1000年前の仏典を復元、日中専門家の7年に渡る努力と協力を紹介―日本人向け動画公開

Record China    2022年2月21日(月) 9時0分

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1000年に制作された「大蔵経」が、日中専門家の7年に渡る努力と協力により復元された。同件を紹介する動画がこのほど、日本人向けバージョンも作られて公開されることになった。

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「大蔵経」と呼ばれる仏教経典がある。漢訳仏典の集大成とされる書籍だ。今から約1000年前の北宋時代に木版印刷された「思渓蔵」と称される「大蔵経」は、すべてまとまって保存されていた例がなかったが、日本と中国の専門家など関係者の7年に渡る努力と協力により、完全な形で復元された。同件を描いたドキュメンタリー動画がこのほど、日本語を添えた日本人向けバージョンにもなり、公開されることになった。

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「思渓蔵」は浙江省湖州の思渓円覚禅院で制作された「大蔵経」であるために、その名がつけられた。制作時期によって「思渓円覚蔵」と「思渓資福蔵」の2種に分類できるが、どちらにも同じ版木が使われている。

「思渓蔵」

宋代末期の元軍侵攻のために思渓円覚禅院及び「思渓蔵」の版木は戦火に巻き込まれて失われた。そのことで、中国において「思渓蔵」は、極めて希少な文化財になった。しかし、「思渓円覚蔵」と「思渓資福蔵」はいずれもそれまでに、民間の交流を通じて日本にもたらされていた。

中国国家図書館は不完全ながら「思渓蔵」を所蔵している。清朝末期に東京に赴任した清国駐日本公使の随員だった楊守敬が買い求めたものだ。楊守敬は役人としての身分は低く、むしろ膨大な古典研究で業績を上げた学者として知られている。当時の日本には、中国ではすでに失われたような古書が大量に存在した。楊守敬はそれらの古書を大量に購入した。楊守敬が1915年に他界すると、その蔵書の一部を北京市内の図書館が所蔵することになった。

楊守敬が日本で購入した「思渓蔵」はその後、中国国家図書館が所蔵することになった。しかし、楊守敬が日本で購入した「思渓蔵」には欠落部分もかなりあった。そこで中国国家図書館は2002年、海外に流出していた「思渓円覚蔵」のうち「大般若波羅蜜経」357冊をさまざまなルートを通じて買い戻した。しかし、まだ完璧ではなかった。

中国人研究者と日本人研究者の落合俊典らが長年に渡り調査と考証を重ねた結果、日本の愛知県にある岩本寺が所蔵している「思渓資福蔵」と国家図書館所蔵の「思渓資福蔵」が全く同一の版によるものと判明した。こうして日中が協力して、双方に存在する「思渓資福蔵」を利用して完全な復元版を作成することになった。

徐麗玲さん

徐麗玲さんは、伝統的な書籍の糸綴じを手掛ける揚州古籍線装有限文化公司のトップだ。「思渓資福蔵」の復元が始まるきっかけには、彼女が中国国家図書館などに働きかけたことがあった。そして彼女の会社は、復元作業の現場の工程を担当することになった。徐さんらは、完璧な復元を目指して考証や実証を重ねた。例えば、「思渓蔵」で用いられたのと同じ墨を作る技術はすでに失われていたが、ナノ技術を用いて復元のために用意した墨は、「思渓蔵」の墨と同様に風雪に耐えることを確認した。紙を選ぶために会社所在地の江蘇省揚州市と、宣紙と呼ばれる昔ながらの方法で作られる上質な紙の産地である安徽省・窪県を何度も往復した。徐氏と彼女のチームは2000日あまりも、休む日がほとんどなしに作業を続けたという。

7年の月日をかけて、1000年の歴史を持つ大蔵経がついに復活した。このことは仏教文化だけでなく、1000年あまり前の東アジアの政治、経済、社会、文化、人文などの発展を知るために大きな意義がある。徐さんは、新型コロナウイルス感染症が抑制された暁には、日中両国の専門家が再び一堂に集まって、改めて友情を温め合いたいと願っている。(翻訳・編集/如月隼人

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