。水中考古学の大きな難関が、技術の確立だ。深海から船の積み荷や船そのものを引き揚げるには、極めて高度な技術が必要だ。

中国の水中考古学チームは2022年10月に南シナ海北西部の深さ1500メートルの海底斜面の2カ所で沈没船を発見し、それぞれ南海西北陸坡1号沈船、同2号沈船と命名命名した。いずれも明代の船で、「1号沈船」には中国で製造された陶磁器が大量に発見された。つまり「輸出」のための輸送を行っていた際に沈没した。「2号沈船」には大量の丸太が積まれていた。東南アジアなどで伐採した木材を中国に運ぶ途中だったと考えられる。

南シナ海では、沈没船100隻が存在するとされている。多くは中国船だ。中国当局は「中国の先人が南シナ海を開発し、利用し、往来してきた歴史的事実が反映されたもの」と説明している。中国は南シナ海の広大な海域と点在する島について、自らが領有権や諸権利を持つと主張している。中国は論拠としてさまざまな文献や古地図を挙げているが、古い時代の中国の沈没船が多いことも、権利主張の論拠にしている。

1985年には英国人が主導する調査隊が南シナ海海域で、中国の磁器と金を積んだ18世紀の沈没船を発見した。中国歴史博物館は1987年に水中考古学研究室を設立し、同分野に大規模な資金投入をするようになった。今では中国が沈没船の探索や調査を主導している状況だ。パラセル諸島(西沙諸島)周辺では、中国の研究者が少なくとも10カ所の沈没船跡を発見している。中国は改めて、自国が何世紀にもわたってこの海域を管理し続けてきたことを裏付けるものと主張した。

中国の水中考古学は早い時期には日光が海底まで届くような浅海を対象に行われてきた。2007年には「南海1号」と命名した800年前の沈没船全体の引き揚げに成功した。この「南海1号」は水深23メートルの浅い海の底で2メートル近い泥に埋もれていた。しかし、浅海の調査研究ならば投入せねばならない技術のレベルが低いかと言えば、そうとも言えない。例えば「南海1号」の場合は、古くて壊れやすい船の原型をとどめたままで引き揚げ、しかもその船体を半永久的に保存せねばならない。「南海1号」の場合には発見が1987年で、引き揚げまでに20年を要した。当時の中国は今から比べれば資金力にも乏しかったが、技術面の制約も大きかった。

中国は2018年ごろからは深海の沈没船の調査にも力を入れるようになった。もちろん、深海海底の調査研究は技術状の難度も飛躍的に大きくなる。中国では例えば、「深海勇士」という、水深4500メートルまで潜れる有人深海潜水艇も水中考古学の調査に投入されるようになった。「南海西北陸坡1号沈船」と「同2号沈船」の調査でも、「深海勇士」が活躍した。

水中考古学の調査に投入される技術は、他の分野にも大きな影響をもたらす。例えば、かつての南シナ海の経済にとっての意味は「物流ための通路」だった。しかし現在では海底に眠るさまざまな資源が利用可能になってきた。つまり、深海を調査する技術は、経済上の利益にも直結する。「深海勇士」は南シナ海のガス油田の開発を支援している。

さらに、海底の詳しい状況は海軍艦船、例えば潜水艦の行動にとって極めて重要な情報だ。中国はすでに、南シナ海の探査について、最も強大な能力を有する国になったと言ってよい。(翻訳・編集/如月隼人

※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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