『芝浜』と『マクベス』

アジアの窓    2022年1月22日(土) 5時30分

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師走は定番の落語「芝浜」を聴き、なんの因果?か翌日は「マクベス」を観劇した。

師走は定番の落語「芝浜」を聴き、なんの因果?か翌日は「マクベス」を観劇した。芝浜は今売り出し中の女流落語家林家つる子(二つ目)がお上さん目線で語り出した新作であり有名な談志師匠のそれとは異なる。私は知人に頼まれ数年前から林家つる子の後援会員になっている。

当日は後ろの席でゲラゲラ大声で笑っていたおばさんも途中から人情噺に引き込まれ会場はシーンとなり涙する人も出てきた。噺家と会場が一体となりこの新作落語はまずは大成功と言えるだろう。これからの林家つる子、大化けの兆しと可能性を予見した。おかみさん目線の芝浜は今後、つる子の師走十八番となるだろう。又なんとこの熱演は今年1月30日朝6時からNHKで30分間全国放送されるそうでもある。

マクベス―。私はどんな演出であろうとシェークスピアのマクベスが好きである。なんといっても登場人物すべてのセリフが意味深で考えさせられるからである。もちろん人間の深層心理の表現にも心底ひきつけられることも多いが…。

最終場面で、マクベスに妻子を斬殺されたスコットランドの貴族マクダフと対峙したマクベスは、魔女の予言を自信を持って大声で叫ぶ。「女の股から生まれたもので私を倒せる奴はいない」と。マクダフはせせら笑う。「私は母の腹を割いて(帝王切開で)生まれてきたのだ。股からではない」と。そして貴族マクダフはマクベスにとどめを刺し妻子の仇を打つ。なんとこのセリフはまさに落語のオチではないか?シェークスピアは徳川家康の頃から100年後の江戸落語のオチを既に会得?していたことになる。

来年はできればマクベス夫人から見たマクベスという新作落語も聴きたいものだ。小心で臆病で残忍なマクベス。おかみさん目線からどう見えているか?想像するだけでもとても楽しい。

政界、実業界、教育界、スポーツ界などどんな世界、組織にも定年までコツコツと働く善良な芝浜夫婦がいれば、ガバナンス、コンプライアンスの声はどこ吹く風とダンカン王、マクベスが跋扈(ばっこ)する権謀術数の領域もある。

ただマクベス夫人が表に出て来る組織はそうあるわけではない。なお余談ではあるがシェークスピアが生まれたのは1564年.亡くなったのは1616年だそうだ。人殺し(1564)いろいろ(1616)と覚えよと福井県立藤島高校で習った。

『芝浜』は良妻の代表作品、『マクベス』は悪妻の代表作品。しかしながら良妻も悪妻も旦那を手のひらの上で操縦していることには変わりはない。それにしても洋の東西問わず男というものは、、、、ですね。

体制や国柄は異なっても地球上に暮らす人間は皆同じ。人情に共感し同じ悩みを抱えている。今年こそ、世界の老若男女が寄り添い、諍(いさか)いのない年にしたいものである。

■筆者プロフィール:「アジアの窓」顧問・中川謙三

1946年福井県生まれ。福島県立藤島高校から東大法学部卒。経済企画庁大臣秘書官を経て2016年まで東京MXテレビ社長。

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