内モンゴルの省都フフホトで泊まった「人民解放軍の宿」―万国共通のカラクリ?

アジアの窓    2022年2月19日(土) 21時0分

拡大

現地の日本語学校の方の案内で、車に乗り目的地まで移動していると、しきりに「昭君」という看板が目に付きます。写真は昭君博物館。

中国は内モンゴルの省都フフホトに行ったことがあります。以前勤務していた千葉県銚子にある千葉科学大学、留学希望中国男女学生の入学試験のためです。教員2人と中国語日本語が堪能な事務の中国国籍の男性が3人でチームを組み、筆記試験と面接をする方式です。 こういうことでもなければ、ふつうまず内モンゴルなどに出かけることはありませんよね。確か1泊か2泊か。

一行が現地の日本語学校の方の案内で、車に乗り目的地まで移動していると、しきりに「昭君」という看板が目に付きます。「昭君飯店」とか。これって「王昭君」のことかしら?前漢の皇帝が匈奴と宥和のために 側室を一人、匈奴のリーダー(単于ゼンウ)に贈呈、固い盟約のあかしとしたのです。その際あまりみめかたちよろしくない側室を送ろうとしたのですが、なにせ側室全員の顔を見てるわけではない。似顔絵師に似顔絵を書かせて一番ダメなのを、選ぶことにしました。側室たちは、大変だ、辺境の地に行きたくない、似顔絵師にワイロを贈って、とびきりの美女に仕立ててもらう。そういう手を潔しとしなかった王昭君は、無残な描かれ方をしてしまい、匈奴行きが決定します。皇帝のもとにお別れの挨拶に参上した王昭君を初めて見た皇帝は、こんな美女が。双方泣く泣くのうちに、王昭君は単于のもとへ。その後、似顔絵師と側室たちのワイロ関係が判明したのですが、もう手遅れ。そういう説話を昔むかし、読んだことがあったのですが、その嫁ぎ先というのが、このフフホトだったのね。

さて、割り当てられたホテル、なんとか飯店となっていたと記憶するのですが、 部屋に入ってみると、ロビーの壁に「人民解放軍」の文字が掲示されていたことを思い出しました。

これッて、何を意味するのか?頭に妄想が浮かんできました。まず、ここは人民解放軍によって完全に防御されているホテルで、コソ泥・強盗はもちろんのこと、反革命や少数民族による過激行動があるとしても完全対応、そういうアピールをしているのか。

あるいはここは人民解放軍の苦楽を外国人を含めて体験するテーマパークホテル。翌朝は起床ラッパとともに起こされて、30分以内に洗面を終えベッドを整頓、食堂に集合。プラスチック製のトレイを渡されて、巨大なお鍋の前に一列に並ぶ、長い柄杓でトレイのお椀にひとりひとり朝粥を盛り付けてもらう。食べ方はじめの号令とともに、なんてね。

もちろんこれは私の勝手な妄想でありまして、このようなことはひとつも起きてはおりません。普通のホテルでした。翌朝ホテルを出た後、中国語日本語が堪能な同行の事務のひとに、 さっきのホテルですが、「人民解放軍」と壁に文字が掲示してあったのですが、あれは何ですか?と質問しますと、間髪を入れず、 「メルパルクみたいなもんですね」。

これまた分かりやすいですね。私その時点までメルパルクというのは東京・五反田にあるコンサートホールのことしか知らなかったのですが、ホテルチェーンを経営してるんですね。さすがに郵便貯金会館というのは知ってましたが、郵便貯金会館ではあまりに露骨なのでメルパルク、メルパルクはホテルのほうが主要な 事業だったのですね。郵便貯金会館ってどうせ郵政省のお役人の天下り先なのでしょうと当時から思っていたわけですが、Wikipediaで確かめましたら、<旧郵政省貯金局幹部の天下り先確保の目的もあったことは、旧郵政省時代の人事から明らかであった。>ということは人民解放軍の文字を壁に掲示したあのホテル、人民解放軍の天下り先?まあどんな組織でも構成員の第二の人生のはめ込み先を確保しておくと組織への忠誠が確保できるというものなのでしょう。それがないと不満が高まり…。

「王昭君」とともに、フフホト、思わぬ体験をさせてくれました。中国現地での入学試験と面接ですが、その後インターネットの一層の発展によりSkype(スカイプ)が活用されるようになりますと、筆記試験の模様がSkypeでこちらのパソコン上にうつされ、面接もSkypeでお互いパソコン画面の対面で行うようになり、中国出張がなくなりました。私はフフホトを含め2回ほど出張しましたけどね。実際に銚子にいたままSkypeで入試・面接を2度ほど体験しました。確かにこれは出張旅費が全くかからず、コスト削減には大変優れたシステムでしたね。なおメルパルク、郵政民営化後のことについてはここでは触れておりませんので。

■著者プロフィール:高谷尚志「アジアの窓」編集委員

1946年中国・大連生まれ。早稲田大理工学部工業経営学科卒。毎日新聞入社、静岡支局、経済部記者、「週刊エコノミスト」編集長などを歴任。2004年千葉科学大学危機管理学部危機管理システム学科教授。2015年4月よりフリー。

この記事のコメントを見る

ピックアップ



   

we`re

RecordChina

お問い合わせ

Record China・記事へのご意見・お問い合わせはこちら

お問い合わせ

業務提携

Record Chinaへの業務提携に関するお問い合わせはこちら

業務提携