<北京オリンピックと中華街>多様な国籍持つ人々の交流が「平和と繁栄」もたらす

田村彰    2022年2月22日(火) 7時50分

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厳重なコロナ対策の下開催された雪と氷のスポーツ祭典北京オリンピックが多くの感動を与えてくれながら幕を閉じた。写真は北京五輪の閉会式。

厳重なコロナ対策の下開催された雪と氷のスポーツ祭典北京オリンピックが多くの感動を与えてくれながら幕を閉じた。主催者の努力の甲斐あって、どの競技をみても見事な運営ぶりだったし、平野歩夢、小林陵侑や高木美保など日本選手の活躍も素晴らしかった。その一方で、ドーピング問題や欧米先進国首脳の開会式不参加など素直に喜べない出来事もあった。

こうした中にあって、筆者が印象的に思ったのは、アメリカの金メダリストネイサン・チェン(男子フィギュアスケート、名門イエール大学)は中国からの移民の息子であり、中国の金メダリスト谷愛凌(女子スキー、ビッグエアとハーフパイプ、名門スタンフォード大学に進学見込み)は米中ハーフだったことであった。いうまでもなく、ふたりとも他の選手を寄せ付けないほどの超一流のアスリートであった。他にも米国には台湾系米国人のカレン・チェン(女子フィギュアスケート)ほかがいたし、中国女子アイスホッケーチームには米国、カナダ系の選手が散見された。また、中国の金メダリストのコーチが日本人であるなどコーチまで含めると、世界中で多様な国籍の混交が多くみられた。

◆米中2大国、多くの留学生が相互交流

アメリカ、中国だけをとってみても、それぞれ相手の国にルーツを持つ選手が中心的役割を占めており、しかもそれぞれの国で絶大な人気を博している(谷愛凌は中国でアイドル的存在)。

世界の軍事2大国がそれぞれに相手側の国に自国系国民を抱えているのは、安全保障上もありがたいように思う。時に重要な技術移転につながるのではないかとして問題にされることも少なくないが、米国の大学にはたくさんの中国人が留学しており(ネイサンチェンも中国からの留学生の息子)、名門大学の留学生は、日本よりもずっと多い。一方、米国からも語学習得目的も含めて中国への留学生が数多くいる。

長い歴史でみると、中国系(特に漢民族の富豪)の人たちは、一族を世界各地に分散することによりリスク分散を図り、一族とその富の存続を確保しようとする傾向があった。また、華僑として他国でのビジネスチャンスの開拓、拡大を図るために海外へ移住する動きも多くみられた。この結果、世界中に同郷の人たちの集合の場であった中華街(チャイナタウン)が形成された。中華料理店、商店のほか、寺社庭園などが併設されていることが多い。日本では、横浜、神戸、長崎の三大中華街が有名であるが、それ以外にも池袋、那覇など各地に存在する。郷友の集いの場が、今や観光客やグルメ客を吸引する一帯になっている。中華街は、アジア、オセアニア、中東、アフリカ、北南米、欧州(英仏伊)等各地に存在するが、もともとは移民から始まったケースが多い。私もサンフランシスコやバンクーバーなどの中華街を訪れたことがあるが、所在国と中国が入り混ざった独特の雰囲気がある。

この間、就業難や政治的圧迫などから、アフリカや東欧から西欧へとか、ラテンアメリカから米国への大量の移民の流入が横行し、受け入れ国で雇用や治安の問題と絡めて政治問題化していることが少なくない。これらに比べると、中国からの移民は歴史も長く、既に溶け込んでいる度合いが高いように窺われる。

◆ダイバーシティから得られるメリット大きい

沖縄那覇市久米地区には、福州園を擁する中華街があるが、久米三十六姓といわれる主として福建省からの帰化人たちは古くから沖縄で尊敬を集めた人々であり、元県知事を出すなど、今や沖縄に完全に溶け込んでいる。また、米国シリコンバレーの成功企業の創業者は東欧出身者が非常に多い。日本人ノーベル賞受賞者を含めて、優れた能力の移入は受け入れ側にとって、歓迎すべきものなのである。特に移民国家米国の本領ともいうべきものである。わが国も優れた能力を持つ人材が喜んで永住する気になるよう努力すべきであろう。

オリンピックで日本人選手を自然に応援するように、生まれた国を愛する気持ちは誰にも当然にあるとはいえ、各国とも行き過ぎた鎖国的発想は避け、外国人も含めたダイバーシティから得られるメリットを享受できるような考え方を採ることこそ今日的であり、世界経済の発展や相互の安全保障につながっていくのではないだろうか。

■筆者プロフィール:田村彰

東京大法学部卒、元日本銀行システム情報局長、元綜合警備保障(株)(ALSOK)代表取締役専務執行役員、現加賀電子(株)社外取締役等。

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