中国5000年の歴史を解明してきた考古学の成果と現状―トップクラス専門家が紹介

中国新聞社    2022年3月21日(月) 22時50分

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中国考古学界理事長も務める王巍氏はこのほど、中国考古学が解明してきた古代の謎と、中国考古学の現状を説明した。写真は中国最古の文化の一つである仰韶(ヤンシャオ)文化を紹介する博物館。

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「中国5000年の歴史」などと言う。中国の考古学はどのように「5000年の歴史」が事実である証拠を固めてきたのだろうか。現状はどうなのか。中国社会科学院学部委員であり、中国考古学界理事長も務める王巍氏はこのほど、中国メディアの中国新聞社の取材に応じて、中国考古学が解明してきた古代の謎と、中国考古学の現状を説明した。以下は王氏の言葉に若干の説明内容を追加するなどで再構成したものだ。

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■中国各地で発生した古代文明、生き残ったのが中原文明だった

中国で考古学の調査研究が始まったのは1921年で、それから現在までの100年間において発見された大量の実物資料の研究を通じて黄河、長江、遼河流域の先史時代の文化は、いずれも現地で発生して育ったことが分かった。中国では今から1万3000年前には、すでに陶器を作る技術があった。1万年前には稲やアワ、キビの栽培が始まった。9000年前には玉(ぎょく、ヒスイなど)の加工技術を手にした。彩色陶器に特殊な記号をしるした。イノシシを家畜化して豚にした。かつては、中国古代の文化文明は西方から伝わったという説があったが、今では通用しない。

今から5500年前には黄河の中流以下、長江の中流以下、遼河の流域に文化が発生し、社会の上層部には交流が存在した。それらの地域では竜をトーテムとして祖先を崇拝した。身分による「礼」の制度もできた。今から5000年には、一部地域の社会は「国」としての性格を持つようになっていた。

今から4300年ぐらい前には、長江流域と黄河の上流域と下流域、遼河流域で栄えていた文明が衰退し始めた。一方、黄河中流域、いわゆる中原地帯では文化文明の発展が続き、周辺地区に存在した先進的な要素も吸収した。こうして国家という形式が固まっていった。

中国の歴史書に登場する最も早い王朝国家は「夏」だ。外国では「夏の実在はまだ証明されていない」との意見もあったが、中国では河南省偃師(えんし)県内の二里頭遺跡の年代が、炭素14年代測定法により殷よりも古い事が判明したことから、夏王朝は存在したと考えられようになった。

この時代には都市全体の配置、宮室の配置、儀礼用の青銅器や玉器や陶器が規範化された。これらの文化は黄河の下流と上流にも伝わっていった。遠いベトナム北部でも、当時の中原王朝で作られた儀礼用の玉器が出土している。

周が衰えて春秋戦国時代になると、かつては統一されていた各諸侯の都の構造や貴族の墓にも群雄割拠の影響が及ぶ。秦が戦国の世を統一すると、その後の中国では改めて、統一して発展していく国の形態が確定した。

■中国各地にある仏教寺院は、中国文明が持つ包容力の象徴

中華文明には少なくとも三つの大きな特徴がある。まず、中華文明には歴史上の断絶がないことだ。次に、開放的で包容力があることだ。それぞれの時代で、他の文明の先進的な要素を取り入れ、融合することで中華文明は発展してきた。最後に「多元」と「一体」の両方を備えている。

中国と外部の文明の交流では、中国から外に伝わったものもあれば、外から中国に伝わったものもある。稲やアワやキビは朝鮮半島や日本、東南アジア、さらに西アジアにも広まった。西洋からは中国に小麦や羊や冶金技術などが伝わった。

中国には洛陽の白馬寺や敦煌の石窟などを代表とする古い寺院や石窟寺院が、全国各地に存在する。中国は外来の仏教を取り入れた。仏教は中国固有の道教や儒教と融合した。仏教は極めて急速に中国化した。このことも、中華文化の特徴である包容力を示している。

現在の中国では居住地域が違ったり異なる民族に属する人でも、先祖崇拝や「礼」などの共通の概念や習慣を持つのが一般的だ。これが「多元」と「一体」いうことだ。

■研究の国際交流が進行中、研究にも普及にもハイテク技術を駆使

中国の考古学研究では、科学技術の比重が大いに高まりつつある。発掘など伝統的なフィールドワークが土台ではあるが、自然科学やその他の人文科学との融合が強化され、共同研究が進められている。

考古学の国際協力も進展している。かつての中国考古学界では、外国の研究者を「お招き」することが主流だった。しかし21世紀になると、外国人研究者の受け入れと、中国人研究者の国外に出ての研究が併存するようになった。2013年以降は中国人研究者が国外に出ることが主流になった。

一帯一路」イニシアチブが打ち出されてから、ますます多くの中国の考古学チームが国外で研究するようになった。2016年から19年までの間に、中国の考古学調査隊延べ32チームが、アジア、アフリカ、欧州、米大陸の22カ国における36件の国際合同発掘調査に参加した。

考古学関係者には、研究の成果を大衆に紹介する責務もある。4D、5D、拡張現実(AR)、仮想現実(VR)など先端の科学技術を利用した見せ方をもっと広めたり、考古学の成果学習と娯楽を兼ね備えた遺跡のテーマパークなどを建設することも有効だ。(構成 / 如月隼人

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