返還以来の香港はどのような道を歩んだのか、今後は何を目指すのか―中国専門家が解説

中国新聞社    2022年7月10日(日) 16時0分

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香港は7月1日に、英国からの返還25周年を迎えた。米国や英国からは香港の現状を批判する声が出ているが、中国は「香港の現状や『一国二制度』などの概念の理解を誤解している」などと反論している。

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香港は7月1日に、英国からの返還25周年を迎えた。米国や英国など、いわゆる西側諸国からは、香港の現状についての批判の声が出ることがある。中国側は、西側諸国は香港の現状や「一国二制度」などの基本的概念の理解を誤解していると反論している。中国側は香港についてどのような主張をしているのだろうか。中国社会科学大学特任教授で中国社会科学院台湾・香港・マカオ研究センター主任なども務める黄平はこのほど、中国メディアの中国新聞社の取材に応じて、香港について解説した。以下は黄教授の言葉に若干の説明内容を追加するなどで再構成したものだ。

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■「一国二制度」「高度な自治」などの概念にはそれぞれ“階層”がある

香港を理解するためには、香港と中国、さらに世界全体をも理解せねばならない。重要なことは香港も中国も世界も変化しつつあることだ。まず、中国本土でも国際化が急速に進んでいるが、香港の国際化は依然として本土の都市とは比べものにならないほど進んでいる。香港は中国が対外開放を継続し、拡大するための重要なゲートでもある。中国が対外開放を続ける限り、香港の独自性は常に存在する。


国家レベルから見ると、香港は「一国」下の特別行政区だ。香港についても計画と統治は国家の大局から出発することに着眼すべきだ。社会面では、香港は近代的な国際大都市であり、近代的な都市管理方式に基づいて管理する必要がある。経済面では、香港自体が中国と外国をつなぐ大きな市場であり、関連する計画もその特色を十分に体現すべきだ。文化面では、香港は中国と西洋文化、中国とその他の外国文化が交わる地域であり、文化の多様性が特徴となっている。政治・法律面では、香港は中国本土とは「別の制度」を採用している。この制度は、返還前の制度とも異なるものだ。

そのため、香港の繁栄と安定を保証することに加え、経済的競争力、国際的プラットフォームと橋渡しの役割、文化的独自性、政治的法律的「一国二制度」の正統性を守るイノベーションを維持することが重要だ。

香港に関連する用語の中には、階層があることを理解せねばならない。「一国二制度」「香港人による香港統治」「高度な自治」の中で、まず出発点になるのは「一国」だ。英国から返還されて以来、中国は香港についての全面的に主権と統治権の行使を回復した。「一国」という根本概念の次に、中国本土とは異なる制度を採用しているという「二制度」が来る。従って、「香港人による香港統治」が「一国」という大前提の枠をはみ出すことは認められない。

もちろん、「香港人による香港統治」を実施するので、香港における実務は香港人自身が管理する。この言葉で極めて重要なのは、香港は植民地時代とは違って「英国人が支配するのではない」ということだ。

■「高度な自治」は「完全な自治」を意味するものではない

香港の返還問題で、英国には統治権を残すべきと主張する人もいた。英国との交渉を進めたトウ小平は、「香港人は香港を治めることができると信じている。外国人に統治させ続けることはできない。そうでなければ、香港人も決して承諾しないだろう」と語っている。「香港人による香港統治」は、香港を管理する権限を香港人、すなわち香港に住む中国人が行使することを指す。「一国」という大前提がある以上、愛国者を主体とする香港人が香港を統治する」という基準が成立する。これもトウ小平が明確に指摘したことだ。

その次の階層にある用語が「高度な自治」だ。「高度な自治」は「完全な自治」とは異なることも原則上の問題だ。トウ小平は、「『完全な自治』という表現には賛成できない。自治に限度がないわけにはいかない。限度があるのだから、『完全』ではない」と言った。

返還以来香港が経験した何度かの大きな挑戦、特に2019年に発生した中国に反対し香港を乱そうとする勢力が条例改正を口実に起こした返還以来最大の事態では、国家にとって重大な問題が発生した場合には、「高度な自治」を問題解決よりも優先することはできないことが示された。「高度の自治」の適用では、香港人の利益になり、香港の繁栄と安定に資するのか、それともも香港人の利益を損ない、香港の繁栄と安定を損ねてしまうかを考えねばならない。

そして「50年間は不変」という言い方だ。ここでの「不変」とは、発展しない、進歩しない、時代とともに進化しないことではない。「一国」という原則の下で資本主義的な生産、生活方式を引き続き実行することは、貧富の格差が日増しに拡大することを黙認することを意味するのではない。ましてや旧式の、あるいは特定の一族による、あるいは官と商が癒着した統治を黙認することでもない。


■香港の制度は固定されたものではない、時代と共に歩む必要がある

香港人がよくベンチマークにする老舗資本主義国の英国も、1945年以降は多大な精力や財力を費やして、さまざまな社会政策を通じて福祉や保障を導入してきた。英国はもはやかつての、貧富の差が激しい状況ではない。香港も立ち止まってはならない。特に社会分配や社会福祉の分野で、香港はまだ多くの改善を必要としている。香港は時代とともに前進しなければならず、ある部分は維持し、ある部分は遅れをとりもどし、繁栄と安定を維持し、正義を守り革新を手掛けねばならない。

香港の制度は具体面も含め、基本的には不変だ。しかし、いくつかの制度は発展と変化に伴って絶えず改正せねばならない。例えば香港国家安全維持法の制定と施行、そして愛国者による香港統治原則の選挙分野における具体的な実施だ。

真の知識とは実践から生み出されるものだ。この25年間の「一国二制度」の実践がなければ、その中で直面した問題と挑戦も含めて、「一国二制度」は発展することができず、今日の成果を得ることはできなかっただろう。

25年間の模索と実践を経て、人々の「一国二制度」に対する認識はより全面的で正確になった。香港の「一国二制度」の次の25年は、世界が長期に渡り経験しなかった大変化に直面する中で進んでいく。中国の執政党である中国共産党は創立100周年を迎え、偉大なる中華の復興を実現する「第2の100年間」の道を歩んでいる。香港の再認識と再出発は、新たな模索と発展を行い、正統を守り革新する角度から進めて行かねばならない。香港は繁栄と安定を保つだけでなく、国家の大局に溶け込み、また新たな対外開放を進めることができるようにせねばならない。

中華文明はそもそも「多元的一体」を常態と考え「相違点があっても共存する」ことを理念とする。世界各国や各地域の文明は互いに参考にせねばならない。さまざまな面ですばらしい香港を作ることは、人類運命共同体の建設の一部でもある。もちろん、困難で細かい作業は多く発生するだろう。われわれは成果の達成に自信を持つと同時に、各方面が手を携えて困難を解決せねばならないことも熟知している。(構成 / 如月隼人


※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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