イランとサウジの和解を成立させた中国の仲介―専門家が背景と構図を解説

中国新聞社    2023年6月19日(月) 15時0分

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厳しく対立していたイランとサウジアラビアが和解した。大きく貢献したのが中国による仲介だった。中国が和解に成功したのはどうしてだったのか。また、そのことは世界のどのような変化を示しているのか。

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サウジアラビアの首都リヤドで6日、イラン大使館が正式に再開された。これに先立つ4月6日、サウジ、イラン2カ国が7年間の断交を経て握手をしていた。仲介役を務めたのは中国で、サウジのファイサル外相とイランのアブドラヒアン外相が公式会談を行ったのは北京市内だった。中国が「犬猿の仲」だった両国の間を取り持ったことには、どのような意義があるのか。今後の国際情勢とどのような関係があるのか。中国メディアの中国新聞社はこのほど、米国誌「中国政治学ジャーナルの」副編集長で華東師範大学政治国際関係学院教授のジョセフ・マホーニ氏と北京外国語大学の曲強研究員に、関連事項を取材した。以下はマホーニ、曲の両氏の言葉に若干の説明内容を追加するなどで再構成したものだ。

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サウジもイランも中国を信頼できた

マホーニ:イランとサウジの双方が北京での会談を選んだことは、両国が中国を信頼しており、中国の調停に積極的に応えたいと思ったことを示す。その半面でイランとサウジの両国とも米国への不信感に満ちており、米国が主導する世界秩序の枠組みから飛び出している。今や米国の世界的な影響力は低下している。

曲:中国は一貫して中東の発展の推進者だ。対立の歴史がある両国が同時に中国を選んだことは、中国がこの中東で公正かつ中立で信頼に足る国際的地位を持つと、両国が認めていることを示す。このことで、米国一国が中東地域のすべてを支配する時代は終わったという重要なシグナルが世界に向けて発信された。

マホーニ:われわれはかつて、サウジとイランの対立はスンニ派とイランのシーア派の宗教の相違が原因としてきた。しかし、両国の対立については、米国のイラン敵視と、米国主導の石油価格を確保するための中東地域を分割統治する戦略を考える必要があるはずだ。

米国は今、中東から撤退して、そのことが中東にもたらしたトラブルを後回しにしている。米国が中東を捨てたのは、中東での責任を軽減して、中国に対立の矛先を向けるためだ。その過程で、米国とサウジの関係は悪化した。中国はイランともサウジとも良好な関係を維持しており、中国が仲介役を務め、かつ米国の関与なしに、今回の和解が成立した。

米国の中東政策の根底にあるのは石油とドルの利権

曲:第2次世界大戦後の米国の中東政策はまず、石油とドルに主眼を置いた。米国がサウジ王家やイランのパーラビ朝を支援したのは、石油の確保や、ドルと石油の緊密なリンクのためでだった。しかしイランで革命が起こると、米国は自国の利益を最大にするために、中東の分割統治を考えた。かつての同盟国のイランは、石油関連でも米国の最大の対抗者になった。そのため、米国はサウジに肩入れした。そのことで、イランはサウジにも反発することになった。

しかし、中国の場合は違う。中国は中東の発展の推進者だ。中国には中東に対する歴史的な問題がない。そしてイラクの戦後復興を支援し、サウジの未来都市建設を支援し、イランの経済再建を支援してきた。中国はイランとサウジの双方の友人であるため、イランとサウジの双方が自制心をもってテーブルについて話し合い、双方と地域全体の利益に合致する決定を下したわけだ。


マホーニ:イランとサウジの両外相が北京での会談を選んだのは、中国が関係回復の過程で果たした建設的な役割と、中国の中立的な立場によるものだ。この選択は、両国の北京での会談が大きな進展をしたことから見ても賢明だった。

イランとサウジの両国は北京での会談にあたって二つのシグナルを発した。まず、両国は中国を信頼しており、だからこそ北京ではこれまで不可能だった話題を取り上げる用意がある。次に、両国とも中国の調停への積極的な対応と、中国の調停の下で両国の外交関係回復を推進する能力を示したいと考えているということだ。つまり、米国は信じられないが、中国なら信じられるということだ。

中国が大国外交を通じて世界平和の擁護者としての役割を示す、新たな時代になりつつあるのかもしれない。まだ冷戦思考にとらわれているいる米国とは対照的だ。

「ゼロサムゲーム」の発想は、もはや時代遅れ

曲:イランもサウジも中国を選んだことで、この対立してきた両国のいずれもが、中国がこの地域における公正中立で信頼するに足る国際的地位を持つことを認めていることが示された。また、中国の経済における独特な役割は中東各国と補完関係にあり、各国から歓迎されている。各国は中国とこれを契機に長期的な協力と発展の関係を結ぶことを望んでいる。中国式現代化や「一帯一路」構想は、地域各国の将来の持続可能な発展に重要なチャンスを提供するようになった。さらに、中国は独立自主、平和的発展の発展途上大国として、その政治的影響力と国の総合的能力は、この地域の将来の安定した発展のために物質面と安全保障を提供することができる。

イランとサウジはかつても相手に接触しようとしたことがあったが、米国や西側諸国が干渉したことで挫折した。両国が中国を懸け橋にすることを選んだのは、中国の各方面の実力に対する最大の信頼だ。

このことはまた、米国が1国で、中東地域のすべてを支配する時代は終わったという重要なシグナルを世界に発信した。現在の中東は、国際舞台での自らの地位と影響力を高めたいと望んでいる。

マホーニ:米国のやり方はゼロサムゲームだ。米国経済はドルシステムに依存しており、それを特定の方法で操ることができる連邦準備制度理事会(FRB)に依存している。米国の安全保障観は、米国がその覇権的地位を維持し続けることにほかならない。しかし今、米国の覇権的地位は弱体化している。

一方の中国は、世界で何が起ころうとも、最終的には自国に影響を及ぼすことを理解している。中国は世界の多くの国にとって主要な貿易相手国だ。すなわち中国は、グローバル経済の中で大きな役割を果たしている。したがって、中国の利益になることは世界の利益になり、世界に利益をもたらすことができることは中国の利益にもなると理解している。しかし、米国は異なる考えを持っている。これが両国の安全保障観における重要な違いだ。

曲:ゼロサムゲームは、西側の一部政治家の非常に古い考え方だ。世界はすでに変わっている。あちこちを見て回れば、すべての国の利益が一体化する全く新しい世界が出現したことが分かる。「ゼロサムゲーム」ではなくて「私は隣国がますます発展するのを見たい。そのことによって私の国も利益を得るからだ」――これはウィンウィンということだ。米国もこのことを理解すべきだ。

中国は常に多国間主義の断固たる提唱者だ。例えば、「一帯一路」などは関係国にも中国自身にも利をもたらす。われわれは世界全体をより良くするために手を携えることで、最終的には皆が勝者になれる。(構成 / 如月隼人

※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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