<技能実習生人権問題>「産業研修制度」を廃止した「変われる国・韓国」に学ぼう

大村多聞    2022年2月28日(月) 7時30分

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技能実習生人権侵害の根本原因は「非熟練労働者」の「移民」は受け入れていないという「タテマエ」を維持しながら 非熟練労働者を受け入れるという「カラクリ」にある。写真はソウル。

仏フィガロの「フランス・ジャポン・エコー」編集長のレジス・アルノー氏は「日本の技能実習制度はそれ自体が人権侵害だ。技能実習制度は、雲が雨を呼ぶように人権侵害を広げている。~日本の実習制度が、世界中の外国人労働者から嫌われることを目的としているのであれば、それは非常に効果的といえるだろう。」と技能実習制度の決定的欠陥を喝破しフランス流で日本(政府)を揶揄している。

◆改正技能実習制度が欠陥を維持強化

技能実習生人権侵害の根本原因は「非熟練労働者」の「移民」は受け入れていないという「タテマエ」を維持しながら 非熟練労働者を受け入れるという「カラクリ」にある。

技能実習制度への批判を受けて2016年11月成立2017年11月施行の改正法の名称は

「外国人技能実習の“適正な実施”および“技能実習生の保護”に関する法律」というそれまでの制度が「不適正」で「技能実習生の人権侵害」を招いていることを認める異例な名称の法律となっている。不適正な法律なら廃止すれば済むはずだが、改正法は逆に人権侵害を招いた構造的欠陥を維持強化している。

同法1条は目的を「国際貢献」とし、第3条基本理念は「途上国への技術移転」であり

「労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」としている。そのうえで屋上屋を課する規制を施し、実習生と受け入れ先の負担を増しそれが実習生の借金を増やし日本での手取り額を減らし、受け入れ先のコスト増となり人権侵害発生要因となっている。たとえば非熟練労働者に必ずしも必要のない高卒要件を課すと偽造の卒業証書購入のため実習生の借金が増える。過剰な「技能研修計画」とその認定制度はお役所仕事を増やし受け入れ企業の負担・コストを増す。実習生は転職の自由がなく受け入れ先から負担に見合う戦力になっていないとするいじめ虐待の人権侵害を招いており、本年1月の岡山県での技能実習生への集団いじめ虐待事件がこのことを示している。

以上の「カラクリ」は安倍政権下でさらに強化された。閣議決定「未来投資戦略2017」は「外国人材の活用が“移民政策と誤解されない仕組み”~の検討を政府横断的に進める」とし、閣議決定「未来投資戦略2018」は「“移民政策とは異なるものとして”、外国人材受け入れを拡大する」とし、「カラクリ」を維持しながら外国人労働者受け入れ拡大が図られた。

◆韓国の移民政策

韓国は1993年に日本を見習い「外国人産業研修制度」をスタートした。しかし市民団体が「奴隷制度」だと批判し「産業研修制度」廃止と「外国人労働者の合法的受け入れ」を主張した。使用者団体も既得権を克服し双方が折り合い、2004年「産業研修制度」廃止決定2007年完全廃止に至った。2004年の「産業研修制度」廃止決定と同時に「雇用許可制度」による非熟練労働者の合法的受入をスタート、「出身国別割当制」と期間4年10か月までの「ローテーシヨン原則」とした。

韓国は2007年「外国人基本法」を制定し政府が5年ごとに外国人基本政策を策定するとし、第一次基本計画(2008~20012年)では①積極的な移民許容による競争力強化、②質の高い社会統合、③秩序ある移民行政、④外国人人権擁護、を基本とした。その後も5年ごとに政策の見直しを図っている。

◆日本は何故変われないのか

日本人は細部の仕上げは得意だがグランドデザインの設計は苦手だ。いったん「技能実習制度」という「カラクリ」ができるとその細部には眼が行くがグランドデザイン自体を変えることができない。グランドデザインがいびつなまま細部を積み上げると諸々の弊害が発生し蓄積する。

特に技能実習生を斡旋し保護する役割のはずの民間の「監理団体」が全国に約5000もできているが、企業等に実習生を斡旋し派遣先から監理料を得る事実上の奴隷商人となり人権侵害を行う受け入れ先の共犯となっている。「監理団体」の巨額脱税や不明朗な支出も報道されている。日本人が就職するなら「監理団体」は不要である。多くの実習生受け入れ先で労働法違反事例が発生しているが労働基準監督署が実習生の雇用者を「法の下の平等」で監督指導すれば良いだけである。技能実習生固有の管理のためにはすでにある「外国人技能実習機構」の任務を再定義すれば良いだけである。本来不要な「監理団体」に利益が生じる仕組みを変えなければならない。

仏教の「不妄語戒律(嘘をつかない)」の精神で隣国韓国に見習ってグランドデザイン自体を変えないと大きな国家的損失が積み増される。

新型コロナ下で「エッセンシャル・ワーカー」という用語が使われるようになったが、日本に必要な非熟練労働者はまさに「エッセンシャル・ワーカー」である。この方々が正当に報われる制度設計ができないのであれば外国からの「エッセンシャル・ワーカー」受け入れはいったん止め、国民全体で「外国人労働者」の受け入れについて議論すべきである。

■筆者プロフィール:大村多聞

京都大学法学部卒、三菱商事法務部長、帝京大学法学部教授、ケネディクス(株)監査役等を歴任。総合商社法務部門一筋の経歴より「国際法務問題」の経験・知見が豊富。2021年に(株)ぎょうせいから出版された「第3版 契約書式実務全書1~3巻」を編集・執筆した。

※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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