日本企業にとっての中国がもたらす「向心力」と「離心力」とは―北京のシンクタンクが分析

Record China    2023年3月27日(月) 11時0分

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日本企業では、今後の中国でのビジネスを有望視する「中国による向心力」が優勢だが、中国離れをもたらす「離心力」が増大する要因も存在するという。写真は中国経済の中心地の一つである上海市の外灘。

北京に本拠を置く独立系シンクタンクの北京安邦諮詢(ANBOUND)はこのほど、日本貿易振興機構JETRO)が2月に発表した、中国に進出した日本企業を対象とするアンケート調査の結果を読み解き、さらに独自の情報や分析を追加する文章を発表した。

JETROは、海外進出した日本企業を対象に、2022年の状況についてのアンケート調査を実施した。中国大陸部に進出した企業については、720社から有効回答を得た。22年に黒字を出したと回答した企業の割合は、21年の72.2%から7.3ポイント低下して64.9%だった。業績悪化の理由については「新型コロナウイルス感染症に起因する行動制限の影響」が最多で、5割を超えた。収支均衡と回答した企業は18.4%、赤字を出した企業は16.8%だった。景況感については、日本企業の9割以上が中国でのビジネスの見通しについて楽観的な見方を示した。

今後1-2年の中国での事業計画については、「事業を拡大する」と回答した企業が33.4%、「現状維持」が60.3%、「事業規模を縮小する」が4.3%で、「事業を他国に移転」は2%だった。事業の分野別では医療機器関連分野で事業拡大の意向が最も顕著で、中でも医療機器関連企業の66.7%が「事業拡大」を計画しており、「現状維持」は31.6%、「事業縮小」を計画している企業はわずか2.7%だった。

ANBOUNDはこれらの数字から、「日本企業と中国との関係は、協力や投資の面でなおも比較的堅調」と結論づけ、日本企業にとって、中国市場に対する「向心力」は今も存在すると論じた。

ただしANBOUNDは続けて、中国での事業縮小を計画している日本企業は4.3%と極めて少ないが、過去2年間の1%-2%と比べれば激増していると指摘。中国市場におけるさまざまな衝撃が、中国に進出した日本企業の自信をある程度減退させたとの見方を示した上で、新型コロナウイルス感染症や政治による問題により、在中日本企業にとってはサプライチェーンや産業チェーンの安全性や安定性をどう確保するかが、これまで以上に大きな関心事になっていると紹介した。

ANBOUNDは、業界関係者の話として、日系企業は仕入れ・生産・販売の3分野について、「仕入れの安全性」の確保に最も力を入れていると紹介。日本企業は特定の国と地域、サプライヤーに過度に依存しないよう、調達先の多様化を進めているという。

日本企業は販売については、中国市場でのシェアを維持しつつ、中国外の市場の開拓を進めるなどで、販売の方向性の転換を進めている。生産面では、一部の日本企業が中国工場の自動化率を高めるとともに、中国外に生産拠点を増設することを進めているという。

ANBOUNDは中国における日本企業の今後の方向性について、中国国内で完全に独立したクローズドループの生産チェーンを構築し、調達から生産、販売までを完全に現地化していくと予測。日本企業は同時に、中国国外でも独立した供給・生産・販売体制を構築することで、地政学的リスクを最小限に抑えつつ、中国市場と非中国市場の両方のニーズを満たすことを目指すとの考えを示した。このような方向で動いている代表的な日本企業としては、パナソニックやソニーがあるという。

ANBOUNDは以前から、日本企業だけでなく外資による対中投資全般で同様の動きが発生しており、この傾向は中国からの撤退ではないが、中国を世界市場から切り離す事実上の「中国デカップリング」の出現であり、中国政府はこの現象の「負の波及効果」に注目すべきと指摘した。

ANBOUNDによると、日本企業は海外投資の意思決定を検討する際に、投資対象国の発展性を重要視することが多いと指摘するアナリストもいたという。さらに、最近の調査では、日本企業には中国の発展の可能性は低下していると見なす傾向が存在するという。

アナリストは、中国の経済成長の低下だけでなく、中国と世界市場の疎外感が強まっていることも原因と考えているという。特に、中国が長期にわたって極めて厳しい感染症防対策を採用していたために、中国市場と外国企業との意思疎通が阻害され、結果として外国企業の本社が中国市場の現状と可能性に疑念を抱くようになったのは必然の結果との見方がある。日本企業の関係者からは、中国現地の経営スタッフが中国市場を有望視していても、本国の親会社に中国への投資拡大を説得することは困難との声も聞こえるという。

ANBOUNDは、中国としては、感染症対策の変更と経済が再起動しはじめたことを「貴重な機会」と認識し、日本企業の本社と中国法人の意思疎通が改めて円滑になり、日本企業が中国経済と市場の可能性と価値を再認識し、日本企業にとって中国市場による「向心力」が回復するように努める必要があると主張した。(翻訳・編集/如月隼人

※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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