中国の飲食店業界で深刻な人手不足、各種要因あり解消の目算立たず

Record China    2023年1月31日(火) 12時30分

拡大

中国では今年の春節期、飲食店業界で深刻な人手不足が発生した。コロナ対策が緩和された特殊事情だけでなく、それ以外にも多くの要因があり、解消の目算は立っていないという。写真は四川省内の飲食店。

中国メディアの第一財経によると、中国の飲食店業界では春節(旧正月、2023年は1月22日)期の連休中に深刻な人手不足が発生した。23年春節期に特有の事情もあるが、それ以外にもさまざまな要因があり、問題の本質的解消の目算は立てられない状況という。

コロナ対策の緩和によって働き手の確保に“ダブルパンチ”

中国人は、春節の前夜に家族や一族が集まって会食することを、とりわけ重視する。かつては家族や一族の年長者の家などに集合して、皆で料理を作って楽しむことが多かったが、現在では都市部を中心に飲食店を利用するケースも大いに増えた。

23年の春節については、中国政府が22年11月から、新型コロナウイルス感染症の対策緩和を進めたために、飲食店の利用を望む人が増えた。ただし、人手の確保ができなかったために、予約の受付を抑えた店もある。高級飲食店チェーンを経営する俏江南の劉建忠総裁によると、22年の暮れから一部従業員が帰省しはじめた。しかし、春節が過ぎても戻ってこない従業員が多く、人手不足が深刻化した。

新型コロナウイルス感染症の発生以来、昨年までは当局側から、帰省はせずに現在の居住地で「年越し」をしようという働きかけがあった。そのため、多くの人が2年から3年の間、春節期の帰省ができないでいた。今年は規制が緩和されたために、多くの従業員が早めに休暇を取って帰省したために、飲食店業界の人手不足に拍車がかかったという。

特別ボーナスを出しても効果は限定的

海鮮料理店チェーンを展開する匯通四海の馮劉斌総裁補佐も人手不足に苦しんでいる。春節期に人手が不足するのはいつものことだが、これまでは臨時雇いの労働者でしのぐことができた。今年の場合には、臨時雇いの従業員を確保することも困難になった。そのため、通常の賃金以外に、「大紅包(ダーホンバオ=大ボーナス)」を設け、さらに勤務を輪番制にして、一定日数の休暇を取ることができるようにして、既存従業員による出勤の確保に努めた。

飲食店側は一般的にボーナスを支給することで人手を確保しようとしたが、効果は限定的だった。そのため、大人数の予約を受け入れられなかった飲食店も多かったという。

中規模の飲食店チェーン企業を経営する李梅氏によると、若者の多くは飲食店での接客の仕事を敬遠する。賃金は上昇し続けているが、全体的から見れば、収入を得られる職種でない。賃金の問題だけでなく、重労働の部類に属する職業であることも、敬遠される大きな理由だ。家庭の経済事情に少しでも余裕があれば、親は自分の子が飲食店で接客の仕事をすることを好まない。「接客業は高級な仕事ではない」という伝統的な概念も若者が集まらない一因という。

宅配便の配達員など新種の職業で人材需要が増えたのも、飲食店が人手不足になった大きな要因だ。一般的な飲食店の従業員の月収は4000-6000元(約7万7000-11万円)だが、大都市の場合、求人サイトに表示されている配達員の月収は7000-1万元(約13万-19万円)程度だ。

2、3カ月で辞める接客員も

今年の春節期には需要増と従業員の帰省という状況が重なったために、飲食店側の人手不足が深刻化したが、人手不足をもたらす長期的要因もある。

まず、従業員が定着しなくなりつつあることだ。2、3カ月しか働かないで退職する例も目立つという。料理人などの専門技能者を探すのは難しくなく、人手不足が目立つのは接客員という。李梅氏によると、人手の確保が難しくなったのは2年ほど前からで、従業員による紹介、親族を頼った募集、人材派遣会社の利用、SNSでの募集など、さまざまな手段を用いているが、それでも緊迫した状態という。

打開策を打ち出すも効果は限定的

もちろん、業界側は事態を打開しようと、さまざまな方法を試みている。例えばマクドナルドは「シルバー人材」の確保に乗り出した。対象は55-60歳で、週に4-5日の勤務、1日当たりの労働は4-8時間で、1カ月当たりの給与は1800-3500元(約3万4000-6万7000円)になる。

中国人が春節期に古里に帰るのは、故郷に残る両親のもとに兄弟姉妹が集合して一緒に年越しをするためだが、農村部出身者が都会に出て現金収入を得られる仕事をする場合には、もう一つの深刻な事情がある。多くの人が故郷にわが子を残しているので、年越しの際にはわが子に会いたいと切望するのだ。

そこで、鍋料理店チェーンの海底撈の上海長寿路店では、今年の年越しの際には、農村部出身の従業員のために、故郷から子どもを呼び寄せて春節を過ごせるように、宿泊のための部屋を提供した。それ以外にも、従業員のための福利厚生を充実させるケースがあるという。

また、都市部の市政府などが、地元企業の人材確保に乗り出すケースもある。浙江省台州市政府は、1月下旬に、雲南省、貴州省、四川省など7省21カ所に向けて人材募集チームを派遣した。

最近になり、飲食業界の人材問題の解消のために注目されているのが、デジタル化・スマート化により、これまでより少ない従業員で店舗運営を可能にする方法だ。しかし、飲食企業の多くは、関心はあるものの「様子見」の状態に留まっている。

ある外食企業の責任者は、「ファストフードや比較的単純な飲食ジャンルの場合、スマート化などの方式は人的資源のコストを比較的引き下げることができるが、ミドル・ハイエンドの飲食分野では、きめ細かいサービス自体が重要な商品力であるため、接客要員を機械で代替することはできない」と述べたという。(翻訳・編集/如月隼人

※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

この記事のコメントを見る

ピックアップ



   

we`re

RecordChina

お問い合わせ

Record China・記事へのご意見・お問い合わせはこちら

お問い合わせ

業務提携

Record Chinaへの業務提携に関するお問い合わせはこちら

業務提携