アリババ、海外通販でSHEINなどに押され苦戦、2023年は正念場へ

高野悠介    2023年1月6日(金) 23時30分

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中国のIT巨頭はさまざまな圧力にさらされ、成長力を失っている。アリババはその象徴だ。

中国新聞網によれば、中国民営企業は税収の59、6%、GDPの60%以上、技術的イノベーション成果の70%以上、都市労働者雇用の80%以上、企業数の90%以上を占め、その比重は上昇の一途という。しかし今の民営企業、特にIT巨頭はさまざまな圧力にさらされ、成長力を失っている。アリババはその象徴だ。ここでは海外戦略からアリババの2023年を展望してみよう。

■アリババ…東南アジアに巨額投資

アリババは2022年を通して人員整理を行い、2021年12月末の25万9316人から、2022年9月末には24万3903人へと約6%削減した。その効果もあり、2022年7~9月期のグループ四半期決算では、売り上げは前年同期比3%増の2071億7600万元、利益は同19%増の338億2000万元で、増収増益を確保した。

全体の65%を占める国内商業部門は、小売りと卸売りを合わせて前年比1%減、構成比7%の国際商業部門は前年比4%増だった。アリババは2022年、海外業務を最優先課題に挙げていたが、たった4%しか伸びていない。

国際商業部門にはB2Bの「阿里巴巴国際站」とB2Cの「全球即売通(AliExpress)」の2つの直営プラットフォームがある。さらに傘下には東南アジアの「Lazada」、トルコの「Trendyol」があり、11月にはスペインで「Miravia」を立ち上げた。

昨年、アリババはLazadaに16億ドルもの巨額投資を行った。LazadaとAliExpressが協力し、欧州市場の攻略を目指すという。

■新しいビジネスモデルに完敗…SHEINの躍進

しかしこれは、東南アジアでテンセント系の「Shopee」に遅れを取ったためのテコ入れだ。追い込まれていたのである。AliExpressは2010年の創設以来、200以上の国と地域に展開し、Amazon、eBay、Wishと並ぶ世界4大英語通販の1つとまでいわれた。しかし、このところ存在感は低下している。

中商情報網によれば、越境Eコマース企業数は2021年末で3万3900社もある。2017年は3071社、5年で10倍に拡大している。大半は中小零細企業だが、急成長企業もある。例えばSHEINだ。さらに拼多多や抖音(TikTok)の台頭もある。

SHEINの売り上げの伸びは爆発的で、2022年にはZALAやH&Mを凌ぎ、アパレル世界一になったとみられる。特徴は廉価とスピードだ。トレンド分析、デザイン、製造、出荷までを10~15日で行い、毎週4~5万の新規アイテム発売している。これが、インフレ下にある米国の18~35歳の女性に熱烈歓迎された。サプライチェーンは空洞化しつつあった広東省の中小縫製工場群を再編しチェーン化した。2022年下半期には東京・原宿にショールームを開設し、着用済み商品の再販プラットフォームの開設、ESG対応強化など、先進的な取り組みを次々に進めた。

衣料品はアリババにとっても主力商品だ。そのため業界のイノベーションを志向、2020年に「犀牛智造」というプロジェクトを立ち上げた。AIでアパレル企業と工場をコントロールし、リードタイムを短縮して在庫リスクをゼロにする。必要数のみ超クイック生産するシステムだ。3年で200を超えるブランドにサービスを提供した。野心的な試みだが、先進スマート工場というこだわりがかえって大きな成果につながっていないようだ。一方、SHEINは自社リスクによる従来型生産体制を極限まで精緻化し、新しいビジネスモデルを創出した。そしてPatpatなどの追従者を輩出する。

■拼多多、抖音…米国市場へチャレンジ

拼多多は2022年9月、米国でTemu(Team Up,Price Down)という通販アプリを展開。広告を大量に投入し、ブラックフライデーでは70~90%の割引率をアピールした。SNSを巧みに利用し、得意の友達紹介プログラムにも注力している。また、SHEIN本社近くに拠点を構え、サプライヤーや従業員を引き抜いた。強引にSHEINの手法をコピーしつつ、独自性を加え、米国市場に浸透しつつある。

抖音のTikTok Shopは得意のライブコマースで切り込んだ。重点ライブパフォーマンス、ライブナンバーワン大会、ショートビデオチャレンジ祭りなどと銘打った催事を連発した。これには米国サプライヤーの開拓目的もあるという。SHEINやTemuとは異なり、米国に依拠したサプライチェーン作りを目指すようだ。また、親会社のバイトダンス米国法人は、ユーザーが音声だけで買物できる新技術の投入を計画中だ。実現すれば、斬新なビジネスモデルとなりそうだ。今のところTemuほどの盛り上がりはないが、ライブパフォーマンスの回数は着実に増えている。

アリババは、それほど米国市場に注力してこなかった。その理由は、成熟市場であることと巨人Amazonの存在だ。その隙をSHEIN、拼多多、抖音などが突いている。イノベーターとしては完敗である。

■内部改革で新しい成長を模索

新任の浙江省党委員会書記が12月中旬、アリババを視察した。そのサインは何か、憶測を呼んでいる。某メディアは、国有企業と民営企業を平等に扱い、その発展と成長を支持し、奨励するため(のサイン)と紹介したが、国有企業並みの管理が必要という意味にも取れる。やはりアリババにとって巨額罰金(2021年4月、182億元)以来の重しは取れていないようだ。

コロナ禍以前には死角がないように見えたアリババだが、政府の圧力や新勢力の台頭などによる頭打ち感は深刻だ。そのためアリババは12月末、人事機構調整を発表した。重鎮幹部の退任とCEO張勇氏の阿里雲(アリババクラウド)のCEO兼務がメインだ。創業者の馬雲氏のシナリオライターだった張勇氏だが、さらに自ら前面に出て、新しい成長軌道を描くのか。アリババは正念場を迎えている。

■筆者プロフィール:高野悠介

1956年生まれ、早稲田大学教育学部卒。ユニー株(現パンパシフィック)青島事務所長、上海事務所長を歴任、中国貿易の経験は四半世紀以上。現在は中国人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中国最新のB2Cビジネスと中国人家族について、ディ-プな情報を提供。著書:2001年「繊維王国上海」東京図書出版会、2004年「新・繊維王国青島」東京図書出版会、2007年「中国の人々の中で」新風舎、2014年「中国の一族の中で」Amazon Kindle。

※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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