中国スマホメーカーの半導体自社開発に疑問符、OPPOが撤退を発表、シャオミやvivoはどうする?

高野悠介    2023年6月7日(水) 7時30分

拡大

スマホメーカーの動きから、中国の半導体業界を展望してみよう。

日本のスマホ市場に進出したファーウェイ(華為)、OPPOシャオミ(小米)は半導体(チップ)の自社設計を手がけていた。そのうちOPPOが完全撤退を表明し、大きな話題となっている。シャオミやもう1つの大手vivo、元ファーウェイの栄耀(HONOR)がどう動くかに関心が集まっている。独自チップ開発は続けられるのだろうか。スマホメーカーの動きから、中国の半導体業界を展望してみよう。

■スマホシェア…サムスンアップルが2トップ

直近のスマホシェアを抑えておこう。市場調査会社Canalysによれば、2023年第1四半期の世界と中国のスマホシェアは次の通り。

世界シェア

1位 サムスン 22%

2位 アップル 21%

3位 シャオミ 11%

4位 OPPO 10%

5位 vivo 8%

サムスン

中国シェア

1位 アップル20%

2位 OPPO 19%

3位 vivo 17%

4位 栄耀 14%

5位 シャオミ 13%

アップル

サムスンは自社でチップを製造しており、アップルは世界最大のファウンドリー、台湾TSMCの最重要顧客で、共に供給面に不安はない。この2強に対し、ファーウェイ(と分離した栄耀)、シャオミ、OPPO、vivoはどう戦うか。出した答えは、いずれもチップの自社開発だった。

■ファーウェイ…米国の制裁で打撃

最も早く自社設計に乗り出したのはファーウェイだ。ファーウェイの集成電路(集積回路)設計センターが2004年に独立し、ハイシリコン社(海思半導体有限公司)となった。スマホ・タブレット向けチップセットやサーバープロセッサを開発し、業績は順調に伸び、2020年第1四半期には半導体売り上げ世界10位にランクインした。ファブレスでは、ブロードコム、クアルコム、NVIDIAに次ぐ4位だった。

ファーウェイ

しかし、生産を委託していたTSMCは2020年5月、米国側に立つことを明確にした。そのため、ハイエンドスマホ向けのKirinシリーズは生産工場を失う。微細化技術に開きのある国内のSMICでは代替できない。さらにGoogleシステムも搭載不能となり、世界一が視野に入っていたスマホ事業は大打撃を受けた。現在は米国に依存しない新しいサプライチェーン、新しいOS、新しいシステムを模索している。そしてサブブランドだった栄耀を切り離し、独立させた。こちらはファンの後押しを受け、国内シェアを大きく伸ばしている。

■OPPO…半導体設計子会社解散の衝撃

スマホ大手OPPOは5月中旬、半導体設計子会社「哲庫」を解散した。劉軍CEOは「残念ながら、全員を目標に連れていくことができなかった」と述べ、社員3300人が一夜にして職を失った。哲庫は2019年に設立され、半導体先端技術の探究のため3年間で500億元を投資し、2021年12月には初の自社開発チップ「MariSilicon X」をリリースしていた。

この解散は投資家に半導体は手っ取り早く利益の上がる産業ではないことを再認識させた。技術ハードルが高く、その規律を徹底しなければならない。大きな資金が必要で、回収にも時間がかかる。実際に中国半導体設計企業への投資額は第1四半期に44%も減少している。

OPPOはほぼモバイルデバイス専業で、単独で新システムを確立しようとするファーウェイのような体力はない。完全撤退の方が禍根を残さず、すっきりするのは確かだ。

OPPO

■シャオミ、vivo、栄耀…自社開発を継続

その他の企業はどうするのだろうか。

シャオミは2014年に聯芯と合弁会社「松果電子」を設立し、2017年に28nmの澎湃S1をリリースした。2021年3月には澎湃C1をリリース。同年12月には半導体研究開発のため15億元を投じ、新たに上海玄戒を設立した。また、本体内部にも100人の開発人員を抱えている。この9年間、自社開発の努力を続けてきた。しかし、目に見える成果は上がっていない。

シャオミ

シャオミのCEOは直近の決算会見で、自社チップ開発の決意は揺るがず、持久戦も辞さないと述べた。

vivoは、日本ではあまりなじみはないが、OPPOの弟分のような企業だ。そのvivoは2021年9月の製品発表会で、自社開発チップV1をリリースした。また直近では、新フラッグシップ機X90SにV2を搭載すると発表した。これらはISP(Image Signal Processing)画像処理半導体で、この分野に開発を絞る。控え目で小規模なvivoの開発陣ではそれ以上は無理との判断だろう。

栄耀は2023年3月、上位機種のMagic5に自社開発の無線周波数強化チップC1を搭載した。弱い信号でも通信を安定させられるという。独立840日後のことだ。栄耀のCEOは、3~5年の長期計画を立て、通信や画像撮影などさまざまな技術分野に応じてレイアウトしていくと述べた。業績は絶好調で、すでに8000人いるとされる研究開発人員を半導体開発に回すことは可能だと思われる。

vivo

■自社開発はギャンブル

充実した陣容で臨んでいたOPPOが自社開発を諦めた。そしていずれのメーカーもこれまでのところ自社開発チップは自社スマホに競争力を与えていない。

しかし、シャオミ、vivo、栄耀の人事担当者は哲庫の元社員らに採用情報を盛んに公開しているという。自社開発チップを諦めていないようだ。新製品発表会で自社開発チップ搭載と華々しくお披露目したいのだろう。

栄耀

結論として、スマホメーカーの半導体製造はギャンブルだろう。Vivoや栄耀のように補助機能に絞るのが良さそうだが、成果が上がらないまま長期投資に我慢できるどうか、見通しは厳しい。

■筆者プロフィール:高野悠介

1956年生まれ、早稲田大学教育学部卒。ユニー株(現パンパシフィック)青島事務所長、上海事務所長を歴任、中国貿易の経験は四半世紀以上。現在は中国人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中国最新のB2Cビジネスと中国人家族について、ディ-プな情報を提供。著書:2001年「繊維王国上海」東京図書出版会、2004年「新・繊維王国青島」東京図書出版会、2007年「中国の人々の中で」新風舎、2014年「中国の一族の中で」Amazon Kindle。

※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

この記事のコメントを見る

ピックアップ



   

we`re

RecordChina

お問い合わせ

Record China・記事へのご意見・お問い合わせはこちら

お問い合わせ

業務提携

Record Chinaへの業務提携に関するお問い合わせはこちら

業務提携