中国のEV車市場、データから2023年の動向を分析、新勢力5社に迫るファーウェイに注目

高野悠介    2022年9月23日(金) 19時0分

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中国のEV車産業は白熱し、高成長が続いている。写真は比亜迪のEV車「漢」。

中国のEV車産業は白熱し、高成長が続いている。IT巨頭各社が業績頭打ちの中、今や中国経済の牽引車の様相だ。各種データ分析から、その実態を解明し、2023年を展望していきたい。

■EV車保有…1000万台突破

国家発展改革委員会によれば、2012年、中国の新エネルギー車(EV車など)の販売台数は1万3000台だった。それが年平均86%ペースで成長を遂げ、2021年には320万台を売り上げた。これは日本の全新車販売422万台に迫る。また保有台数は1000万の大台に乗った。充電設備は400万台に増加、さらにバッテリーユニットを丸ごと充電済みのものに取り替える交換ステーションも増加中だ。

ネットメディア汽車網によれば、2022年上半期の自動車販売台数は前年比6%増の1207万5000台で、うち新エネルギー車は同120%増の260万台だった。市場シェアは21.6%で、新車の5台に1台がEV車となった。2022年に市場規模で日本全体を上回るのは確実だろう。そして不完全統計と断った上で、メーカー別売上データが出ている。

■上半期販売ランキング…トップはBYD

上半期ランキングを見てみよう。

1位 比亜迪(BYD)、64万1350台

2位 上汽集団、39万2748台

3位 テスラ中国、16万1743台

4位 広汽集団、11万3335台

5位 吉利汽車、10万9708台

6位 奇瑞汽車、10万9025台

7位 江淮汽車、8万89台

8位 長安汽車、6万9737台

9位 小鵬汽車、6万8983台

10位 長城汽車、6万3590台

11位 哪吒汽車、6万731台

12位 理想汽車、6万403台

13位 零跑汽車、5万1994台

14位 蔚来汽車、5万827台

15位 小康股份、4万7714台

カテゴリー分類すると、テスラは中国唯一の外資100%自動車メーカー、上汽集団と広汽集団は国有大企業。比亜迪、吉利汽車、奇瑞汽車、江淮汽車、長城汽車は民営自動車関連企業。小鵬汽車、哪吒汽車、理想汽車、零跑汽車、蔚来汽車はEV車製造のために近年設立された「造車新勢力」だ。

■車種別売上…テスラ、比亜迪がリード

次は車種別の売り上げだ。(台数/前年比/価格帯)

1位 五菱宏光MINI、18万8433台、20.0%増、3万2800~7万2800元

2位 テスラModelY、13万115台、179.4%増、31万6900~41万7900元

3位 テスラModel3、6万2274台、26.9%減、29万1000~36万7900元

4位 比亜迪「漢」、5万3108台、60.2%増、21万4800~32万9800元

5位 奇瑞「小螞蟻」、4万5616台、62.0%増、7万3900~9万4000元

6位 比亜迪「海豚」、4万5531台、前年比-、10万2800~13万800元

7位 奇瑞「QQ冰淇淋」、4万4311台、前年比-、3万9900~5万7500元

8位 長安「奔奔E―star」、4万4142台、66.1%増、5万9800~7万4800元

9位 比亜迪「秦PLUS」、4万4015台、648.3%増、11万1800~17万5800元

10位 比亜迪「元PLUS」、4万3497台、前年比-、13万7800~16万5800元

2人乗りの五菱宏光MINIやQQ冰淇淋から600万~800万円もするテスラYまでフルラインだ。しっかりしたヒット乗用車を出し、業界第一グループを形成したのは、テスラと比亜迪で間違いない。

■造車新勢力の攻防…小鵬と蔚来

車種別トップ10に造車新勢力の車はランクインしていない。大ヒット車はまだないが、このカテゴリーの活力が業界の将来を決めそうだ。

造車新勢力の2021年売上台数は、小鵬汽車9万8155台、蔚来汽車9万1429台、理想汽車9万491台、哪吒汽車6万9674台、零跑汽車4万3121台だった。それが2022年上半期は上記のように小鵬汽車、哪吒汽車、理想汽車、零跑汽車、蔚来汽車の順位に変わった。毎月順位の入れ替わる激戦だ。トップを守る小鵬と、ダウンした蔚来を見てみよう。

小鵬汽車は2014年に広州市で設立。中心人物はアリババのブラウザー・UC瀏覽器を世に出した何小鵬氏だ。主力メンバーは広州汽車、フォード、BMW、テスラ、デルファイなど自動車関連はもとより、アリババ、テンセント、小米、三星などIT企業からも集めた。2018年に初の新車を納入。2020年8月にはニューヨーク市場へ上場。2021年10月に累計10万台を達成、今年上半期はすでに6万8000台を販売した。2020年6月には累計20万台となり、好調を維持している。

蔚来汽車は2014年に上海市で設立。中心人物はネット自動車販売ナビ、サービス情報の易車網を成功に導いた李斌氏だ。百度レノボ、セコイア・キャピタル、IDGなどから投資を集め、小鵬より早く、2018年9月にニューヨーク市場へ上場。かつては「中国版テスラ」と呼ばれ、小鵬以上の存在感を放ったが、ここへ来てコストアップに苦しみ、失速気味だ。

■賽力斯(ファーウェイ系)…台風の目に

そしてさらに新勢力が迫る。上半期15位の小康股份だ。正式名を重慶小康股份(1986年創業)というが、このほど賽力斯(SERES)集団股份に改名した。賽力斯とは、2016年に小康がシリコンバレーに作った研究所の名称だ。小康はこの年、EV社への進出を決めている。当初中国と米国で同時開発を目指したが、米国の制裁の影響もあり、国内へ回帰した。その後2019年、ファーウェイと自動車分野での協力関係を確立。2021年4月、共同開発車をファーウェイの販売チャネルで発売すると発表。同年12月、AITO問界M5(24万9800~31万9800元)がデビューした。さらに2022年8月、大型SUV、AITO問界M7(31万9800~37万9800元)も登場した。売り上げは順調に伸び続け、8月単月では初の1万台に乗せた。

賽力斯はメーカーとして、造車新勢力の一角を占めつつある。そしてファーウェイは造車を目指す小米、滴滴出行、恒大などの異業種大企業グループの中から頭一つ抜け出た。ハイエンド市場でテスラと堂々と戦おうというのはすごい。2023年には業界台風の目になると見て間違いなさそうだ。

■筆者プロフィール:高野悠介

1956年生まれ、早稲田大学教育学部卒。ユニー株(現パンパシフィック)青島事務所長、上海事務所長を歴任、中国貿易の経験は四半世紀以上。現在は中国人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中国最新のB2Cビジネスと中国人家族について、ディ-プな情報を提供。著書:2001年「繊維王国上海」東京図書出版会、2004年「新・繊維王国青島」東京図書出版会、2007年「中国の人々の中で」新風舎、2014年「中国の一族の中で」Amazon Kindle。

※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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