シャインマスカットの流出に、中国専門家「日本の科学者に感謝している」―中国メディア

Record China    2022年9月21日(水) 7時0分

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中国メディアの中国新聞周刊は19日、「狂ったブドウ:シャインマスカットは本当に値崩れしたのか」と題する記事を掲載した。

中国メディアの中国新聞周刊は19日、「狂ったブドウ:シャインマスカットは本当に値崩れしたのか」と題する記事を掲載した。

記事は、シャインマスカットは「爆発的な人気」を博すためのすべての資質を持っていると指摘。そのうちの一つとして長距離輸送や長期間の保存に耐えられ、1年のうちに少なくとも10カ月は店頭で販売することができる点を挙げた。一方で、2016年以降は少しずつ大衆的な果物へと変化しつつあるとし、その顕著な例が価格の低下だとした。

河北ブドウ・ワイン学会の李春雨(リー・チュンユー)副秘書長は「18年の春節(旧正月)が迫るころ、深セン市の市場で3房1箱の韓国産シャインマスカットが1万元(約20万円)近くで売られているのを見たが、今ではこうした光景は見られなくなった。中国のシャインマスカットの生産量が向上したおかげだ」と語ったという。

記事は、「シャインマスカットの人気は、ここ数年の『高級果物がネットで人気を博す』という道を歩んだ典型的なサンプルだ」と説明。「その背後には狂ったような富の誘惑があるだけでなく、中国の高級果物育成モデルの弱点も露呈している」と分析した。

■シャインマスカットの値崩れ、原因は?

記事によると、シャインマスカットは産地によって流通時期に差がある。江蘇省、浙江省、湖南省など南方の産地で7月から収穫されたシャインマスカットが集中的に市場に出回るのは8~9月。この時期が1年の中で最も価格が下がる時期だ。一方で、山東省や遼寧省のシャインマスカットは10月ごろから市場に出回るため、販売価格は夏季よりも上がるという。

李氏はシャインマスカットの価格が急落したことについて、16年以降に中国内で急速に作付面積が増加したことが背景にあると説明した。南京農業大学園芸学院の陶建敏(タオ・ジエンミン)教授はシャインマスカットの人気ぶりは苗木の価格からも明らかだとし、「昨年は苗木も入手困難だった。当初は1本あたり5~6元(約100~120円)だったが、昨年は20~30元(約400~600円)、あるいはそれ以上に高騰した」と話した。

また、栽培が急速に拡大した背景として、シャインマスカットは適応力の強い品種であることも指摘。ある農家は「適応力が強すぎて、高温多雨の南方でも乾燥した北方でも栽培できる」と語った。李氏は「モモの木やアンズの木は一般に栽培から3~4年後に豊作期に入るが、ブドウは造園から豊作までの期間が非常に短い。1年目の苗の管理が適切であれば、2年目には良好な生産量を確保できる。そのため、シャインマスカットの生産量は短期間で急速に増加した」と解説した。

さらに、栽培技術の普及も原因の一つだという。前出の農家は「かつてはある品種が中国に入った場合、栽培技術の普及に少なくとも十数年を要した。しかし、今では情報が急速に広まる。15~16年にシャインマスカットが市場に受け入れられたことで、18~19年には栽培技術体系がほぼ確立し、20~21年にはどこの農家でもその技術を把握できるようになった」と話した。

■シャインマスカットは2極化する?

李氏は、シャインマスカットの魅力は変わることはないと指摘する。「供給量が増加すると価格が変化するのは必然だ。しかし、価格の変化は単に価格が下がることを指すのではなく、市場による等級付けが行われることを指す」と説明。中国のデパートなどで販売されるシャインマスカットは依然として高値が付けられ、ハイエンドな消費者の需要を満たす存在だという。

李氏は「日本も同様だ。『晴王』や『大地のしずく』などは日本の農協が認定した果物の商標だが、日本のシャインマスカットのすべてが『晴王』や『大地のしずく』ではない」とした上で、「プレミア級の果物をつくるには生産場所に絶対的な優位性があることが必要。同時に、高額の投資で施設を整備し、極めて高い技術と厳格な生産フローを維持しなければならない。これらの条件は往々にしてコピーが不可能なものだ」と述べた。

雲南浙江雲南農業発展有限公司の郭峰(グオ・フォン)社長は「高品質のシャインマスカットの価格は依然として安定している。弊社ブランドの消費者向け価格は1斤(500グラム)60元(約1200円)前後で、特級などになると80~100元(約1600~2000円)になる。例年に比べて下がってはいない」と説明。郭氏はシャインマスカットの収益性は依然として高く、他の品種と比べても2倍ほどになるとし、「今後はブランドと非ブランドの間の分化がますます明確になる可能性がある」と語った。

■日本よりも粗雑な中国、すでに「品種退化」も

中国の市場では全国で作付面積が拡大したことで品質にバラつきが生じている。陶氏は「農作物は工業品とは異なり、基準が存在していたとしてもそれに基づいて生産できるかは別問題」としたほか、「国内には基準が不足している。日本の農家はほとんどが農協に加入しており、農家が生産した農産物を農協が等級分けして販売し、その後農家に決済しているが、中国にはこうした全国をカバーする組織が存在せず、現行の基準は生産農家を強力に拘束するものではない」と指摘した。

郭氏は「中国の品質に対する認識は粗雑であり、日本よりも果物のブランドを作ることは難しい。日本のブランドの基準化は長年にわたって積み重ねられ、その深さと細やかさを徹底的に追求してきた。例えば、『晴王』の販売基準は、粒が14グラム、糖度が18度以上であることだ」と説明した。

李氏はシャインマスカットには中国ですでに「品種退化」が起きていると指摘。「シャインマスカットは育成からの期間がそれほど長くない若い品種で、繁殖の過程で必然的に遺伝子が退化するリスクがある。日本や米国など農業水準が比較的高い国では品種の維持のために一定期間が経つごとに状態が安定している母樹から再抽出している。中国にはまだ少なからぬ差がある」と述べた。

■日本が品種の海外流出に対策、中国の課題は

記事は、多くの人が「次の爆発的ヒットを飛ばすブドウが登場するまでは、シャインマスカットが主力になり続ける」との認識を持っているとする一方、「問題なのは次にヒットを飛ばす果物が海外から出てくるのではないかということだ」と指摘。シャインマスカットが日本から持ち込まれたものであることに言及した上で、日本が種苗法を改正し果物の品種の海外へ持ち出しへの規制を強めていることを紹介し、「将来的には日本から新品種を導入することはますます難しくなるかもしれない」とした。

前出の陶氏は一部でシャインマスカットを最初に中国に持ち込んだ人物とみられているが、「誰が持ち込んだかは重要ではない。当時、民間交流の形で(シャインマスカット)を導入したが、多くの人がそれをすることができた。中国で特許出願がされていなかったため、政府の立場でも保護を提供することはできなかったのだ」と言明。李氏は「日本が出願していなかったため中国がシャインマスカットを導入したことに問題はない。もちろん、日本の農業科学者に感謝したい」と述べた。

記事は、過去に中国でヒットした多くの果物は日本から持ち込まれたものだったと紹介。中国農業科学院果樹研究所の曹永生(ツァオ・ヨンション)所長がかつて「わが国の果樹の主栽培品種は依然として輸入に頼る必要があり、独自の品種の割合が低いという問題がある」と指摘していたことに触れ、「わが国は品種の高いレベルでの保護と利用を基礎に、果物の高効率な育種技術の研究開発と、画期的あるいは重要な品種の育成に重点を置くべきだ」と結んだ。(翻訳・編集/北田

※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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