<書評>危ういアベノミクス!?“失われた20年”の教訓から学べ―川北隆雄著「『失敗』の経済政策史」

八牧浩行    2014年7月15日(火) 6時10分

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日本経済は「失われた20年」と呼ばれる闇の時代が続いた。なぜ日本経済は失われたのか?本書はその要因を大胆に追求、安倍政権の経済政策アベノミクスの実態についても疑問を投げかけている。

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日本経済がエズラ・ヴォーゲル著書「ジャパン・アズ・ナンバーワン」によって持ち上げられたのが1979年。 同書は戦後の日本経済の高度経済成長の要因を分析し、日本的経営を高く評価した。ところが日本経済はその後、バブルの宴に酔いしれ、あっけなく崩壊。「失われた20年」と呼ばれる闇の時代が続いた。なぜ日本経済は失われたのか?

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本書は「大蔵省(現・財務省)、日銀などの政策当局の失政にあり、経済政策の失敗は国民生活や企業活動に混乱をもたらした」と指摘。「誤った政策を国民に犠牲を強いて裏目に出たケース」として、バブル膨張を助長した超低金利政策、その後の連続利上げや総量規制など極端なバブル潰し、97年の消費増税、平成金融恐慌などを列挙している。その大半が「当局と政治家の政策誤操作」「企業経営者らの暴走」によるものと断じ、多くの具体的な事例を挙げ、「経営破たんなどを処理するために血税を投入するなど一般国民に理不尽な負担を強いた」と舌鋒鋭く切り込んでいる。

さらに、2000年代の小泉純一郎首相・竹中平蔵金融大臣による新自由主義路線は多くの非正規労働者増大と格差拡大という社会経済体制の歪を生んだと批判する。小泉改革に群がった我田引水的な「政商」への追及も小気味いい。

アベノミクスの近未来分析を

いま、安倍晋三政権の経済政策アベノミクスは、円高是正と異次元の金融緩和でデフレ脱却への歩みを踏み出しように見えるが、本当に日本を「取り戻す」ことにつながるのか?

4月からの8%への消費増税などにより、新たに年間8兆円近い負担が家計にのしかかる。デパート、スーパー、家電量販店など消費市場は落ち込んでいる。東京証券取引所の株価も足踏み状態が続く。

 

長らく「貿易立国」「経常黒字大国」といわれた日本だが、2013年に3年連続の貿易収支赤字に陥った。このままでは2016年にも資金の出し入れ額を示す経常収支が年間ベースで赤字に転落する懸念が高まっている。日本からお金が流れ出す経常赤字が定着すると、日本の経済活動に必要な資金を国内で賄えない構造になりやすい。

特に日本は世界でも断トツの国債発行残高(年間GDPの約2倍の1000兆円強)を抱えているため、国債を国内で安定的に売却できない恐れも出てくる。そうなると、国債の価値が下がり、金利急騰の懸念も否定できない。円安も過度に進みやすくなり、輸入価格の上昇が生活をさらに圧迫することも考えられる。高齢化による国内貯蓄の取り崩しなど構造問題も深刻化してしまうだろう。

評者も著者と同じ時代に、経済記者として日銀、企業や、大蔵省をはじめとする経済官庁などを取材し、本書に共感するところが多い。かつて日本の各界が束の間の「宴(バブル)」に酔いしれていた時代、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の繁栄が長続きしないことについて強く警鐘を鳴らすべきだった、と自戒せざるを得ない。

現在、政府やメディアが「景気回復」「デフレ脱却」をアピールしているが、大多数の人々は実感できない。それどころか円安で物価が上がり生活を圧迫し始め、庶民の暮らしは悪化しているのが実情だ。アベノミクスの成否は中国、米国をはじめとする世界経済にも影響を与える。

著者は大手新聞社の経済デスク、編集委員、論説委員を歴任したベテランジャーナリスト。博覧強記の著者には、これらアベノミクスの「近未来」についても次作で大胆に分析してもらいたいものだ。(評・八牧浩行

<講談社現代新書(税別800円)>

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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