北京五輪マスコット「ビンドゥンドゥン」はなぜ大人気?—その「秘密」を徹底解説

中国新聞社    2022年2月14日(月) 16時50分

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北京冬季五輪マスコットの「ビンドゥンドゥン」(写真)が大人気だ。人気の背後にある「秘密」とは何なのだろうか。

北京冬季五輪マスコットの「ビンドゥンドゥン」が大人気だ。中国人だけではない。例えば日本テレビの辻岡義堂アナウンサーが番組で「ビンドゥンドゥン愛」を熱く語った。中国メディアの中国新聞社はこのほど、「ビンドゥンドゥン」の人気の秘密を説明する記事を発表した。以下は記事内容に若干の説明内容を追加するなどで再構成したものだ。

■デザイン責任者も想定外、モナコ国王もわが子のために所望した

「ビンドゥンドゥン」関連商品は売れ行きがあまりにも好調なために極端な品薄になり、「オンラインでは完売、オフラインでは行列」と言われるようになった。五輪開会式に出席したモナコ国王のアルベール2世は7歳になったわが子である双子の姉弟それぞれに、「ビンドゥンドゥン」をプレゼントしたいと語った。日本テレビの辻岡アナウンサーは北京市内で日本向け番組に出演した際に、「ビンドゥンドゥン愛」を熱く語った。デザインチームのリーダーを務めた広州美術学院視覚芸術デザイン学院院長の曹雪教授は「多くの人に愛されることになるとは確信していたが、ここまで大人気になるとは予想していなかった」と述べた。

パンダの姿を土台にしたことが、「ビンドゥンドゥン」の人気に関係していることは、すぐ分かる。パンダに魅力を感じる人は世界中に存在する。また、パンダを「中国を象徴する動物」と見なす人も多い。中国としては、多くの人に愛されるパンダを北京冬季五輪のマスコットにすることは、世界中の人に「友好感情」をアピールすることにつながった。

■背景に存在する「何一つ無駄のない」徹底したデザイン

しかし「ビンドゥンドゥン」がパンダの姿という要因だけで、「ビンドゥンドゥン」の人気がここまで盛り上がったわけではない。「ビンドゥンドゥン」は極めて細かいところにまで、さまざまな意味やシンボル性が込められている。何一つ無駄のないデザインと言ってもよい。

「ビンドゥンドゥン」の頭部の外殻は、ウインタースポーツをする際に着用するヘルメットをデザイン化したものだ。目の前のゴーグルのようなものは、北京五輪のスピードスケートの会場である国家スピードスケートオーバルの建物の外観を反映させている。 “国家スピードスケートオーバル”の部分の周囲に明るい色彩で流れるような線を入れたことでスケートのコースを連想させ、さらに5G技術などを全面的に取り入れたハイテクのイメージも重ね合わせた。

「何一つ無駄のない」徹底したデザイン

「ビンドゥンドゥン」を見ると、宇宙飛行士の姿も連想してしまう。つまり、「非凡な業績の達成」「未来を探索」「すばらしさを追い求めることを形にする」「時代をリード」「無限の可能性を持つ未来に向き合う」といった、宇宙飛行士が持つイメージが、自然に想起されることになる。

「ビンドゥンドゥン」はウインタースポーツと科学技術を融合させた今回の北京冬季五輪を、極めて巧みに象徴するマスコットだ。

■美の背景に存在する、洋の東西を問わず共通する哲学

もちろん、優れた発想に基づき緻密にデザインしても、それを「優れた形」に結実させられなければ、「アイデア倒れ」ということになってしまう。そこで試されるのがデザイナーの技量であり、デザインに取り組む際の考え方の根本ということになる。

「ビンドゥンドゥン」デザインチームのリーダーを務めた曹教授は、美しさの背後には基本的な規律があり、その中でも重要なのは「対比と統一」と説明した。「ビンドゥンドゥン」の場合には氷の堅さとパンダの毛の柔らかさ、透明と不透明、白黒と国家スピードスケートオーバルの色彩部分の対比などだ。

美しさの感じ方を研究すれがそこに美学が生まれ、美学は哲学全体にも影響を及ぼす。逆に哲学や美学が発達すれば、美しさの感じ方に影響を与える。

中国の伝統美学は「対立の中に含まれる調和」と「何事にも陰と陽が伴う」に集約できる。全ての物事には「陽」と「陰」の両面が含まれ、性格が反対である陰と陽が調和して初めて、風格ある素晴らしい美が出現するという考え方だ。

西洋の考え方も実は似ている。美とはまず調和であり、調和とは雑多なものを統一することと考える。例えば音楽の美とは高低、長短、強弱が異なるさまざまな音を用いて作られる調和ある旋律でもたらされる。

曹教授は、「デザインの究極の中核部分には哲学がある。洋の東西を問わず、その哲学には相通じる部分がある」と語った。これは道を極めた言葉だ。そして、だからこそ「ビンドゥンドゥン」は中国国内でも国外でも受け入れられたのだ。(構成 / 如月隼人

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