<菅首相辞意表明>「コロナ退治」に総力を挙げ不透明感払拭を―立石信雄オムロン元会長

立石信雄    2021年9月5日(日) 6時0分

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菅義偉首相が突然辞意を表明。政権運営が行き詰まった末退陣に追い込まれたとみられている。菅氏は経済的な繁栄を重視する実務家として期待していただけに、わずか1年での退陣は残念である。

菅義偉首相が突然辞意を表明した。衆院選が迫る中、内閣支持率の下落に歯止めが掛からず、政権運営が行き詰まった末退陣に追い込まれたとみられている。菅氏は極端なイデオロギーに走らず、経済的な繁栄を重視する実務家として期待していただけに、わずか1年での退陣は残念である。

9月中に予定される自民党総裁選への出馬を予定していたが、「選挙活動とコロナの莫大なエネルギーが必要となり、両立は出来ない」と語り、総裁選立候補を見送った。内閣支持率が下落する中で、衆院解散や人事刷新などを模索したものの自民党内の反発で窮地に陥ったとみられる。首相は月内にも退陣し、総裁選は首相以外の候補が争う。

菅首相は当初、東京オリンピック開催で政権を浮揚させ、衆院解散・総選挙で勝利した後に、総裁再選を果たす戦略を描いていたという。ところが「人類がコロナに打ち勝った証し」とアピールしていた五輪は、感染が収まらず無観客での開催を余儀なくされた。さらに7月下旬からの感染「第5波」で、医療体制は危機的状況に陥っている。

日本はコロナとの戦いの渦中にあり、感染防止の「切り札」と強調したワクチン接種も思うように進まず、国民の間に不満が増幅された。医療体制の強化もかけ声倒れの面が否めず、入院できず自宅療養中に亡くなる人も出ている。引き続き気を緩めることなく、コロナ対策に最優先で取り組む必要がある。

今回の緊急事態宣言の期限は9月12日に迫るが、解除できる見通しは立っていない。首相は退任まで陣頭指揮にあたり、円滑に後継者に引き継いでほしい。

危機にあって、首相に求められる重要な資質のひとつが国民とのコミュニケーション能力だと思う。とりわけ、他国が採用するロックダウン(都市封鎖)のような強力な手法をとらない日本では、人流抑制などへの国民の理解と協力が不可欠である。残念ながら、首相と国民との間には、この信頼関係が乏しかったと言わざるを得ない。

菅政権が取り組んだデジタル化の推進や地球温暖化対策などは、政権が変わっても注力すべき重要なテーマだ。コロナ対策以外についても十分な政策論争が必要だ。

衆院選は国の行く末を決める重要な機会であり、その日程が総裁選後まで不透明な状態が続くのは望ましくない。コロナという「共通の敵」を打ち負かすためにも、与野党は一連の政治日程について話し合い、総力を挙げて不透明感を払拭してほしい。

<直言篇171>

■筆者プロフィール:立石信雄 1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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