苦境にあえぐ日本経済、政府の対応と財界の見方とは―香港誌が紹介

亜洲週刊    2022年11月6日(日) 14時30分

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香港誌「亜洲週刊」はこのほど、日本経済が置かれた厳しい苦境と政財界の対応や反応を紹介する、毛峰東京支局長の署名入り記事を発表した。写真は首相官邸のツイッター公式アカウントより。

香港誌「亜洲週刊」はこのほど、日本経済が置かれた厳しい苦境と政財界の対応や反応を紹介する、毛峰東京支局長の署名入り記事を発表した。以下は、同記事の抄訳だ。

世界第3位の経済大国である日本の国家経済と国民の生活はどこに向かうのか。円は大幅に下落し、物価は全面的に上昇しつつある。貿易赤字も続いている。この悪循環は岸田内閣が推進してきた新しい資本主義の好循環に逆行するものだ。

政府は緊急総合経済対策を打ち出し、新たに39兆円の財政支出を行い、経済対策の事業規模を72兆円に拡大することで、国民生活の困窮を緩和し、経済成長率を牽引(けんいん)しようとしている。日本経団連はシンポジウムを開催し、日本経済が真に活力を取り戻し、力強くて持続的な成長を遂げるための「病状診察」と助言を行った。

1ドル=115円程度で推移した日本円の対ドル為替レートは2月以来、予想をはるかに上回る速度で下落し続けた。10月21日には1ドル=151.94円という、32年ぶりの円安を記録した。悪性の円安や投機的な動きを阻止するため、政府と日本銀行は改めて「伝家の宝刀」を抜いて為替介入を行い、一時は4円の円高を実現させた。そして日本政府と中央銀行は10月だけで約6兆4000億円を投じて為替市場に介入したが、11月1日時点で1ドル=約148円安と、依然として円安が続いている。

大幅な円安とロシアウクライナの戦争でエネルギーや食品などの原材料が世界的に上昇したことから、今年の日本の輸出入貿易は7カ月連続の赤字で、1-9月の累計貿易赤字は14兆3000億円に達した。これにより、日本では国民生活などに関わる商品の多くが値上げを余儀なくされ、電気やガスの料金も高騰し、国民は悲鳴を上げている。最新の日本のインフレ率は2.9%に達し、消費者物価指数は40年ぶりの高さを記録した。

岸田政権は新たな総合経済対策を急遽(きゅうきょ)打ち出し、標準的な世帯の場合、総額4万5000円の支援を決めた。また、来年度までに消費者物価指数を1.2%にまで引き下げることを目標にしている。

日本の主要な経済団体である経団連の現在の会長は住友化学グループの十倉雅和会長だ。十倉会長は10月27日に開催された旧経団連と旧日本経営者団体連盟の合併20周年を記念するシンポジウムで、持続可能な資本主義の経済発展方針の実施をさらに推進し、イノベーションを軸とした成長戦略を推進するとともに、二つの主要策に積極的に取り組んでいきたいと述べた。一つは、経団連が新たに制定した国家経済安全保障推進法を積極的に提案して実現させ、自由で開かれた国際経済秩序を再構築することでであり、さらにすべての世代のために社会保障制度を再構築することだ。十倉会長はさらに、民間外交を促進することで、開かれた未来を示すことも提案した。

日本経団連副会長を務める三井物産の安永竜夫会長は、経済のグローバル化が進行する中で日本経済を復活させるには、経済活動の発想の転換が必要で、成長に適応できなかった経済構造は刷新せねばならず、デジタル技術の総合活用であるデジタルトランスフォーメーション(DX)を高度に推進し、環境や先端技術分野、健康保健などの新しい分野に焦点を当て、臨機応変な機能を強化し、多様なニーズに応え、経営管理の効率を高め、国際的な競争力を高めなければならないと主張した。また、総合商社は特に、官民連携や異業種協力の促進などでフラッグシップの役割を果たすことができると主張した。

同じく経団連副会長を務める三菱UFJ銀行の平野信行特別顧問は、日本が直面する主要な問題は低迷する潜在成長率、少子高齢化、デジタル化(DX)活用の遅れ、財政状況の悪化、国際秩序の不安定さなどと分析。このような状況で成長と公平な発展を推進するには、大胆な改革と革新が必要と主張した。

平野氏は、世界の銀行トップランキングでは、2007年7月には11位だった三菱UFJは、21年には19位に転落したと紹介。最新のランキングでは世界上位10行のうち、米国の銀行は4社、中国は4社、カナダは2社という。平野氏はさらに、邦銀の金融システムはデジタル化や電子商取引などさまざまなサービスについて、はるかに後手に回っていると指摘した。

平野氏は、日本の経済産業の発展について、持続可能な発展性と公平性のあるイノベーションの融合を構築する必要があり、DXと、顧客体験を向上させるCXを中心とした新しい経済発展を積極的に推進するためには、サプライチェーンの調整と統合、国内投資の拡大が必要と述べた。また、政策関連では、政治外交と経団連の経済外交を区別して、日本の海外パートナーを拡大し、国内投資の促進と海外協力の拡大という両輪で、持続可能な発展を推進すべきとの考えを示した。

経団連審議会副議長を務める三菱重工業グループの宮永俊一会長は、日本はまず国内経済の自立性を確保し、経済安全保障と防衛力の保障を強化していく必要があるとの考えを示した。そのことで自由貿易の維持や輸出競争力の強化、友好国との経済協力の深化を推進すべきとの主張だ。

宮永会長は製造業について、大企業と中小企業が緊密に連携した産業チェーンを強化し、高付加価値の輸出製品を生み出し、製造強国かつ輸出強国としての日本の活力を回復すべきと主張。宮永会長は、日本経済の基盤の底力は強い製造業にあるとして、日本の強みを生かし、掘り起こし、時代に合わせた産業イノベーションを推進することで、ロボット人工知能などの先端技術産業分野における日本の国際競争力を大幅に強化して、付加価値のより高い製品を作り出せるようにして新たな生産力を形成すれば、輸出強国としての日本の名声を再確立することができる可能性が開けると主張した。(翻訳・編集/如月隼人

※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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