トランプ氏の影響力はどれだけか?=米中間選挙もう一つの注目点―下院共和党優勢、上院は接戦か

山崎真二    2022年10月15日(土) 5時20分

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11月8日の米中間選挙はバイデン大統領の民主党と野党共和党のどちらが勝つかが最大の焦点だが、もう一つの注目点はトランプ前大統領派の議員らの勝負の行方だ。写真は米国議会議事堂。

11月8日の米中間選挙はバイデン大統領の民主党と野党共和党のどちらが勝つかが最大の焦点だが、もう一つの注目点はトランプ前大統領派の議員らの勝負の行方だ。

◆人工妊娠中絶と高インフレが影響

米政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティクス」が今月11日公表したところによると、中間選挙をめぐる両党の支持率は共和党が46.0%、民主党45.3%とほぼ拮抗している。各種世論調査では下院は共和党が優勢、上院は接戦との予想が多い。

連邦最高裁が先に人工妊娠中絶の憲法上の権利を否定する判断を下したことが女性やリベラル派の猛反発を招き、中絶の権利を擁護する民主党にとって追い風になる一方、歴史的な高インフレはバイデン大統領の経済対策を攻撃する共和党を優位に立たせる要因になっている。周知の通り、中間選挙は現政権に対する「信任投票」という要素が強く、これまでも与党が大幅に議席を失うケースが多い。民主党が敗北した場合のシナリオも米政界ではすでに織り込み済みのようだ。

◆トランプ派候補が本選で勝つかは不透明

民主、共和党の獲得議席数や知事選の結果もさることながら、トランプ前大統領派の動向に一層注目が集まっている。“トランプ党”の候補、あるいは同氏が推薦する人物が上下両院選でどれだけ勝つかによって2024年の大統領選に向けたシナリオが大きく変わる可能性があるからだ。中間選挙予備選を振り返ると、トランプ派に勢いがあることが分かる。トランプ氏の推薦を受けた候補が出馬した26州の共和党上下両院予備選では21州で推薦候補が当選した。24州で行われた州知事や司法長官など地方自治体の共和党予備選でもトランプ推薦候補が多数当選している。

象徴的だったのは、トランプ氏の弾劾決議に賛成した共和党の下院議員の多くが、トランプ派に敗れるなどして中間選挙の本選に進めなかったことだ。「予備選の結果を見ると、共和党内でのトランプ氏の影響力が相変わらず強いのは疑いない」(米FOXテレビ)との声は多い。8月に米連邦捜査局(FBI)がトランプ氏のフロリダ州の邸宅を機密文書の不法持ち出し容疑で家宅捜索したことが報じられ、トランプ氏に大打撃かと思われた。しかし、逆に共和党内の結束が強まり、党内でトランプ支持が拡大したとの見方もある。

だが、その一方、中間選挙の本選となると、トランプ派の共和党候補が民主党候補に勝てるとは限らないとの意見も少なくない。「トランプ派候補の過激な主張や差別的発言は予備選では彼らに有利に働いたが、本選では無党派層に嫌われ民主党候補に負けるだろう」(米CNNのコメンテーター)というのがその理由だ。

◆高まるか、フロリダ州知事の人気

もし、トランプ派の候補者が相次いで敗北するようになれば、共和党内でトランプ氏の求心力がしぼむ可能性が十分ある。そうなると、党内ではポスト・トランプの政治家として有望視されているフロリダ州のデサンティス知事の人気が一気に高まるかもしれない。デサンティス氏はまだ43歳と若く、イェール大とハーバード大で学んだインテリとされる半面、LGBT(性的マイノリティー)の人たちに極めて非寛容で反移民政策を強硬に主張していることで知られる。

いささか時期尚早だが、2024年大統領選挙の共和党予備選でトランプ氏とデサンティス氏の対決になった場合、デサンティス氏が48%でトランプ氏の40%を大幅にリードするとの調査結果も出ている。

一方、バイデン大統領の方はと言うと、次期大統領選への出馬については相変わらずあいまいな態度に終始している。直近のCBSテレビのインタビューでも「2024年に出馬するかどうかは白紙」と語っており、中間選挙の結果次第とも受け取れる発言をしている。今度の中間選挙は2年後の大統領選を占う前哨戦ともいえそうだ。

■筆者プロフィール:山崎真二

山形大客員教授(元教授)、時事総合研究所客員研究員、元時事通信社外信部長、リマ(ペルー)特派員、ニューデリー支局長、ニューヨーク支局長。

※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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