中国では男子フィギュアスケートの羽生結弦選手が、絶大な人気がある。ネットを利用して「羽生愛」を公開し続ける熱心なファンも何人か見受ける。そんなファンがこのほど、一同で集まって羽生選手を「熱烈応援」する動画を公開した。そこで動画の概要をお伝えし、合わせて中国における羽生選手の人気ぶりを改めて紹介しよう。

動画冒頭では一同が並んで「北京はあなたを歓迎します。羽生結弦さん、冬季五輪の夢をかなえてね！」と羽生選手を応援した。映っている羽生ファンは若い女性が多いが、やや年配に見える人や、小学校中学年程度に見える子どももいる。

日本語の「幸あれ」の3文字をカメラに示したファンがいた。失礼ながら、平仮名を見れば日本語の学習経験はほぼないだろうと想像がつく。ただしそのことは、日本語ができなくても羽生選手に応援の言葉を直接に受け取ってほしいとの、強い気持ちの表れと言える。

動画では続いて、各人が羽生選手に「出会った時期」を自己紹介した。多くの人が2016年、17年、さらに18年の平昌冬季五輪大会の時と説明した。

しかし中には、自分は20年ほど前からフィギュアスケートに注目してきたと説明した人もいた。中国ではフィギュアスケート選手の第一世代として、女子の陳露選手が注目されていた時期だったが、その後の羽生選手は、個別の選手に対するファンが出現した初めてのケースだったという。

次のテーマとして、それぞれが羽生選手の特徴について自分の見方を紹介した。「スケーティングとダンスと音楽の結合が美しい」、「難度の高い演技でも軽々しくしなやか」、「とても優雅」、「他の選手とは違う」などと、ファンなので当然とはいえ、全員が大絶賛した。

さらに羽生選手について願うことについては「いつまでも健康で幸せな生活を続けてほしい」、「冬季五輪で夢をかなえてほしい」、「時々、お客様として北京に来てください」といった声が続いた。

羽生選手の「影響力」の大きさについては、政府報道官が羽生選手に言及したエピソードがある。北京冬季五輪は新型コロナウイルス感染症対策のため、中国国外からの観客を受け入れないことになった。日本人ファンが駐日中国大使館に「代わりに中国の人に応援していただきたい」とのメッセージを寄せたところ、中国外交部の報道官がSNSに「羽生選手のファンの皆さまへ　『現地応援は中国の皆さんに託す』との声を目にしました。お任せください！」と投稿したのだ。外交官が特定の選手を持ち出してアピールするのは、ほとんど考えられない事態だ。

羽生選手については、17年にフィンランドで開催されたフィギュアスケート世界選手権での1シーンも、中国では極めてよく知られるエピソードだ。同大会で羽生選手は優勝した。そして表彰式後のメダル受賞者による「ウイニング・スケーティング」で、3位に入賞した中国の金博洋選手が中国国旗の左右を逆に持っていることに気付くや否や、羽生選手は金選手に滑りよって旗の向きが逆であることを伝え、さらに金選手が持ち直すのを手伝った。

中国人ももちろん、一流のスポーツ選手に対しては成績だけでなく「アスリートとしての立派な心と立派な振る舞い」を期待し、そのような振る舞いがあれが称賛を惜しまない。中国では、羽生選手の魅力として「心の在り方」を強調した文章が発表されたこともある。（翻訳・編集/如月隼人）