中国が有力ライバー1000人を摘発、どうなる2022年のライブコマース

高野悠介    2022年1月27日(木) 13時50分

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2022年のライブコマースはどう展開するのだろうか。

昨年末、中国ライブコマースの「主播」と呼ばれるトップライバーらが次々と巨額の罰金を命じられた。2022年のライブコマースはどう展開するのだろうか。

中国のオンラインマーケティング界では、以前から「網紅」と呼ばれるインフルエンサーまたはKOLが活躍していた。それが2016年、ネット通販最大手アリババが「淘宝直播」をスタートすると、急速に産業化していった。それとともにトップライバーの影響力は格段に増大した。

「直播帯貨銷售排行榜」2021年11月分によれば、ライバーのランキングは次のようになっている。(所属/成約件数/売上)

1位 薇婭(viya) 淘宝直播 3202万 37億1000万元 2位 李佳[王奇](Austin) 淘宝直播 1940万 25億2000万元 3位 辛巴 快手 778万 23億9000万元 4位 雪梨(Cherie) 淘宝直播 448万 8億8000万元

ここ1年でこのうち3人が処罰の対象となった。

■辛巴(男)…虚偽宣伝、罰金90万元(1630万円)

最初の処分は辛巴の“事件”だった。辛巴は1990年、黒竜江省ハルビン市生まれ。貧しい農村で育った。学歴の記載はなく、ビジネスセンスに恵まれ、2017年に起業したとあるだけだ。ライブコマースによって突然、世に出てきた印象だ。

問題は2020年9~10月、ライブで販売した、「茗摯碗装風味即食燕窩」という、高級食材・燕の巣から抽出した糖分を用いた(はずの)飲料だった。11月中旬、某ユーザーが微博に、燕の巣成分は検出されず、ただの砂糖水だったとレポートした。11月下旬、辛巴は誇大広告と認め謝罪した。広州市市場監督管理局は12月下旬、辛巴の所属会社に90万元、発売元の広州融●貿易公司(●は日の下に立)には200万元の行政罰を課した。放送した「快手」は辛巴のアカウントを60日間停止した。さらに河南省消費者協会が、売り上げの3倍の保障を求め提訴、裁判は現在も続いている。

■雪梨(女)…脱税、課徴金6556万元(11億8800万円)

昨年後半から、脱税の摘発が始まった。雪梨と薇婭(viya)はその象徴だ。

雪梨は、辛巴と同じ1990年、商人の街、浙江省温州の生まれ。浙江工商大学とニュージーランド・オークランド大学で学んだ。在学中から自分の会社を立ち上げている。2016年、アリババのライブコマース「淘宝直播」スタート時には、トップライバーだった。その後、トップは薇婭(viya)、李佳[王奇](Austin)の2人に譲ったが、3番手の位置で活躍を続けていた。

それが昨年12月、2019~2020年分の巨額脱税を摘発された。雪梨はいくつも企業を設立し、虚偽の事業を経費計上、架空取引網を張り巡らしていた。中心企業の「宸帆電子商務」には300人が所属、ライバーとブランドの育成を行っていた。また、1000を超える縫製工場とサプライチェーンを構築していた。これらを税務当局がビッグデータ解析した結果、3036万9500元の課税逃れが認定された。追徴課税+罰金=6555万9500元の処分が下った。以後、自らの販売チャンネルは全て休止となり、宸帆の所持するブランドは別ルートにより大幅値引き販売されている。

■薇婭(viya)…脱税、課徴金13億4100万円(243億円)

薇婭(viya)は1985年、安徽省合肥市生まれ。学歴不明。2003年、北京に婦人衣料店を開業した。2005年、オーディション番組で優勝、芸能プロにスカウトされ、ヒップホップグループのボーカルを務めた。その後Eコマースに乗り出すが、2012~2015年は損失を出していた。2016年5月、アリババの淘宝直播に参加すると瞬く間にブレイク、ライブコマースを象徴する存在となった。

昨年12月、やはり2019~2020年の脱税を指摘された。脱税額6億4300万元、過少申告6000万元が認定され、追徴課税、滞納金、罰金併せて13億4100万元の処分を受けた。桁違いの巨額である。

彼女には夫が董事長の「謙導」という会社がある。雪梨の「宸帆」と同様、映画スターを含む50人のライバーを抱えている。薇婭の販売チャンネルも休止となったが、こちらは残りのライバーが健闘し、「宸帆」ほど大きな打撃は受けていないという。

■1000人以上摘発…やがて元通り?

2021年末までに1000人を超えるライバーが摘発された。メディアによれば、問題の本質は、法人税率が個人所得税の最高45%より低いことにある。法人税率を求めトンネル企業を設立し、架空取引を計上する。こうしたタックスプランニングを指南する会社が、全国に600社以上あるという。アリババの本拠、浙江省杭州市の税務当局によれば、薇婭はライブ配信のコミッションを「謙導」の事業所得に付け替えていた。夫も節税目的だったと認めている。

辛巴の事件を受け、昨年5月、「網絡直播営銷管理辯法」が施行された。違反したライブコマース運営者に対し、警告、機能制限、ライブ中止、アカウント抹消、再登録禁止などの実効措置をとれるようになった。そして昨年末には、ライブコマースという新しく勃興した産業に、初めて税務のメスが入った。タックスプランニングの入れ智慧をした連中は、税の専門家でもなんでもなく、極めて質が低かった。巨額の罰金は、こうした実態に対する警告と抑止効果を狙ったものだろう。税の公平性を示し、共同富裕を喧伝するにも格好の材料だ。学習塾業界のように、業態そのものを否定しているわけではないため、罰金さえ支払えば、元通りとなる可能性は高そうだ。税務当局がライブコマースへの関心をさらに高めてくれたともいえる。2021年を通じ、ライブコマースが新しいステージに入ったのは間違いない。

■筆者プロフィール:高野悠介 1956年生まれ、早稲田大学教育学部卒。ユニー株(現パンパシフィック)青島事務所長、上海事務所長を歴任、中国貿易の経験は四半世紀以上。現在は中国人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中国最新のB2Cビジネスと中国人家族について、ディ-プな情報を提供。 著書 2001年「繊維王国上海」東京図書出版会 2004年「新・繊維王国青島」東京図書出版会 2007年「中国の人々の中で」新風舎 2014年「中国の一族の中で」Amazon Kindle

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