【特別寄稿】中華ファンタジー時代劇ブームを巻き起こした「陳情令」、日本でも社会現象に

Record China    2022年10月19日(水) 21時30分

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「陳情令」配信3周年で再生回数は100億回を突破した。画像はドラマ『陳情令』公式twitter(@TheUntamedJP)より。

9月2日の金曜夕方、東京国際フォーラムAホールの前で多くの人がうきうきしながら入場を待っていた。午後7時から中国ブロマンスドラマ「陳情令」のオーケストラコンサートのアンコール公演が始まるからだ。

中国ドラマ1作のためだけにオーケストラコンサートを開催するのは、日本ではおそらく前例がないだろう。「陳情令」の大ヒットとともに、去年9月の京都公演からスタートし、11月の東京渋谷オーチャードホール(2日連続)に引き続き、今回は4回目のオーケストラコンサートだ。ツイッターでハッシュタグ「#オケそし」(オーケストラの「オケ」と陳情令の原作小説「魔道祖師」の「そし」を合わせた造語)が生まれるほど、ファンにとっては貴重な陳情令祭りだ。

京都公演と東京文化村公演の際、チケットの先行抽選販売から倍率が高く、見切れ席まで売り切れの状態で、多くのファンが購入できずに落胆した。京都公演は配信もあり、オーチャードホール公演後コンサートのDVDを販売するようになったにもかかわらず、現場で生演奏を見たいというファンの声が多く、4回目のアンコール公演につながった。

「陳情令オーケストラコンサート」の東京公演パンフレット

当日、「オケそし」のために用意した特別な服を着たり、「陳情令」関連グッズを持って会場に来た人が多く見られ、公演前後に陳情令とオケそしグッズの展示台の前に大行列ができた。筆者は2回目の鑑賞だったが、迫力のあるオープニング曲が大きいスクリーンの映像とともに始まると、思わず鳥肌が立った。音楽は映像の動きに合わせたり、登場人物の切ない運命とリンクしたりして、作品中の五大世家の家紋を壁に光で交代に映している。「陳情令」をこよなく愛する観客は作品の世界観にどっぷり浸り、愛のあふれた音楽と光の競演に魅了され、泣き続けていた。公演が終わった後も劇場周辺にとどまり、友人やネットで知り合った人としゃべり、美しい夢の余韻を味わうかのようになかなか去ろうとしない。

「陳情令オーケストラコンサート」東京公演(ツイッターの公式アカウントより)

ネット小説「魔道祖師」の実写版ドラマ「陳情令」は2019年6月にネットで配信が始まるとすぐに大ヒットし、中国だけでなく、アジア諸国から欧米まで、世界を席巻した。再生回数はすでに100億回を超え、3年たった今でもその人気は衰えていない。中国発のブロマンス・ファンタジー時代劇の代表作として数々の記録を作り出している。最大のブログサイトTumblrの2020年世界ドラマランキング「Top Love Action TV」で9位となり(2019年36位、2021年14位)、中国ドラマ初のTOP10入りを果たした。英語圏最大の二次創作作品投稿サイトAO3(Archive of Our Own)の「Ship Stats 2021」ランキングでは「Lan Zhan/Wei Ying」(魔道祖師・陳情令の主人公)が3位に入り、中国発キャラクターの最高位となった。

原作小説の作者「墨香銅臭」(MXTX)が書いた3つの作品「人渣反派自救系統」「魔道祖師」「天官賜福」はすでに十数カ国語に翻訳され、2021年12月に北米で発行された三部作の各1巻目は全てニューヨーク・タイムズの「Paperback Trade Fiction」ランキングのトップ15位に入った。そして2022年8月までに発行された英語版3作品全7冊がニューヨーク・タイムズのベストセラーランキングトップ15位入りした。墨香銅臭は全作品がランクインした史上初の中国人作家と言われる。

小説「魔道祖師」の日本語翻訳版が出る前から、日本各地の書店では海外から中国語版、タイ語版、ベトナム語版、韓国語版、ドイツ語版などを仕入れて販売していた。日本語版を待てないファンのなかには、翻訳アプリを使って海外版を読んだり、原作を読むために中国語を覚え始める人も現れた。「魔道祖師」の中国語をネットでファンに向けて教える有志もおり、道教文化を背景にした小説の世界観と物語の設定などを解説するサイトやチャンネルも多数でき、「魔道祖師用語集Wiki」「ピクシブ百科事典 魔道祖師」などのネット辞書まで作られている。

原作小説の日本語版第1巻の発売前に予約が殺到し、発売前に重版が決定した異例のケースとなった。発売当日に各地で売り切れが続出し、書店は再入荷までの間に慌てて他の外国語版を補充して購買者のニーズに応えている。陳情令ブームを受け、中華BL系ファンタジー小説の販売が史上初の大繁盛となっている。一部の出版社はこのジャンルの小説の翻訳が間に合わないため、ツイッターで翻訳できる人材を募集していた。

現在も、日本語版だけでなく、さまざまな言語のMXTX作品が売れている。Yahoo!の「文芸書籍全般」ランキング(2022年9月)では「魔道祖師」台湾版が2位となっている。中国発コンテンツの中で最も根強い人気の「三国志」でもここまで愛されたことは恐らくないだろう。

「陳情令」の日本上陸(最初は字幕版のみ)からほぼ1年後、2021年7月にテレビ朝日で字幕版1~3話が地上波初放送された。6月27日に「本国での配信開始から2年、総視聴回数95億回を突破 メガヒットファンタジー時代劇『#陳情令』全編日本語吹替版制作決定!」という公式発表が出ると、瞬く間にトレンド入りし、ファンの間で再び大盛り上がりとなった。

全50話もあるドラマの日本語吹き替え版を作るのはまれなケースだ。木村良平、立花慎之介、緑川光、早見沙織、森川智之、石田彰、花江夏樹など豪華な声優陣に驚嘆する声が上がり、ファンは制作側が全力投球する勢いを絶賛した。さすがに尺が長いドラマのため吹き替え作業には時間がかかり、待望の日本語版は2022年4月になってようやくWOWOWで放送がスタートした。毎週水曜日の夜、放送時間帯になると、ハッシュタグ「#陳情令しんどい」がツイッターでトレンド入りし、放送後には「涙腺崩壊」「地獄回だ」など大量の書き込みが見られた。

ドラマだけではなく、「魔道祖師」のアニメとラジオドラマも日本上陸し、アニメ好きや声優好きなど新たなファンをとりこにしている。円盤や周辺グッズの売り上げも好調で、日本語吹き替え版Blu-ray・DVDはYahoo!の「諸外国のコメディTVドラマ」ランキング1位(2022年9月)、Amazonの「TV DRAMAS」ベストセラーランキングで全体では11位、中国ドラマでは1位となった。日本語字幕版Blu-ray・DVDの発売1年後に販売されたことを考えると、驚異の売れ筋としか言えない。また、キャラクターの関連グッズやコスプレ衣装などを購入したい人も多く、最初はほとんどネットショップや個人を通して中国から買っていたが、Amazonで「陳情令」周辺グッズの公式ショップが出店されたため、ファンにとっては随分便利になった。

「陳情令」は誕生3年で視聴回数がすでに100億回を超え、まだまだ伸びている。中国ブロマンス時代劇のナンバーワンの座は今でも不動だ。2022年9月21日はMXTXの最初の小説「人渣反派自救系統」(略称:サハン)の主人公「沈清秋」の誕生日だ。この日にサハンのアニメ版の日本上陸が決定したと公式発表された。日本語タイトルは「クズ悪役の自己救済システム」で、MXTXファンの楽しみはまだまだ続きそうだ。

■筆者プロフィール:杜新

文部科学省の交換留学生として中国の北京大学から来日、慶應義塾大学で留学、修士課程と博士課程修了。研究分野は日本の伝統文化と現代社会、青年社会学(若い世代の生活観・職業観)、社会意識の国際比較研究。

※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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