北京は20年かけて「青空」取り戻した―現場の関係者が経緯と手法を説明

中国新聞社    2022年3月19日(土) 23時20分

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中国では「大気汚染が極めて有効に抑制されたことで、北京は青空を取り戻した」などと報じられている。関係者はどのように努力したのだろうか。写真は北京市郊外の八達領長城。

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中国では「大気汚染が極めて有効に抑制されたことで、北京は青空を取り戻した」などと報じられている。北京の青空を示す「北京藍(北京ブルー)」という言葉も定着した。環境政策などを専門とする上智大学大学院の井上直己准教授も2019年3月に発表した文章で、北京の大気の質は「格段に改善」と評価した。関係者はどのように努力したのだろうか。北京市生態環境観測センターで活躍してきた高級技術者であり同センター共産党委員会書記の劉保献氏はこのほど、中国メディアの中国新聞社の取材に応じて、北京市における大気の質の改善について説明した。以下は劉氏の言葉に若干の説明内容を追加するなどで再構成したものだ。

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■大気の質が「優良」な日が2013年比で年間112日増え288日に

北京市で大気汚染についての大規模な取り組みが始まったのは1998年だった。2013年には国が定めた「環境大気の質の標準」を導入した。2021年には大気1立法メートル当たりのPM2.5の量が2013年比で63.1%減の33マイクログラムにまで減少した。同年にはオゾンなどその他の対象物質を含めて、北京市の大気の質が初めて全面的に基準を満たした。

北京市では過去20年以上にわたり、経済規模が拡大し、常住人口も増え、自動車保有量も増加した。エネルギー消費量は目に見えて増加した。しかし2021年には、北京市における大気の質が「優良」と判断された日数が288日に達した。2013年と比べれば、4カ月分に近い112日の増加だった。

■極めて細かい観測網で「大気の質のCTスキャン」を構築

北京市は、中国全国に先駆けて、都市としての大気の質の予報システムを構築した。空気汚染が予想されると、汚染のピークを低減する対策を取る。予報は住人にも伝えられる。住人は行動を再考するなどで、汚染軽減に協力することができる。

PM2.5の対策では、発生源を突き止めることが大切だ。北京市は2013年以来、PM2.5の発生源調査を3回にわたり調査した。発生源の種類とPM2.5の汚染が拡散される状況を定量化したことで、規制方式や優先順位を決められるようなった。中長期の対策も精密に組み立てられるようになった。

北京市では、大気中の汚染物質に対する、極めて細かい観測網が構築された。ちょうど、CTスキャンが登場したことで、患者の体内の状況をより精密に知り、処置を決定できるようになったのと同じだ。

電力や天然ガスを主力として、地熱や太陽光で補うクリーンエネルギーの体系が構築され、かつて深刻だった石炭燃焼による大気汚染は、基本的に解決できた。現在は汚染物質の46%が交通により、16%は生活の場から、11%が土ほこりとして、10%は工業活動により排出されている。

世界各地の都市と同様に、北京でも交通に伴い放出されるPM2.5が多い。北京市では「厳しい基準、淘汰促進、強力な管理監督」、さらに交通管制や制限、経済政策による奨励などで、PM2.5を減らしてきた。

■「全てをやり遂げた。これで終わり」は絶対にない

世界の多くの大都市が、大気汚染を経験している。状況はさまざまだ。米国では1943年にロサンゼルスで深刻な光化学スモッグが発生した。発生源は大量の自動車で、地形や気象条件も関係した。対策として、自動車に排気ガス浄化装置の装着を義務付けた。最終的には大気の汚染を抑制するための法律が設けられた。

1952年に英国のロンドンで発生した深刻なスモッグは石炭のせいだった。当時のロンドンでは工場が石炭を使い、住民も暖房用に使っていた。英国政府はエネルギー源の構成を調整し、大気浄化法および支援策を導入することになった。

北京市の場合、汚染源は石炭燃焼と自動車排気ガスの両方で、先進国の多くの都市よりも複雑だった。北京市は先進国の汚染対策の経験にも学び、石炭燃焼、工業活動、自動車使用、土ぼこりなどを統合的に管理することで、大気の質を改善した。大気の質の改善にロサンゼルスは60年間、ロンドンは30年間を要したが、北京は20年間で実績を出した。しかも、経済や社会の発展と環境保全を両立させた。国連環境計画からも「北京の奇跡」と称賛された。

良好な生態環境は、人々が生活する上で最も普遍的な幸いだ。北京で働き、生活している人は、ここ数年で北京に青空が増えたことを実感していると思う。エコ文明を実現させることは、人類の歴史の流れだ。エコ文明の実現は、中華民族の持続可能な発展のための基本計画の一部でもある。「北京の経験」は参考事例として、世界における大気汚染対策に貢献できるはずだ。

北京市は今後、汚染物質の排出削減にたゆまず取り組み、その一方で他の地域との共同での対策、さらに社会各界が共に努力することで、大気汚染対策の成果を確固たるものにするという、所定の目標を達成せねばならない。

北京の大気の質の向上には「人の努力」だけでなく、「天の助け」もあった。ここ数年は、気象状況が比較的有利だったからだ。しかし、気象条件は変動する。大気の質が安定して基準を満たすようにするためには、これからも長期にわたり、苦しく複雑な努力を続けねばならない。「一つの作業を完成させたら、それで終わり」という状況にはならない。(構成 / 如月隼人

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