中国を南北に貫く運河は「東と西」を結び付ける―専門家が史実を交えて紹介

中国新聞社    2022年5月6日(金) 19時10分

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南京大学文化及び自然遺産研究所所長などを務める同大学の賀雲翱教授は、中国を南北に貫く京杭大運河は「東と西」を結び付ける役割りを果たせると説明した。写真は江蘇省揚州市内にある中国大運河博物館。

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余りにも強引な政治をして国を滅ぼしたと批判される隋の煬帝(在位:604-618年)だが、その後の世の中に大きな恩恵をもたらし続けてきた事業も行っている。父の文帝(楊堅)が着手した運河建設事業を引き継いで、現在の北京市と浙江省杭州市を結ぶ中国を南北に貫く京杭大運河(以下、「大運河」)を完成させたことだ。考古学を専門に研究し、南京大学文化及び自然遺産研究所所長なども務める賀雲翱教授はこのほど、中国メディアの中国新聞社の取材に応じて、現代にあって大運河は「東と西」を結び付ける役割りを果たせると説明した。以下は賀教授の言葉に若干の説明内容を追加するなどで再構成したものだ。

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■世界に500本も存在する運河、それぞれが多くの物語を持つ

大運河は交通のための水路であり、灌漑用水や生活用水を供給する役割りも果たしてきた。2014年6月には世界遺産として登録された。2017年には「大運河文化ベルト」と「大運河国家文化園」の計画が始まった。目的は、1000年以上の歴史を持つ大運河に伴う文化をさらに探求し、広く紹介することだ。

大運河に関わった人は極めて多い。計画を立案した人、開削工事に関わった大量の労働者、運河を管理し、補修し、維持した人、運河を利用した船乗りや荷主、さらに運河周辺地域の住民の生活も、運河と深く関わってきた。大運河には多くの人の物語がある。運河遺跡公園、運河博物館などの施設、もちろんインターネットなども活用して、運河の物語を広く伝えねばならない。

大規模な運河が建設されたのは中国だけではない。世界50カ国以上に500本以上の運河があり、運河に面する街は4000カ所以上が存在する。運河は歴史のさまざまな時代に世界各地の人々が知恵と忍耐力を総動員して建設した、人類が共通して追求してきた交通システムだ。

中国の大運河は世界屈指の運河だが、外国にもそれぞれの国の歴史や文化の象徴になっている運河が多く存在する。世界遺産に登録されている運河で言えば、例えばカナダのリドー運河は水運に利用する機能は喪失したが、現在も文化遺産として地元の観光やスポーツに貢献している。リドー運河は「世界一長いアイススケートリンク」と呼ばれている。

大西洋と地中海を結ぶフランスのミディ運河には、300カ所以上のトンネルや閘門、橋梁、橋が付随している。素晴らしい文化遺産であり、観光の目的地でもある。

それぞれの運河の文化的形態や意味合いは異なるが、運河が人々の生活や都市、さらには国そのものと深く結びついてきたことは中国も西洋も同じだ。

■大運河は世界に向けての中国文化の「発信拠点」でもあった

中国では元代(1279-1368年)以降、現在の北京が中国の政治の中心となり、中国南部では経済が発達した。大運河は中国の南部を北部を結びつけた、つまり中国の政治の中心と経済の中心を有機的に結び付けた。運河はさらに、海上や陸上のシルクロードに接続した。

大運河を利用したのは中国人だけではない。大運河が完成したのは隋代(581-618年)だが、遅くとも三国時代(220-280年)や晋の時代(266-420年)には外国の使節が中国の運河を利用した。運河はその時代から、人類の共有財産だったと言ってよい。

唐代には外国の使節や僧侶、宣教師が大運河を旅した。日本人僧侶の円仁は「求法唐行記」で、同じく唐代の日本人僧の成尋は「三天台五台山記」で、元代のイタリア人・マルコポーロは「東方見聞録」で、明代(1368-1644年)にはイタリア人宣教師のマテオ・リッチが「中国におけるキリスト教遠征記」で、大運河を旅した様子を紹介した。それ以外にも、大運河を旅した記録を残した外国人は、極めて多い。大運河は中国国内から中国文化を世界に発信する拠点でもあった。

■現代の運河には、「東と西」を結び付ける機能も付与できる

運河は歴史を通して、文化の回廊としても機能した。しかし重要な運河がある国は近代化の過程で、運河文化の保存、継承、活用においてさまざまな課題に直面することになった。

中国は近年になり、江蘇省揚州市に「世界運河歴史文化都市協力組織(WCCO)」を設立した。WCCOは東西の運河文化について、互いに交流し協力する一連の仕事を実らせてきた。私は、中国はさらに率先してユネスコ、世界遺産委員会、WCCO、そして運河に面する世界の約4000都市との協力を通じて、運河文化の交流を発展させ、協力の機会を模索し、さらに協力の方向を刷新していくべきと考える。

運河を観光し、運河で泳ぎ、周辺の食べ物を味わうといった、運河を楽しむ条件の整備を共に進めていくのだ。その協力の過程で、世界各地の「運河関係者」が友好的に語り、共に目指すべき目標を再確認するなど、運河を媒介にした良好な国際交流が多く生まれるはずだ。

運河の物語は人々の物語であり、世界の物語でもある。運河を語る言葉には、洋の東西を問わず多くの人が興味を持ち、人々は運河という存在を実感することができる。これが「運河は東西をつなぐ」ということだ。世界は、運河のよりよい保存やよりよい利用を考え実行することで手を携えることができる。(構成 / 如月隼人

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