中国の男性歌手ツァイ・シュークン（蔡徐坤）が4月にリリースしたアルバムが30日、未発表だった6曲を一気に解禁。現在、中国の芸能界を震撼させている厳重な取り締まりを恐れての措置ではないかと見られている。

23歳の人気歌手のツァイ・シュークンは今年4月、3枚目のアルバム「迷」を音楽配信サイトのQQ Musicからデジタルリリース。全11曲収録の「迷」だが、これまでに発表されたのは5曲だけで、曲名のみ発表された1曲を含む6曲は「間もなく公開」の文字だけで、具体的な日程が示されていなかった。このような状況ながら、1枚26元（約440円）の同アルバムは、30日までに約324万枚、総額8420万元（約14億円）を売り上げている。

完成作品ではなく、収録曲のリリース日も未定のまま販売するスタイルは消費者の知情権（知る権利）を侵害する違法行為ではないかと、一部から疑問の声が上がっていたこのアルバムだが、30日に未発表だった6曲を一気に解禁したことで、購入者からも驚きの声が上がっている。

今月27日、国家インターネット情報弁公室（国家網信辦）が、ファン・コミュニティーによる違法行為を取り締まる「清朗」行動を本格始動させた。芸能人のファンが熱狂してネットを荒らしたり、誹謗（ひぼう）中傷がエスカレートする現象を抑えるための措置で、SNSや音楽配信サービスでは各種ランキングの掲載を停止。QQ Musicでもユーザーが同じ作品を複数購入できなくなり、これによって理性的な消費活動を呼び掛け、ファン同士の争いの種にならないよう制限を行っている。

そんな中で行われた「迷」の一挙解禁だが、ファン・コミュニティーを必要以上ににぎわせることを避けることと、「清朗」行動に違反するとやり玉に挙がるのを恐れての措置ではないかと見られている。（Mathilda）