ファーウェイが産学連携に強い意欲、発展のため基礎理論や人材育成が不可欠と認識

Record China    2022年6月3日(金) 13時50分

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ファーウェイの徐文偉科学者諮問委員会委員長は5月31日、THEアジア大学サミットで基調講演を行い、産学連携に対する同社の極めて強い意欲や具体的な方式などを紹介した。

華為技術(ファーウェイ)の取締役である徐文偉科学者諮問委員会委員長は5月31日、タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)アジア大学サミットにオンラインで参加し、「産学連携でイノベーションと人材育成を推進し、研究から実装へ」をテーマとする基調講演を行った。徐委員長は、産学連携についてのファーウェイの考え方や方針を具体的に紹介した。

■抽象的理論もあったからこそ技術の躍進がもたらされた

徐委員長は、現実世界における技術の躍進について、すぐに応用可能な学術的成果だけでなく、抽象的な理論構築があったからこそ、実現ができたと強調した。例えば、ファーウェイは数学を利用した強力な信号処理法を開発し新世代のワイヤレス通信を実現したことで、5G時代に突入できたという。

徐委員長はさらに、数学を用いてアルゴリズムを構築し、物理的現象を説得力ある理論に発展させるまでには数十年を要すると説明。しかし徐委員長によれば、ICT業界は過去60年間にわたり、理論における画期的な躍進を実現させていない。ファーウェイはこの課題に対応するために、戦略をイノベーション1.0からイノベーション2.0に引き上げた。

■ファーウェイはイノベーション戦略を次の段階に引き上げ

イノベーション1.0とは、顧客ニーズを満たす工学や技術の革新に関連するもので、重視するのは、顧客の競争力を高め、ビジネスの発展を実現することだ。

イノベーション2.0は、基礎研究と技術上の発明を目標とする。情報通信業界にとってどうしても必要な刷新であるが、大きな不確実性が伴うことも事実だ。ファーウェイはイノベーション2.0を成功させるためにも、開かれた技術革新と包括的開発において、大学と提携することを望んでいる。業界として直面する課題を大学と共有し、大学の研究に資金を提供できるとの考えだ。

産学の役割分担については、大学は長期的な課題に取り組み、業界は技術的な専門性で貢献することで、両者の強みを生かし、業界が抱える技術的な課題を克服できると考える。

■偉大な発見や発明の土台には「基礎理論」が存在する

徐委員長は基礎分野の研究について、古くから中国にある「無用の用こそ大なる用」の言い方も引用して説明した。「すぐには具体的に使えないことが、長く大きな目で見れば、非常に役立つことがある」との意味だ。

徐委員長はさらに、科学技術史の事例として、数学の研究がなければアインシュタインは一般相対性理論を見出せなかったろうし、電磁波の性質を精密に示すマクスウェルの方程式がなければ、マルコーニは無線通信を発明できなかったかもしれないと述べた。

■業界と大学の「意識のすり合わせ」が極めて重要

徐委員長は、業界と学術界の認識の共有の大切さを繰り返し述べた。ファーウェイの具体的な取り組みの一例としては、国際的な学術コンテストに資金を提供し、さらにコンテストに出題することもしているという。

このことで学生は、ファーウェイの直面する業界最大の課題を認識するなどで視野を広げられる。また自らが学んだことを、コンテストでの課題解決に応用できる。コンテストは同時に、業界が直面する光学、無線、ソフトウェア、クラウドについての実際の問題を解決し、業界の進歩を促進することに役立つことになる。

ファーウェイは大学、研究機関、業界は何を「最大の課題」と定義するかについて認識をすり合わせてはじめて、次世代技術を模索することができると考えているという。また、産学の連携は人材育成にとっても大きな意義を持ち、連携してこそ研究と人材が最新の開発スペースに歩調を合わせることが可能になる。

徐委員長は、5Gにおける重要な技術であるPolar符号やMassive MIMOはいずれも産学の共同研究の成果と紹介した。

■大学との提携のため年間511億円を投入

ファーウェイは膨大な数の研究者を有する企業として知られる。徐委員長によると、同社には博士号を持つ数学の研究者が700人以上、同じく博士号を持つ物理学研究者と化学研究者は計200人、工学博士に至っては5000人以上も在籍する。

また同社は社内だけで研究開発を推進しているのではなく、世界の300以上の大学、900の研究機関および企業と提携している。2021年実績では、大学との提携のために投じた経費だけで4億ドル(約511億円)に達したという。

徐委員長によると、ファーウェイは人材育成について、大学だけに課せられた責務ではないと考えている。業界に存在する膨大な人材需要を満たすためにも、教育機関である大学をサポートする必要があるとの発想だ。

例えばファーウェイと中国の名門大学の復旦大学の提携では、ファーウェイは業界の開発トレンドについての自社の見解を同校と共有して、プログラムおよびコースの策定を支援しており、さらに業界のガイダンスを提供して大学側と緊密に連携することで、世界レベルの工学教育システムを構築しているという。

■産学連携のための「5つの提案」を発表

ファーウェイは望まれる人材の条件として、「基礎科学の確固たる基盤を持ち、問題を創造的に解決する能力がある」、「新興産業や産業の次の飛躍に必要な知識があり、産業の発展を助ける能力がある」、「工学技術の最前線に立ち、絶えず改善と革新ができる」、「最先端の工学技術に後れをとらず、実践能力が高い」ことを挙げている。

徐委員長は講演の最後の部分で、共同研究や人材育成など大学との提携についてのファーウェイの「5つの提案」を発表した。

「基礎理論と基礎技術における躍進と業界のイノベーションを支援しつづける」、「産学が連携して問題を提起し、重大な難関を突破する」、「それぞれの専門性を最適化し、プロセスをデザインすることで、業界と意識を共有し、喫緊に必要とされる人材を育成する」、「共同実験室、コンテスト、ファーウェイが公開しているウェブページの『Chaspark(チャップスパーク)』、人材育成の公益事業である『未来の種』、ポストドクター向けサービスなどを通じて、イノベーション・プラットフォームを構築する」、「大学と業界の人材の流動あるいは交流を強化して、理論から実践への移行を促進する」だ。

同社のこれまでの動きを振り返ると、重要な基本方針を定めた場合には、「ブレる」ことなく、その方針を貫く傾向が強い。ファーウェイの、産学連携をさらに強く推進し、同時に産学連携の新たなモデルを構築していく方向性はすでに確立されたと理解することができる。(取材・構成/如月隼人

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