「紙離れ」が加速する日本、大手書店が見いだした意外な活路とは―香港メディアが注目

亜洲週刊    2022年10月30日(日) 13時0分

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電子書籍の利用が増えたことで紙版の書籍や雑誌を扱う実店舗は苦境にある。そんな中でで、大手書店の紀伊国屋書店は、意外な活路を見いだし努力しているという。写真は紀伊国屋書店の新宿本店。

香港誌の亜洲週刊はこのほど、日本では紙版の書籍や雑誌の売り上げが落ち込んでおり、書店の数が急減していると紹介する、毛峰東京支局長の署名入り記事を発表した。ただし、大手書店の紀伊国屋書店は、新たな活路を見いだしているという。

記事はまず、東京の新宿で最大規模の紀伊国屋書店でも、店内では往時のにぎわいはあまり見られず、書店街として知られる神田神保町でも、昔から知られているほのぼのとした小さな書店が、ひっそりと店を畳んでいたりする。かつては電車の中で本を読んだり新聞を読む人が多かったが、今ではスマートフォン一色だ。

紀伊国屋書店の新宿本店

日本出版インフラセンター(JPO)の調べによれば2012年には日本全国に1万6722軒あった書店数は、2022年1月には1万1952軒と、3割ほども減少した。日本書店商業連合会の石井和之事務局長は、日本では今後も書店実店舗は減少し続けると分析する。

一方で、統計がある2012年以来、電子出版の市場規模は拡大し続けてきた。過去2年は新型コロナウイルス感染症への対策のため、在宅待機やテレワークにより「在宅族」が増加したこともあり、スマートフォンやタブレット端末を利用したインターネット閲覧や読書が新たな文化習慣となった。

2021年の日本における電子出版の売上高は、前年比18.6%増の4662億円だった。2012年比では約4倍だ。2021年には出版市場全体における電子出版物のシェアが27.8%に達した。特に勢いがあるのは漫画類だ。日本は漫画やアニメ文化が深く根付いた国だが、今や読者がページを繰るのではなく、画面をスクロールして作品の展開を追う姿が一般化した。

最初から電子作品として発表される新作の存在だけでなく、デジタル化される旧作が増えていることも、「漫画文化の電子化」を後押ししている。日本の大手出版社である講談社では、電子書籍の売上高や著作権収入が、初めて紙の雑誌や書籍による収入を上回った。

雑誌販売で、コミック誌はなんとか「陣地を死守」の状態だが、その他の週刊誌や月刊誌の発行部数は15年連続で減少し、休刊数が創刊数を上回る状態だ。ネットメディアの方が、圧倒的な速さで最新情報を伝えることが可能な点も、紙媒体にとっては不利に働いている。2021年における日本における週刊誌の売上高は前年比88億円減の825億円にとどまった。

このような紙媒体の衰退が、実店舗書店の存続を困難にしている一因になっている。人口が少ない地域の書店は、存続がなおさら困難だ。

紀伊国屋書店の新宿本店

しかし大手の紀伊国屋書店は、強大な総合競争力と豊富な経営管理力を動員して、「書店が空白状態」となった地域の「死角」を埋めると同時に、海外市場の開拓を積極的に進めている。2027年の会社創立100周年には日本国内と海外の書店店舗数をそれぞれ100店舗にまで増やすことが目標だ。

紀伊国屋書店は1969年に米国サンフランシスコに初の海外店舗をオープンしたのを皮切りに、米国やアジア圏を中心に海外展開を進めてきた。紀伊国屋書店は現在、シンガポールやアラブ首長国連邦(UAE)のドバイなど世界各国に42店舗を展開している。現地の外資規制などがなければ、基本的に直営方式で書店を運営するビジネスモデルだ。

シンガポールの紀伊国屋書店

しかし5年後の2027年にまで海外での店舗を2倍以上にするという経営目標の達成には、依然として課題が残る。森啓次郎同社副社長は「海外からの提携の商談が盛り上がっている。出店要請を踏まえて、相互に妥当な提携ができる条件を模索していきたい」と述べた。日本国内では書店ビジネスの成長力が失われてしまった。海外事業の成否が紀伊国屋書店の今後を左右しそうだ。(翻訳・編集/如月隼人

※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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