中国の“紅白”に日中隊発掘の「五星出東方利中国」錦が登場

小島康誉    2023年1月27日(金) 15時30分

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中国の春節を祝う中央テレビ(CCTV)恒例の年越し番組「春節聯歓晩会」が旧暦大晦日の21日から22日未明にかけ4時間半にわたり放映・配信された。写真はCCTV「2023年春節聯歓晩会」より。

中国の春節を祝う中央テレビ(CCTV)恒例の年越し番組「春節聯歓晩会」が旧暦大晦日の21日から22日未明にかけ4時間半にわたり放映・配信された。日中共同ニヤ遺跡学術調査隊が発掘した「五星出東方利中国」錦の舞踊劇「錦綉」も5分間登場した。

同番組は日本では「中国の紅白歌合戦」とも称され、歌・舞踊・雑技など内容豊富な名物番組。今年のテレビ放送の平均視聴率は20%余。中国国際電視台を通じて、日本やアメリカ・カナダ・フランス・イタリア・ロシア・トルコなど173カ国と地域の1000余の媒体で放送され、スマホ・パソコンなど含め延べ110億人次が見たとも報じられている。


筆者が新疆ウイグル自治区クチャ西方に所在し2014年には世界文化遺産となったキジル千仏洞の修復保存協力を開始したのは1986年。翌年には日中友好キジル千仏洞修復保存協力会を立ち上げ、89年までに多くの方々の浄財1億円余を新疆政府へ寄贈した。その縁で1988年から「日中共同ニヤ遺跡学術調査」(中国国家文物局批准・日本文科省助成)を開始した。西域南道の小都市ミンフゥンからタクラマカン沙漠へ中古トラックと四駆で北上。途中の小オアシスまで1日、さらに駱駝で3日を要して、遺跡中心の仏塔に到達した。

日中双方は調査を積上げ、1994年国家文物局発掘許可を取得、95年第7次調査で王族墓地を発掘し、棺に副葬されていた「五星出東方利中国」錦を発見した。五大精神「友好・共同・安全・高質・節約」のもと、双方隊員がリスペクトしあって奮闘した。ニヤ遺跡は『漢書』記載の西域36国「精絶国」。「五星出東方利中国」錦は約二千年前の西域(現在の新疆ウイグル自治区一帯)と中原王朝との文化・経済・政治などでの密接な関係を示す重要文物。

これまでに「1995年中国十大考古新発見」「20世紀中国考古大発見100」「出国(境)展覧禁止文物」「中国考古学百年百大発見」に選出された。またCCTVの大型番組「国家宝蔵」や新聞・ネットなどでも度々取り上げられた。昨年2月北京冬季オリパラに合わせて大型創作歌舞「五星出東方」が公演され多くの都市を巡回した。7月には習近平国家主席が新疆博物館で「五星出東方利中国」錦に見入り、貴重文化財の保護・活用が重要と指示した。

「日中共同ニヤ遺跡学術調査」では日本側の佛教大・龍谷大・京都造形芸術大・京都市埋蔵文化財研究所・関西大・奈良国立文化財研究所・京都大・大阪市文化財協会・六甲山麓遺跡調査会・国学院大・早稲田大・国立歴史民俗博物館・科学技術庁など、中国側の新疆政府・新疆文化庁・新疆文物考古研究所・新疆博物館・国家文物局・北京大・中国社会科学院・中国科学院・華東師範大などの研究者や測量・撮影技師が調査から報告書まで協力しあった。日本側隊長として改めて心からの感謝を表したい。「日中平和友好条約締結45周年」の今年、「五星錦」発掘28年の時を経て、日中共同発掘品がCCTV「春節聯歓晩会」に登場し「中国考古学で最も偉大な発見のひとつ」と報じられたことをポジティブ発信と喜びたい。

■筆者プロフィール:小島康誉


浄土宗僧侶・佛教大学内ニヤ遺跡学術研究機構代表・新疆ウイグル自治区政府文化顧問。1982年から新疆を150回以上訪問し、多民族諸氏と各種国際協力を実施中の日中理解実践家。
ブログ「国献男子ほんわか日記」
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※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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