香港が世界中から観光客を誘致、無料航空券50万枚やショッピングクーポンを配布

野上和月    2023年2月28日(火) 6時40分

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新型コロナウイルスの流行で約3年間閉ざされた香港の観光業が復興ののろしを上げた。写真は香港の街中で流れる「ハロー香港」のプロモーションビデオ。

新型コロナウイルスの流行で約3年間閉ざされた香港の観光業が復興ののろしを上げた。「Hello Hong Kong(ハロー香港)」と銘打ち、50万枚の無料航空券や100万枚のショッピングクーポンを配るなど大規模キャンペーンを展開し、世界中から観光客を呼び込みコロナで大きく落ち込んだ観光業の立て直しを図る。

香港にとって観光業は主要産業の一つ。2018年には人口の約8.7倍に相当する過去最高の6514万人が来港した。翌19年は半年以上にわたって大規模反政府デモが起きたにもかかわらず、約5500万人が訪れた。しかし、20年春に香港でコロナの感染例が増え始めると、香港政府は03年にSARS(重症急性呼吸器症候群)の感染を拡大させた教訓から徹底的な感染対策を実施。入境も厳しく制限した。昨春から観光客の入境規制を段階的に緩和しているが、昨年の来港客数はわずか約60万5000人だった。

今年に入って中国本土との往来も全面的に再開し、残るはマスク着用義務だけとなり、いよいよ観光客の誘致に乗り出す。

今回無料配布する50万枚は、香港が地盤のキャセイパシフィック航空、香港航空、香港エクスプレス航空の航空券。香港空港管理局が20年に、コロナで苦境に陥った同3社を経済的に支援するために購入していたものだ。そのチケットを今度は、観光業復興の起爆剤としてさらに有効活用しようというわけだ。

尖沙咀の香港政府観光局のビジターセンター

チケットの配布期間は3月から6カ月間。3月からタイ、フィリピンなどの東南アジア向けに、4月から中国本土に、5月から日本や韓国などに向けて、抽選や1人分の料金で2人分の航空券を提供するなどの方法で順次配る。

この50万枚とは別に、香港と共に巨大経済圏「粤港澳大湾区」の開発を進めているマカオや中国広東省の9市の居住者と、香港市民向けにもアウトバウンド用チケット各8万枚計16万枚を配り、香港国際空港の利用率を高める一助とする。

香港では、コロナの間に、アジア初の視覚文化に特化した美術館「M+(エムプラス)」と、北京の故宮博物院の陶磁器や絵画などを展示した「香港故宮文化博物館」が誕生した。この2つがある西九龍文化地区は、香港の新たな観光の目玉だ。またコンサートやスポーツなど多数のイベント開催が計画されている。

すでに来港客には、飲食店、ホテル、小売店など約1万6000店で使える100香港ドル(約1700円)のクーポン100万枚を配り始めた。「ハロー香港」のプロモーションビデオも街のあちこちで流れている。

今回のキャンペーンは航空券の買い取り代金を含めて20億香港ドル(約340億円)規模に上るが、当局はこれによって150万人が来港し、75億香港ドル(約1300億円)の観光収益をもたらすと皮算用している。転んでもただでは起きないのが香港人だが、リスク(コロナ)をチャンスにして投資の3倍の効果を目指すしたたかな戦略だ。

しかも、狙いは経済効果だけではない。

幅広い国・地域の人たちに「百聞は一見に如かず」を体感してもらうことだ。

春節飾りが登場したビクトリア

19年の大規模反政府デモでは、警察とデモ隊の激しい衝突もあった。コロナで外部との往来が規制される中で「香港国家安全維持法」が施行されるなど、中国が香港への影響力を強める動きに対して欧米メディアを中心に批判的な報道が相次いだ。そうした情報を通して香港に対する印象が悪化し、現実と異なるのなら修復したいとの想いがある。

実際、昨年末に仕事の拠点が香港になった日本人男性(35)は「香港に来てみたら日本の報道でイメージしていた緊張感はなく、明るく便利で暮らしやすい」という。つい最近遊びにきた日本人の友人は周囲から「香港に行くなんて危なくないの?」と心配されたという。こうした話を聞くと、私でも実際の香港と、海外で思われている香港とはギャップがあると感じる。

また、来港客全体の8割弱を占める中国人客がコロナ後にどこまで戻ってくるかも不透明だ。反中感情をむき出しにした香港の大規模デモで、本土で香港に対する印象が悪化した。香港に行ったら暴行されそうで怖いと思っている中国人もいるそうだ。コロナ禍でネットショッピングが一段と普及し、わざわざ香港に来なくても欲しい物が手に入るようにもなった。こうしたことから、コロナ前のような中国人客の爆買いは起こらないとみる向きもある。

そんなわけで、まず香港に来てもらい、香港の実際を見て観光の土産話を持ち帰ってもらおうというわけだ。彼らの口コミ情報がさらに観光客の誘致につながる可能性があるからだ。

ただ香港は、中国の「ゼロコロナ政策」に足並みをそろえていたから、シンガポールやタイ、日本などに比べて観光客の受け入れ再開で大きく出遅れた。加えてアジアの近隣諸国・地域と比べて物価が高い。無料航空券やクーポンの配布は、観光業復活のペースを速める効果が期待されているが、来港客数がコロナ前の水準に戻るには1年半程度かかるという予想もある。

20年前にSARSで香港経済が大きく落ち込んだ際は、中国政府が中国人の個人旅行を解禁したことで、中国人観光客が急増し、香港経済は観光業を中心にV字回復した。今回の大がかりなしかけで、どこまで観光業が回復するか、注目したい。

■筆者プロフィール:野上和月

1995年から香港在住。日本で産業経済紙記者、香港で在港邦人向け出版社の副編集長を経て、金融機関に勤務。1987年に中国と香港を旅行し、西洋文化と中国文化が共存する香港の魅力に取りつかれ、中国返還を見たくて来港した。新聞や雑誌に香港に関するコラムを執筆。読売新聞の衛星版(アジア圏向け紙面)では約20年間、写真付きコラムを掲載した。2022年に電子書籍「香港街角ノート 日常から見つめた返還後25年の記録」(幻冬舎ルネッサンス刊)を出版。

ブログ:香港時間
インスタグラム:香港悠悠(ユーザー名)fudaole89

※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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