「ベトナム版テスラ」が欧米市場にも進出、ビンファストが創業5年で急成長

Record China    2022年12月13日(火) 5時0分

拡大

「ベトナム版テスラ」などとも呼ばれるビンファストが急成長している。創業は2017年で、米国や欧州の市場への進出も決めた。写真はビンファストと中国の大手車載電池メーカーの寧徳時代の提携式の様子。

「ベトナム版テスラ」などとも呼ばれるビンファスト(VinFast)が急成長している。同社の創業は2017年で、ベトナム北部のハイフォン市に本社を置く。同社は米国や欧州の市場にも進出することを決めた。

ビンファストは、コングロマリットのビングループ(Vingroup)の傘下企業だ。グループを率いるファム・ニャット・ブオン氏は1968年8月5日の生まれで、現在54歳。自国の大学で鉱物学を学び、研究のためにモスクワ地質探査研究所に派遣された経歴を持つ。1990年代にはウクライナで即席めん関連のビジネスを手掛けて成功した。さらにウクライナにある企業を売却して資金を得ると、帰国してベトナム南部のニンチャンで高級リゾートを開業した。

ファム氏は事業をさらに拡大した。ビングループは不動産、観光、ホテル、小売、教育、家電などの分野をカバーし、3社の上場会社を持つベトナム最大の企業群に成長した。2021年の売上高はベトナムのGDPの約1.5%を占めており、ビングループはベトナムにおいて、韓国におけるサムスンや、インドにおけるタタ・グループに相当する存在と見なされている。

ファム氏が自動車製造業に乗り出した17年当時のベトナムは、1人当たりGDPが3000ドルに迫っており、一般家庭に自動車が浸透する直前の状態だった。しかし市場はトヨタやマツダ、韓国の起亜(キア)自動車など外資系ブランドにほぼ独占されていた。ベトナムの自動車工業は基盤が薄いだけでなく空洞化問題が深刻で、部品の大部分を輸入に頼っていた。

自動車製造業に乗り出すことを決意したファム氏の強みは、極めて豊富な資金力だった。設立当初のビンファストは、ほとんど注目されなかったが、ファム氏はゼネラル・モーターズ(GM)元幹部のジム・デルーカ氏を高額の報酬で招き、ビンファストの舵取りを託した。ビンファストはその後、ドイツのボッシュやシーメンス、カナダのマグナ、イタリアのピニンファリーナなどの技術力を持つ企業と提携を結ぶことができた。18年にはハノイにあったGMの組み立て工場を買い取り、オペルの車体製造技術を手に入れた。さらに19年6月にはハイフォン市内の工業パークで自動車組み立て工場の操業が始まった。同工場の敷地面積は50万平方メートルを超え、着工から試験操業開始までわずか21カ月しかかからなかった。そしてビンファストは中型SUVの「LUXSA2.0」と3ボックスセダンの「LUXA2.0」を発売し、ベトナム初の本格的な大規模量産能力を持つ民族系自動車ブランドになった。

ファム氏は当初から、ビンファストを設立してから3年間を「自動車事業の基礎づくりの段階」と位置づけ、従来型の技術を利用して、安価で良質なガソリン車を生産し、20年から電動自動車(EV)製造へ転換を加速することを念頭に置いていたとされる。

そして、21年末にはベトナム初の国産EV「VF e34」が発売された。コンパクトSUVの位置づけであり、最長航続距離は約300キロだ。同年には、世界市場向けにハイエンドでスマート化された電動SUV「VF8」と「VF9」も発売した。

ビンファストは22年7月、既存のガソリン車が完売したことをきっかけに、当面はEVのみを製造販売すると発表した。

ビンファストは今のところ中国市場に進出していないが「中国の友人」は少なくない。22年10月には世界最大の電気自動車用電池メーカー寧徳時代と新能源科技(CATL)との提携を決めた。双方は電池及び電池の車載方式に関連する分野の事業で協力することになった。

ビンファストはさらに11月中旬に、中国の大手リチウム電池メーカーの国軒高科と提携した電池製造工場の建設を始めた。投資総額は6兆3300億ドン(約367億円)で、23年末の操業開始を見込む。ビンファストにとって、自社が必要とする電池を入手する体制が整ったという。

ファム氏は欧米先進国の市場を強く意識しており、「ベトナムの電気自動車はテスラと同様の豊富な機能を備えることになる。ビンファストは26年までに、米国で数十万台の電気自動車を販売する」と述べたことがある。

ビンファストはさらに、フランス、ドイツ、オランダに統括会社を設置して欧州でも事業を展開すると発表した。同社はまた、米国レンタカー大手のオートノミーから、VF8とVF9を2500台以上納車する過去最大規模のEV受注を獲得した。

同社が抱える最大の問題は、部品の多くを海外から輸入していることとされる。部品の自社製造の体制は不十分であり、製造業の体系化がまだ未成熟なベトナムでは、部品を提供できる企業も少ない。ビンファストはベトナム初の本格的民族系自動車メーカー、そしてベトナム初の本格的EVメーカーだが、業界関係者は自国内におけるサプライチェーンはまだ構築されていないと見なしている。(翻訳・編集/如月隼人

※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

この記事のコメントを見る

ピックアップ



   

we`re

RecordChina

お問い合わせ

Record China・記事へのご意見・お問い合わせはこちら

お問い合わせ

業務提携

Record Chinaへの業務提携に関するお問い合わせはこちら

業務提携