あなたの知らない「干支」の世界、中国人専門家が起原や現状をひもとく

中国新聞社    2023年1月29日(日) 5時40分

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中国では紀元前から、それぞれの年を12種の動物と結びつける考え方があった。考古学の発掘調査でも、12種の動物の形をした陶器などが発見されることがある。

干支(えと)という言葉から、真っ先にネズミ、ウシ、トラなどの動物を思い出す人は多いだろう。ただし、干支とは本来、甲・乙・丙・丁…と続く10の「干(かん)」すなわち十干と、子・丑・寅・卯…の十二支を組み合わせて、日付や年を示すものだ。そして12種の「支」は、それぞれ動物と結びつけて理解されるようになった。北京民俗学会会長などを務める高巍氏はこのほど、中国メディアの中国新聞社の取材に応じて、「十二支」と動物の結びつきの起原や現状などを説明した。以下は高氏の言葉に若干の説明内容を追加するなどして再構成したものだ。

各国に伝わった十二支、その起源は「民間の知恵」そのものだった

中国で生まれた十二支は多くの国、特にアジア地域に伝わった。日本、韓国、モンゴル、ラオス、タイ、フィリピン、シンガポール、カザフスタンなどだ。ただし、十二支に結びつけられた動物の種類などは国によって異なる場合がある。例えば、ベトナムの十二支では「ウサギ」が「ネコ」に置き換えられた。アジアの多くの地域は、中国からもたらされた十二支を重宝し、さらに自らがより親しみやすいように、場合によっては「現地化」した。

中国の十二支に関連する記述は、中国最古の詩集である「詩経」中にすでに登場する。「詩経」は西周(紀元前1100年ごろ-同771年)の初期から春秋時代(紀元前771年-同453年)までの社会生活を反映している文献なので、人々の仕事や暮らしの克明な記録とも言える。十二支についても、例えば「小雅・吉日」という詩篇には「吉日庚午、既往我馬差」という部分がある。その前後の部分も含めれば、「吉日である庚午の日に、すでに馬を選んだと言った」ということだ。この部分では、「庚午」の「午」が、馬という動物に結びつけられている。つまり現在における我々の考え方と同じだ。

「子」とネズミを、「丑」とウシを、「寅」とトラを対応させるなど、十二支を動物に結びつける考えは、春秋時代に始まった。後漢の王充(27-97年)が著した「論衡」には、十二支それぞれを、現在と同じ動物に結びつけた最も早い記述がある。そのため、多くの研究者は、この時代には十二支を動物に結びつける方法が定型化していたと考えている。

古代中国人は、「干」と「支」の60通りの組み合わせで、どの年かを記述する方法を編み出した。60年といえば、当時はたいていの人の寿命より長かったので、例えばどの王のどの「干」「支」の年の出来事だったかを示しておけば、その年を特定することができる。

一方で、庶民にとってそこまで細かい区別は必要なかった。そこで十二支だけを用いて、さらに動物に結びつけることで覚えやすくした。中国人にとって年齢の比較はとても重要だが、自分の生まれた年に相当する動物を覚えておけば、他人との年齢の比較が容易だ。12年間で一巡するわけだが、年齢差が12歳もあれば、例えば同じ十二支の年の生まれでも、どちらが年長か間違えることはまずない。複雑な体系から必要最小限だけを取り出し、さらに記憶しやすくして実用性を向上させた。これこそ民間の知恵だ。

なぜ植物でなく動物なのか、人々が「動く存在」に見出したものとは

多くの人が、なぜ十二支を植物ではなく動物に結びつけたかを気にしている。これまでの研究によると、十二支の文化は、黄河から長江にかけての地域で発生した。馬、牛、羊、鶏、豚、犬などの動物は、古代中国人の日常生活と密接な関係があったことが、十二支と動物を結び付けた重要な原因であることは間違いない。

十二支を動物に結びつけたもう一つの理由は、動物崇拝に関係していると思われる。例えばトラは勇敢さや力の象徴と考えられた。人々はトラに、災難から守ってもらうことを期待した。文化とは、ある考え方が定着すれば他の考え方では代替できなくなることがある。人々がトラを勇敢さや力の象徴と見なすようになると、同じ猛獣でもオオカミでは代用できなくなった。従って、十二支にはトラが取り入れられ、オオカミが取り入れられることはなかった。

ネズミの場合には生殖能力が強く、活発に動き回る。人々はネズミにあやかり、一族繁栄を願ったと考えられる。竜の場合には、想像上の動物である点が他の動物とは違う。竜は高貴で大きな威力を持ち、水を支配すると考えられた。人々はそのため、竜の力を崇めて、さらには生活にも農作にも必要な、適切な降水をもたらしてくれることを願ったわけだ。

豊かな意味を持つ十二支文化は長い歴史の中で次第に発展していった。そこには中国人の動物に対する崇拝と愛着が込められており、さらには古代中国人が人と自然の関係の接点を求めてきたことも反映されている。

ウサギの年にはどのような特徴があるのか、人々は何を思うのか

2023年はウサギの年だ。十二支の動物の中で、ウサギはいくつかの鮮明な特徴を持っている。まず、強い攻撃性はなく、柔軟で聡明でおとなしい。人にとっては、家畜としてもペットとしても付き合いやすい動物だ。また、ネズミと同様に生殖能力が高くいので、「繁栄」への期待にも合致する。

古い時代には、ウサギは出産の象徴とも考えられていた。ウサギについて「月を見て子を生む」、「月を見て妊娠する」と記述する古い文献は多い。人々は満月の際に姿をくっきりと現す月の模様を見て、月にはウサギが住んでいるとも考えた。中国人は「円」という図形を、満ち足りた状態の象徴とみなした。その代表格が満月だ。人々はウサギや月を崇拝した。そして月のウサギは平安と健康を象徴していると考えた。

地域によって方法は異なるが、多くの地方では月祭りには泥人形であるウサギの神が登場する。北京、天津、山東省済南などでは、「兎児爺(長老ウサギ)」や「兎二爺(<二爺>は、一族の中で最長老に次ぐ身分の者)」、「兎子王(ウサギ王)」に対する民間信仰がある。

中国人はウサギを崇拝するが、一方ではとても世俗的にウサギを扱う。北京では、子どもがウサギの玩具で遊んだ。また、ウサギの泥人形や木彫り版画は、芸術品でもある。ウサギの年を迎えたことで、ウサギはインターネットの世界でも改めて「大人気者」になった。北京ではウサギ関連の民俗用品が、発展を象徴するものとみなされて、最大の売れ筋商品の一つになった。ウサギをめぐるこのような状況は、中華の伝統文化と北京の地域文化が結びついて形成された民俗現象だ。ウサギの年を迎えたことで、ウサギと人々とのつながりも、より密接になった。(構成 / 如月隼人

※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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